トンマッコルへようこそ評

 その前にひとつお知らせ。
 このブログにコメントを記入していただいた際にエラーがいつも発生していましたが、どうしても防ぐ手段が取れずにいたんですが、とりあえずコメントを「許可制」にすることで対応しました。このブログのプログラムの動作が重くて、サーバーに負荷が掛かるためにこのような状態になっているようで… ってことで、すぐにコメントが表示されないようになってます。ごめんあそばせ。
 で、今日はせっかく「トンマッコルへようこそ」を観てきたので、そのレポなどを。ネタバレになってしまうので、読みたい方だけ読んでくださいね!
 その前に角川文庫から文庫本が出ているので、とりあえずご紹介のほど。

トンマッコルへようこそ / 4042956025
チャン・ジン
角川書店
ASIN:4042956025

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 映画を観て、まず最初に思ったのが、人民軍(北朝鮮軍)に「なべやかん」と「平山相太(FC東京)」がいると…(爆) 似てると思いませんでした? 序盤はものすごく気になってしまいました。物語とは全く関係ないところですけどね。
 昨日も書きましたけど、中盤まではものすごくコメディタッチなんです。北朝鮮軍と韓国軍の脱走兵、そして連合軍のアメリカ人が、ひとつの村に相まみえる状態で、普通なら殺し合いみたいな形になるんでしょうけど、トンマッコルの村の人々のほとんどが「武器」が何ものなのかよく知らず、南北戦争などもつゆ知らずで、兵士たちがにらみ合う場面でお構いなく通常の生活に戻っていく様から、兵士たちが村人のペースに飲まれていくところなんかはコメディですよね。実際にあり得ないことだけど、コメディだから許される部分なんでしょうね。韓国はファンタジーは当たらないってことだそうですが、導入の部分がファンタジーではなくコメディだったからこそ、すんなり映画に入り込めたのかなあと思います。大義名分なんかよりもなによりも畑を荒らすイノシシの方が食べ物に困るから一大事だって、すごく単純なんですけど、本当はそちらの方が大事なんですよね。
 村長の言葉からも、その指導力はどこから来るのか聞かれて「腹いっぱい食わせることだ」と答えたんですが、このひと言が映画を象徴してますよね。おいしいものを食べていれば幸せを感じるし、憎しみ合うことも無くなる。巨大なイノシシをやっつけた後のシーンの北朝鮮、韓国、アメリカの兵士6名が心の交流を果たしたのがそのイノシシ肉をほおばるシーンだったっていうのが、ものすごく効果的だなぁと感じました。複雑な状況で憎しみあっている人たちだけれども、食べ物が切っ掛けになって仲間意識が芽生えていくっていうのは、トンマッコルの素朴な生活スタイルと一緒ですからね。
 でも、巨大イノシシが襲いかかってくる場面は明らかにCG使っていますっていう感じだったのと、メチャクチャスローモーションだったのがちょっと気になりました。パンフを読むと、ここの部分、監督はずいぶん悩んだみたいですね。もうちょっと躍動感のあるシーンとか選択肢はあったんだろうなあと思ったんですが、ここもコメディを取り入れて乗り切っている感じでした。「イノシシに追いかけられて『ウギャー!』」ってところを力を合わせるって感じで、コメディとシリアスな部分をうまくバランスを取ったっていう感じは、今思い返してみると良かったんだろうな、と思いますね。
 北朝鮮の少年兵と村の少女ヨイルのやり取りなんかは素朴で良かった。あまり難しいことをやらず(やってるのかも知れないけど…苦笑)、少年兵がちょっと恥ずかしそうにヨイルと接する場面なんかはベタなシーンなのかも知れないけど、それでこそ気持ち良さやすがすがしさを感じました。でも、個人的には少年兵とヨイルが村で仲良く生活していって欲しかったんですけども…
 ハッピーエンドっぽいですけど、ぜんぜんハッピーエンドではないんですよね。終盤は連合軍の空爆から村を守るために兵士たちは村を出て行く。観ている僕らとしてはやりきれないですよ。自分たちの命と引き替えに村を守るっていうことが、いかに悲しい出来事か。今だって北朝鮮と韓国は分断されたまま、50年前は憎しみ、いがみ合っていたことをフィードバックさせながら、ラストシーンを観入ってしまい、その無常さを感じてしまいます。戦争なんてなければ、って。
 北朝鮮の少年兵が「僕たちは『連合軍』ですよね!?」っていうくだりもあって、本当に戦争なんか無ければみんな楽しく生きていけるのに、と思うとちょっと胸が熱くなりました。そんな中で「核武装がどうのこうの…」なんてことが耳に入ると、「なんだろうなぁ」と悲しくなってしまいます。
 にしても、「トンマッコル」ってホントに心の桃源郷みたいに描かれていましたよね。悪い人がいない村って感じで。全員がお人好しってわけではないけれども、「困ってる人が居たら助ける」「腹が減るからジャガイモや穀物を育てる」っていう単純だけど、素朴でやさしげな村だからこそ、兵士たちが命を張って村を守る姿に説得力があったのかも。
 ちなみに久石さんの曲なんですが、アクの強い久石さんの曲なんですが(苦笑)、映像とバランスが取れていて良い感じでした。というより、映像に力強さがあったからこそ、たまに指摘される「音が鳴りすぎ」っていう感じにもならずに耳障りの良い音楽を聴かせてくれたかな、と思います。でもいくつかの印象的なフレーズが頭に残るっていうのが久石さんの強みですよね。さすが韓国映画大賞で最優秀音楽賞を取った作品だなっていう感じで、”巨匠”ぶりを拝見させていただきました。
 とにかく楽しく観れて心を打たれるっていうような緩急のバランスが素晴らしかった映画で、オススメできる映画でした。公開される映画館は多くないとは思いますけど、楽しめると思います。近くの映画館で公開されている場合は足を運んで観てくださいませ。DVDになるかどうかは…どうなんでしょうね? DVDで発売されたら買いたいなぁって思います。

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