崖の上のポニョ

 

 さっそく観てきました、「崖の上のポニョ」。
 この時期にネタバレは大変マズイので(苦笑)、気をつけて書くようにしますが読んでくれる皆さんも気をつけて読んでください(爆)。って、どう気をつけるんだって…(笑)
 とりあえず映画の内容に触れないように気をつけます。で、今日公開の「崖の上のポニョ」ですが、同時公開にかの有名な「ポケモン」が控えていました… そんなこんなで映画館には親子連れがごった返しております。ちょっと悔しいことにポケモンの方がお客は多そう。男の子はどちらかというとポケモンを観る傾向が強いみたいで… ま、初日だからやむを得なそうな感じです。
○アニメーション
 客の入りは気になるところではありますが、アニメーションということである意味一番注目されていた「画」なんですが、全編、画を縦横無尽に動かすという宮崎監督の意図は、最初の5分間でなんとなく感じ取れました。手書きの線で一生懸命描かれたさまざまな曲線は、これまでのジブリの看板でもあった「画の緻密さ」ではなく、「動きの緻密さ」への追及を感じることができました。画自体は極力デフォルメされ、動きの面白さが全面に出ていて、かといって昔のいわゆる”アニメ”のような古くささは感じず、ジブリ初期から中期に書けたCGを使った画の世界観でもない、何とも新しさを感じるものでした。たぶん、現物を観れば、宮崎ファンであれば監督の意図したところを汲み取れるんじゃないかと思います。
○音楽
 次に個人的に注目して観ていたのは音楽。主題歌「崖の上のポニョ」はすでにいろんなところで音楽がかかっているので”テーマ曲”だと思っている人は多いと思うんですが、個人的には「海のおかあさん」というソリストの林正子さんが歌い上げる唄の方がウェイトが高いように感じました。ちょっとネタバレでは無いと思いますが、この曲がオープニングを飾り、主題歌「ポニョ」と同様、いろんな場面で繰り返し同じメロディフレーズが流れてきます。
 そもそもこの曲に個人的に疑問を持っていて、「わざわざクラッシック界のソリストに唄ってもらったら、子どもには歌詞が聴き取りづらいんじゃない?」と思ってました。というか、サントラを買って最初この曲を聴いたときに、ボクが歌詞が聴き取れなかったので…(苦笑) そこで、映画の後半に唄の部分をヴァイオリンソロにされた曲(「流れ星の夜」「母と海の讃歌」など)があるんですが、そのヴァイオリンの音色と林さんの声がものすごくオーバーラップしてくるんですよ。声色と弦の音がすごくリンクしていて、歌詞うんぬんの前に「声を単純に楽器として捉えて流しているのかな?」と、自分なりの回答を見つけました。いわゆる「母なる海」を表す女性の柔らかでやさしげな歌声の必然性、ってとこでしょうか。でも、もちろん歌詞も素晴らしいです。個人的に詩の出だし「海ゆりゆれる 青いうち」でやられました。海を「うち」と表現する大らかさに打ちのめされました。ボクにはたぶんできない表現だなあと。
 そんなことで、ボクの中のこの映画の主題歌は『海のおかあさん』です。でも子どもたちはポニョの天真爛漫さを表した『崖の上のポニョ』を楽しく口ずさむだろうなぁ。でも最後のテーマ曲は1番だけの演奏なんです。2番はみんなで唄ってね、ってことなのかも…(って、これはネタバレにならないですよね??)
○声優
 で… 多くの人が気にしているであろうことは声優の方達でしょうか。一番気になったであろう人は所ジョージ氏でしょうか。アクが強そうというか、個性的な方なのでどうかなと思う人が多かったと思うんですが、ところどころ「所さんだな」という風に感じましたけど、シーンによってはこんな声だったっけという感じで、全く違和感のない演技だったと思います。怪しかったり、やさしげだったり、不満げだったりとコロコロ変わるところや、ラストで感じるちょっとした寂しさなどなかなか良い味を出していました。
 もうひとり、長嶋一茂氏。この人は……そのまんま(爆)。ボクにはそう感じました。普段どおりのそのまんまなんだけれど、映画中は違和感ないという感じ。おっかしいなぁって思うんですけど、違和感ないんです、ホント。出番がそんなに多くなかったからかな?(苦笑)
 山口智子さんや、天海祐希さんは映画に溶け込んでいて、特に山口さんはテレビで観ている声と全く違うように感じて、「違う人がやってるんじゃないか?」と思うくらいです。他にも子どもたちの演技も素直で良かったですね。
○ストーリー
 肝心なストーリー部分のことをすっかり言うのを忘れていました。ネタバレはここでは書きませんが… 先ほど言ったようにアニメーションを楽しむということがあったからなのかは分かりませんが、「それはあり得んだろ?」っていうのが結構シーンとして出てきました。「良いんだ。アニメーションだから良いんだ!」って言いながら絵コンテ切っている監督の姿が目に浮かぶようです。
 結構現代に近い時期を舞台にしているはずなのに、結構無茶なことをさせていつの間にかファンタジックな世界へと変わっているような感じで、現実と虚構の世界が共存していて、どっちかの要素が大きくなってももう一方がそばに寄り添っているような感じの世界と言えばいいのか… 「バチッ」ってきれいに切り替わるタイミングが無いってのは大人のボクにはなんとなく違和感のようなものを感じずにはいられなかったんですけど、ただこの「違和感」が子どもには居心地のいい夢空間になっているのかもな、という風にも思うわけで… いろいろなシーンであまり考えずに、なーんにも考えずに見入ってしまった方が返っていろいろ感じ取れるのかも知れないのかなと思いました。
 ただ、場面を説明をするようなシーンは毎度のことながらほとんど無いですが、今回は「ハウル」の時のようなシナリオ自体の複雑は無く、いたってシンプルな感じがします。その他、細かいところなんかは監督の趣味とか、考え方が色濃く出ているかななんて気もします。
 って、ストーリーというよりストーリーの流れをどう受け止めたかっていう話になっちゃってますね。
○子供の評判
 監督は「子供受け」をものすごく気にしているという新聞記事をいくつか見かけました。
【asahi.com】「ポニョとの約束守り、子どもを祝福」宮崎駿監督が語る
 大人たちはお世辞だか分からないけど、とりあえず「良かった」って言っているってことは監督自身分かっているので(大人を喜ばすために作品作っているわけではない)、ターゲットである子供の受け取り方に一番気に掛けているんですが、ボクが映画館で感じたところによると… さっぱり分かりません(苦笑)。主題歌を口ずさんで楽しんでいそうだなあというのはなんとなく感じたんですが、僕らが昔、映画とかを観て感じていたであろう夢心地を感じているのかはさすがに分からず… ただ結構真剣に見入っている子供が多かったので、心に残っているんじゃないかなと思うんだけれど… 正直分かりませんでした。
 ということで、ストーリーには極力触れずにポニョの感想を書いてみました。
「で、詰まるところどうなんだ?」と聴かれたら…… すみません、正直、分かりません(汗)。感動を受ける映画ではないと思うけど、いろいろこだわったところを見せつけた映画でもあり、技術的にもおそらく素晴らしいんだろうなと素人目に感じるんですが、『面白いのか?』と聞かれたら、「どうなんでしょ?」と言っちゃうかも… もちろんお薦めはしますけれど、子供じゃない世代が観るのであれば好き嫌いがハッキリしちゃうか、「ワケ分からなくて好き!」となるか。
 好き、嫌いや、面白いかどうかは理屈じゃ図れないですよね。

オーナーのお薦め度(2008/9/3変更)
 崖の上のポニョ ★★★★★★ 星6つ
(「千と千尋の神隠し」「ハウルの動く城」を観たとき、ピンと来なくて個人的な評価はちょっと低めだったんですが、もしかすると現実と虚構が融合したような世界は、結構多くの人を惹きつける魅力となるかも知れませんね。
→星を5つから6つに変更します。理由は「行間がものすごすぎる」に書きました。ある意味、ものすごい化け物映画なのかも知れません、この作品は。)

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