JOE HISAISHI ~a Wishi to the Moon~ ETUDE & ENCORE (from Be HISAISHIST!! Volume.7)

2003年の春、久石さんのコンサートが開催されました。なんと驚くことに演奏形態がピアノ1台とチェロが10本! この驚きのステージが9ヵ所を巡るコンサートツアーとして、多くの人が楽しまれただろうと思います。今回はそんな中、ツアーのちょうど中日でもある福島県は郡山市民文化センターで行われたコンサートの模様をお伝えしようと思います。

※注意
このコンサートは記憶をたぐりながら書いていったものであり、記憶が抜け飛んでいるところなどについては、脚色を施していますので、完全なコンサートレポートではないことをご了解下さい。

なお、このコンサートツアーのファイナル・東京オペラシティ公演の模様がライヴDVDとして発売されています。(上記画像はアマゾンリンク)

日時2003年4月6日(日) 17時から
会場郡山・郡山市民文化センター
チケット全席指定 S席6,300円 A席5,000円 学生席3,000円
出演者ピアノ 久石譲
コンサートマスター(チェロ) 近藤貴志
チェリスト 三宅進/大沢真人/松葉春樹/前田善彦/谷口賢記/ 植草ひろみ/石田聖子/町田正行
その他主催:福島中央テレビ
後援:ユニバーサルミュージック(株)
企画制作:ワンダーシティ/ウィルパワー

曲目

    KIKI / 谷への道 / View of Silence / 風のとおり道 / Asian Dream Song / Friends / Summer / One Summer’s Day / HANA-BI

    INTERMISSION 休憩

    Silence / 月に憑かれた男 / 夢の星空 / Bolero / a Wish to the Moon / 世界美術館紀行テーマ曲 / la pioggia / Tango X.T.C. 

Encore
    TOTORO / Madness

TOUR SCHEDULE

3月22日(土)広島広島アステールプラザ
3月27日(木)大阪河内長野ラブリーホール
3月29日(土)大阪ザ・シンフォニーホール
3月31日(月)長崎長崎ブリックホール
4月6日(日)福島郡山市民文化センター
4月8日(月)静岡焼津市文化センター
4月11日(金)神奈川鎌倉芸術館
4月13日(日)名古屋愛知県立芸術劇場コンサートホール
4月16日(水)東京東京オペラシティ

始まる前の静けさ…

平成15年4月6日。その日、福島では強い風が舞い、肌寒い一日となった。そんな中、久石譲のコンサート「PIANO STORIES 2003 ETUDE & ENCORE」が福島県の中間部に位置する郡山市にある、郡山市民文化センターにて行われた。

この文化センターでは、ちょうど昨年(2003年)の春に、NTTドコモ東北が主催した久石譲のシンフォニックコンサートが開催された。その際は私もこの文化センターにてオーケストラサウンドを堪能したのだが、その時に受けた印象は小ぎれいなホールで、悪くないホールだなという感じだ。集客人数も2,000人ほど収容できる広さがあり、客席も3階席(構造上4階席ということになっている)まで存在し、奥行きがあるところだ。詳しくは去年のコンサートレポートや、ホールの紹介文を参考にしていただくと良いだろう。

さて、コンサートが行われる大ホールに入る手前のロビーには、恒例のごとく、パンフレット販売とCD販売が軒を連ねる。パンフレットは1,500円。通常どおりの値段だ。パンフレットは買っておくと、コンサートの流れが掴みやすいので、余裕があれば買っておくことをお勧めしたい。また、CD売り場にはもちろん久石譲のアルバムが所狭しと並ぶ。どちらの売り場にも人が押し寄せており、郡山での人気の高さを伺わせる。最近だと、宮崎駿監督作品「千と千尋の神隠し」がアメリカ・アカデミー賞長編アニメーション部門最優秀賞を受賞するなどで話題が多かった事もあり、久石譲という名が徐々に浸透しているのを感じさせた。

ホールには定刻の15分ほど前に入った。今回の座席は最前列で、久石譲の姿をよく見て捉えることができる位置だった。と、ふと自分の席について気がついたのだが、ピアノの配置が若干斜め加減で、ピアノの横には別に譜面立てが設置されていた。譜面立てが置かれてある時点で何が起こるのかというのは容易に想像はついたが、どのタイミングで活用されるのかは、この時には分からなかった。それが分かるのにそんなに時間は掛からなかったのだが。

ステージ上の配列はこんな感じ

定刻になった頃、ステージ上はまだ薄暗かった。どうも、まだ始まる雰囲気は無い。そうすると、徐々に会場がざわつきはじめた。「本当に始まるのか?」といった不安があるのだろうか。場内アナウンスも特になかったため、観客には何が起こっているのか分かる術がないのだ。そんな中、舞台袖の方からチェロの音色が聞こえてきた。メロディからどんな曲が演奏されるかということまでは分からなかったが、チェロの音が会場内の雰囲気を和らげてくれるかのようだった。このチェロの最後の練習のための音色が不意に途切れた。そう、定刻から10分ほど経って、やっと開演となる。

振られるタクトからの導き

「ジィィィィー」

音楽の会場内には似つかないようなブザーが鳴り響き、開演のアナウンスが伝えられる。また、ステージ上は照明が強く輝きだし、明るい空間を作りだしていた。

すると、ステージの両袖からチェリストのメンバーが入場してきた。会場から拍手が送られる。この郡山公演では、元々チェリストが9人にて行われる公演だったため、今回のコンサートの謳い文句「10人のチェリスト」と比べると1人少ない形となっている。ふと、チェリストの方々の服装を見てみた。男性のチェリストは全員ノーネクタイでの登場である。肩肘張らずに曲を聴いて欲しいという一種の演出だろうか。

本日のコンサートマスターである近藤貴志が、ピアノの鍵盤にそっと触れる。そうすると、それぞれのチューニングが始まるわけだ。このチューニングでも、チェロの綺麗なハーモニーを感じ取ることができた。チェロの音色というのはじっくり聴いてみると、本当に優しい音色だというのが分かる。確かに迫力があるけれども、逆に何かを包み込んでくれる、そんな音色でもある。

チェリストたちのチューニングが終わり、コンサートマスターの近藤貴志が舞台袖に向かってちょっと合図をされた。いよいよ、久石譲その人が登場である。

より強い拍手が久石譲に送られる。コンサートの主役の登場だ。その出で立ちは藍色のスーツ上下で、そのスーツには雨だれのような青色の模様が縦に入っている。そしてスーツの下は紺色のTシャツを着込んでいただろうか。久石譲はまず、コンサートマスターの近藤貴志と握手し、また他のチェリストと「今日もよろしく」といった感じで目配せをすると、客席に向きなおし、会場に向かって深くお辞儀をした。

…と、早速一曲目に突入のはずだが、久石譲はピアノの前には座らず、譜面台の前に仁王立ちし、構えの姿勢を取った。


・KIKI ~映画「魔女の宅急便」より~
宮崎駿監督作品「魔女の宅急便」でおなじみである『海の見える街』という曲がチェロによって繰り広げられる。港町をカモメとともに飛ぶ様子がメロディに乗って思い浮かべることができるゆったりとした曲だ。明るい曲調を考えるとチェロに不向きのような気もするが、ゆったりとした雰囲気を出しつつ、久石譲のアレンジよってチェロ向きの曲へと魔法をかけられたと言っても良いのかも知れない。この曲は久石が指揮に徹し、チェリストに指示を送る。

最初の曲が、世界的にも人気が出てきつつあるスタジオジブリの作品で使われたものであり、その上、この映画の監督があの宮崎駿であるため、一般のファンのみなさんにも最初から楽しめたのではないだろうか。小さいお子さんなども来ており、コンサートの最初の曲としては、大成功ではないかと思う。


・谷への道 ~映画「風の谷のナウシカ」より~
引き続き久石の指揮にて曲が披露される。この曲も宮崎駿監督作品である。曲の方は、元の楽曲でもチェロがふんだんに使われており、全く違和感なく聴くことができた。それにしても、この楽曲に限ったことではないが、チェロのみで演奏されているとは全く思えない。確かに高音部分については、ヴァイオリンと較べてしまうと若干の低さはあるが、それを差し引いて考えても、チェロの表現力には圧倒された。か細く泣くかのような高音部の音色と、バックで支える伴奏の低音部とが同じ楽器で表現されているとはとても考えられない。しかし、それが目の前で繰り広げられているわけだ。

ピアノの魔法使い

『谷への道』の演奏が終わると、久石は颯爽とピアノの前に座り、ピアノ脇に備え付けられたミネラルウォーターを口に含んだ。いよいよ、久石自身も演奏に加わって、ピアノとチェロという今コンサート注目の演奏形態となる。

・View of Silence ~短編映画「4 MOVEMENT」&ソロアルバム「PRETENDER」より~
この曲の冒頭はピアノのソロパートから始まるわけだが、過去の久石譲のコンサートを観るところだと、いつも演奏に入る前にハンカチで手を拭いたり、指先をリラックスさせるために手を握ったり開いたりするような、いわゆる準備動作がよく見受けられた。ただ、今回はその動作が過去に較べると少ないように感じた。いつも、演奏に入るまでの間が長いことが多かったのだが、今回は非常にスムーズに、返って「弾き急いでるのでは…」と思うくらい弾きに入る姿勢が早いように感じた。

この『View of Silence』という楽曲は、ワンダーランドレコーズよりリリースされたDVD「4 MOVEMENT-四楽章-」という久石が監督をした短編映画のエンディングを飾っている曲だが、その以前にソロアルバム「PRETENDER」で、アルバムの最後を飾る曲として発表されている。ファンの間では評価の高いナンバーで、コンサートで是非演奏してもらいたい曲目に必ず入ってくる曲だ。そんな曲が久しぶりにコンサートで演奏されるとあって、ファンとしては大きな喜びだろう。

実際の楽曲の演奏はというと、久石の冒頭の流れるようなピアノソロから、チェロが後を追ってくるようなアレンジで、この曲も違和感なく聴き入ることができた。オリジナルを尊重しつつ、チェロを活かすようなアレンジだったと言って良いだろうか。ただ、ピアノのタッチがこの時点で若干弱かったのが多少気になった。まだエンジンがかかりきっていないのか、あるいは体調を崩しているのか、気になるところだった。しかし、私自身、この曲をコンサートで聴くのは初めてだったためもあってか、そのタッチの弱さがメロディがスッと心に染みてくる感覚を覚えさせ、曲にただただ感動している自分がいた。


・風のとおり道 ~映画「となりのトトロ」より~
ふと、ピアノの横に一台のチェアと譜面台が設置された。そう、今度は久石のピアノと、コンサートマスターの近藤貴志のチェロとのデュオにて、宮崎駿監督作品「となりのトトロ」の印象的な場面に使われていた楽曲が演奏された。

この曲はコンサートでも良く演奏されることがあり、2000年にはクラリネットとのデュオで、2002年ではオーケストラで演奏されたりした。また、東京FMの番組「LIVE DEPOT」では大江千里氏とのピアノデュオを披露するなどにより、好評を博している楽曲の一つである。

肝心のデュオの方だが、久石のピアノから始まり、その後近藤貴志のチェロの音色が入り込む格好となる。今回の公演でのコンサートマスターである近藤貴志は、それまで、久石とコンサートなどでよく組まれて演奏していた近藤浩志の兄である。弟の近藤浩志が今回のツアーではメインのコンサートマスターを務められているのだが、日程の都合が合わず郡山公演には帯同しなかった。そのため、郡山公演で初めて兄の近藤貴志がコンサートマスターを務めたわけだ。そのせいか、チェロ、ピアノともに演奏に少し硬さが感じられたが、そこはこれまでの経験でうまくカバーをしていたようだ。


・Asian Dream Song ~長野パラリンピックテーマ曲&アルバム「PIANO STORIES II -The Wind of Life-」より~
今度はまたチェロ9人とピアノ1人の図式に戻っての演奏となる。この楽曲は、1998年に行われた長野パラリンピックの開会式でTHE BOOMのヴォーカリストである宮沢和史氏が歌われていた曲であり、またこの曲のインストヴァージョンがトヨタ・カローラのCMに使われていたことを記憶されている方も多いだろう。

チェロとピアノで奏でられるこの曲のメロディは、なぜかアジアの悠久さを連想させたり、また長野パラリンピックを思い出して、歌をくちずさんでしまいたくなる。演奏の方は、オーケストラに引けを取らないほど、チェロの音が響き、その音の中心を久石のピアノが、透明さを持って通り過ぎていくような、そんな感じがした。

会場に響いていた音が完全に鳴りやみ、一息ついてから、会場からの拍手が鳴り響く。チェリストたちはその場で起立し、観客席に向かって拍手を浴びる。久石は、ピアノの座椅子から立ち上がり、再び会場に向かって頭を深く下げた。久石譲とコンサートマスターの近藤貴志は、お互いがっちりと握手を交わし、チェリストたちはステージ上から、舞台袖の方に退場をしていった。

The Concert Comments

チェリストたちが退場した後、久石ひとり、ピアノの脇に置かれていたマイクを手に持ち、立ちながらしゃべり始めた。

「こんばんは、久石譲です」

この一言にも、また拍手が送られる。

「ここ郡山は、以前に行われたうつくしま未来博の時に何度も行き来しており、非常に縁のある場所です。未来博が開かれているのは夏だったのですが、なぜか非常に寒かったんですよ。会場であれはこっちだとか言って、夜まで会場設営に時間をかけていたんですね。

そんな時に、ちょうど会場は須賀川だったんですけれど、そちらの温泉で良いところが2、3ヵ所、あったんですよ。あ、いや、他の温泉がダメってわけじゃないですけれど…(苦笑) その温泉は…… って、こういう場で言っちゃダメかな(笑)。ま、機会があればインターネットあたりででも紹介したいと思います」

そんな茶目っ気たっぷりの久石の話に会場から笑い声が漏れる。そして、今回のコンサートの説明などに移る。

「今回は、『ETUDE & ENCORE』と題して、先日リリースしたアルバム『Etude』と、すでに去年に発売された『ENCORE』というアルバムをメインにしています。今回は、ご覧のとおりチェロばかりの集めてのコンサートという、珍しい形でのコンサートとなりました。ベルリン・フィルが『ベルリン・フィルの12人のチェリストたち』というもので、チェロだけで楽曲の演奏をしたりしていますが、これだけのチェロとピアノ1台という形態でのコンサートというのは世界初だと思います。また、後半からもチェロとの演奏が出てきますので、お楽しみに!」

当初、チェリスト8人という予定だったものの、10人(郡山は9人)に変更ということになったわけだが、多くの久石ファンは耳を疑ったのではないかと思う。「全会場合わせて、チェリスト8人ということなのか?」「何かの間違いではないか?」 おそらくファンそれぞれ、考えることはあったと思う。しかし、久石譲というパイオニアは、普通では考えられないことにチャレンジし、チャレンジすることによって進化していくのだと思う。パイオニアだからこそ、また、巨匠と呼ばれるからこそ、その地位に甘んじることなく、挑戦し前に進む姿勢が大切なのだろう。

続いて、これから演奏される曲目の説明に入った。

「昨年、『ENCORE』という、僕のベストメロディを集めたアルバムを作りました。その中から4曲聴いていただきます。

まず『Friends』、『Summer』……」

少し間が空く。客席からの何らかの反応を久石は期待していたのかも知れない。

「……『Summer』はトヨタのCMや映画で使われていました。そして、千と千尋の神隠しの…… あれ、何だっけ?(苦笑)」

久石譲が曲名をすっかり忘れてしまったことに、観客は大うけをし、笑い声で会場内が包まれた。また、観客の方から曲名を教えられる一幕も…

「そうそう、千と千尋の神隠しのオープニングとエンディングで使われた『あの夏へ』ですね(苦笑)。お客さんから教えられてしまってはねぇ…(苦笑) そして『HANA-BI』の4曲を続けてお送りします」

ちょっとしたアクシデントはあったものの、4曲の説明をこなした。久石が話している最中、ステージ上のピアノのセッティングが変えられており、ピアノが会場に綺麗に響くように位置が移動されていた。

そのピアノの前に久石は腰を下ろし、楽譜を並べ替えられる。すると、徐々にステージ上の照明が落ちていき、幻想的な雰囲気になっていく。それにつられて、会場内も徐々に静まりかえってゆく。

Pf Solo

・Friends ~ソロアルバム「ENCORE」より~
この曲は、ソロアルバム『Piano Stories II ~The Wind of Life~』ではアンサンブル形式で、また同じくソロアルバム『WORKS II ~Orchestra Nights~』ではピアノソロ形式で収録されている名曲である。以前にはトヨタ・クラウンマジェスタのテレビCMにも使用されていた曲だ。

最初は優しく流れるようなピアノのメロディが響く。アルバムとは若干アレンジを変えつつも、久石は表情豊かに演奏を繰り広げてゆく。先ほど、『View of Silence』ではピアノのタッチが弱かったとお伝えしたが、この曲からはタッチが通常どおりに戻ったように私には感じた。本来の力強いタッチでの演奏、これを私は楽しみにしていた。ハッキリとしたメロディと、感情を込めながら弾く久石の表情。せっかくのコンサート、音だけではなく画でも楽しむことを私はお勧めする。


・Summer ~ソロアルバム「ENCORE」より~
トヨタ・カローラシリーズのCMで一躍有名になった曲だが、元々は北野武監督映画作品『菊次郎の夏』で使われていた挿入曲だ。

冒頭から、スタッカートの効いた軽快なメロディが、ピアノから発せられる。テレビで幾度となく流れたこのメロディは、”聴くは易いが演奏は難し”という感じではないだろうか。サビの部分の幾度となく同じパターンの演奏が繰り返される場面は、まさに体力勝負。そこを久石が弾きこなすところは何度観ても圧巻だと思う。そして、『あの夏、一番静かな海。』のメインテーマのメロディがソロアルバム『ENCORE』同様に挿入され、逆に曲の最後はアルバムとは異なるアレンジが施されていた。


・One Summer’s Day(あの夏へ) ~ソロアルバム「ENCORE」より~
先ほどすっかり曲名を忘れられてしまった楽曲だが、この曲はご存じのとおり、ドイツ・ベルリン映画祭金熊賞(グランプリ)を受賞し、またアメリカ・アカデミー賞長編アニメーション部門のオスカーを受賞した宮崎駿監督映画作品「千と千尋の神隠し」に挿入されている曲である。木村弓の『いつも何度でも』が同作品で有名になり、その後ろにかすみがちだが、この曲は映画の冒頭に、主人公・千尋の不安な心情を静かなピアノのメロディで表現した印象的な楽曲であり、そのメロディを聴けば、すぐにその映画の情景を思い起こす方が多いことだろう。

このコンサートでのパフォーマンスは、アルバムのバージョンよりは少し短くされて、ラストのアップテンポになる部分はカットされていたように記憶している。返ってその方が曲の落ち着きが良いのだろう。静かに始まって、静かに終わるというような形になっていた。


・HANA-BI ~ソロアルバム「ENCORE」より~
北野武監督映画作品『HANA-BI』の渋いメインメロディが会場に響いた。ベネチア映画祭でグランプリである金獅子賞を受賞した映画のメロディが静かに、でも力強く会場内に響く。特にこの曲での音の駆け上がりと駆け下がりが交差する場面は大きなパワーを感じた。渋みと、その名の通り花火が爆発するかのような一種の暴力性… メロディでつなぎ止められていた絆は、花火が散るとともに儚く散ってゆくのだろうか。

とにかく、ストーリーを感じさせるピアノの調べは心地よく、しかしかなりの衝撃をもって、目の前に繰り広げられた。

以上、4曲を弾き終えると、久石は再度、観客に向かって頭を下げ、ステージ袖へと下がっていった。コンサート前半が終了である。

休憩中、会場内を歩き回ってみたが、満員御礼の状態で、いろんな方がこのコンサートに足を運んでいるように感じた。タバコを吹かして休憩している男性陣などは、あまりこの手のコンサートには感心がなさそうに見えてしまうが、紛れもなくこのコンサートの観客なのだ。今回は、特に『千と千尋の神隠し』がアメリカ・アカデミー賞長編アニメーション部門のオスカーを受賞したこともあり、久石自身の知名度もますます上がり、これまで興味がなかった人々も、このコンサートに足を運んでくれたのだろうか。

The MOON

そうこうしているうちに、後半が始まる時間となる。会場の照明が落とされ、それと反比例するかのようにステージ上の照明が明るくなる。

そんなステージにチェリスト9人がステージの両袖から入場してきた。ふと、チェリストたちの姿に目を凝らすと、衣装替えをしており、スーツ姿にネクタイ着用というフォーマルな服装になっていることに気づいた。後半のステージは厳かに、あるいはクラシカルに進めるということの暗示なのだろうか。

またコンサートマスターの近藤貴志がピアノの鍵盤をたたき、それによってチェリストの面々がチューニングを行う。そしてチューニングを終えると近藤貴志が舞台袖に合図を送るという、前半のコンサートが始まるときのVTRを観ているかのような光景が目の前にまた繰り返される。

すると、同じように久石譲が入場してくる。またもや会場から力強い拍手が送られる。氏は笑顔でその拍手に対しながら、足早にピアノの前に座して、楽譜を並べるなど曲の準備に入った。

・Silence ~ソロアルバム『ETUDE -a Wish to the Moon-』より~
ふと、チェリストたちが久石の指揮で演奏をはじめた曲は、「Silence」ではなかった。有名なアメリカのジャズナンバー「ムーンライトセレナーデ」が演奏された。この曲はベルリンフィルの12人のチェリストたちが演奏し、CD化をしている。もちろん、久石の曲と同様、多くの方の耳になじんでいるメロディで、一度は耳にされている方も多いことだろう。私見だが、おそらく「ムーン(月)」というコンセプトの一面を表現するために、有名なメロディの一節を引用して、この作品の雰囲気を伝える意図があったのではないかと思われる。

この演奏が終わると、久石はピアノ前の椅子に着席し、早速「Silence」の演奏が始まった。もちろんのこと、曲の出だしはピアノソロから始まるわけだが、徐々にチェロの絡みも生じてくる。コンサート前には、「Silenceはピアノソロじゃないとダメだろう」と勝手に決め込んでいたのだが、予想を見事に裏切られた。非常にきれいなピアノとチェロの掛け合いが繰り広げられ、この時点で私自身が、作曲家かつアレンジャーの久石譲に敗北を喫したと表現してもおかしくはないと思う。

この楽曲に限ってということではないが、この後、後半の演奏は非常にパワフルに推移していく。個人的な解釈を述べさせていただくと、まずオリジナルのソロアルバム『ETUDE -a Wish to the Moon-』の演奏は、いわゆるピアノ演奏のお手本のような形で、非常にきれいな演奏を醸し出しており、これはこれでよい。しかし、やはり私としては、お手本ということを意識しすぎて、久石譲独特のタッチの強さというか、メロディの強さが若干殺されていたのではないかと思っていた。

しかし、この後半の演奏に関しては、非常に力強く、小気味よくそして気持ちのよい演奏が続いたため、この『ETUDE -a Wish to the Moon-』という作品の印象が全く様変わりしてしまった。簡単に言うと、「よい」という評価から、「素晴らしい」というものに変わったのだ。もちろん、この後のコンサートの演奏に関して、ミスタッチは若干あった。それを差し引いても、あまりあるパフォーマンスが披露されたと思う。久石ファンのみなさんにも、そうでない方々にも是非観ていただきたいコンサートになっていると、勝手ながら思うわけだ。ちょうどよいことに、このコンサートについては、東京会場での模様がDVDになって発売される予定になっているようなので、コンサートに行けなかった方も、そちらでチェックをしてみて欲しい。

・月に憑かれた男 ~ソロアルバム『ETUDE -a Wish to the Moon-』より~
この曲はスタッカートのエチュード(練習曲)であるため、刻まれた音が曲中に多い。チェロとともに音を刻みながら、しかし流れるように曲は続く。

この楽曲の前半中、久石のピアノはどちらかというと伴奏に徹していた。また、演奏の合間にも、椅子からチェリストたちの方に半身を乗りだし、指揮をしていた。まさに、身体全体での楽曲演奏となる。

脱・癒し

『ETUDE』からの2曲の演奏が終わり拍手が送られると、久石はマイクを手に取りしゃべりはじめた。

「ピアノの練習を、楽しみながらできる曲は作れないかということを、2年前から考えて始めていました。ショパンのエチュードなんていうのは、コンサートでよく演奏されますからね。そんな中、ダンロップのCMのために、『Silence』という40秒ほどの長さの曲をまず作りました。だいたいCMは15秒から30秒程度なので、このくらいの長さで十分なんです。この、短い曲を作ったことによって、アルバムの方向性は何となく掴めました。

そこから徐々に曲を作っていたんですが、途中からピアノの練習曲として作るだけではダメだと思ったんです。ピアノを弾かないけれど聴いてくれる人がいる。やはり、その時代に沿った想いを曲に乗せなければならないなあと。

そこで思いついたのが『a Wish to the Moon』だったのです。月に願いをかけても、なかなか実現はしない。そんな難しい願いを心に持ち続けても、頑張っていれば必ず何かが起こる。何かが変わるんだという想いを込めてアルバムを作りました。

そして、レコーディングをしていったわけです。東京のオペラシティというところで、お客さんが全然いない中、6回レコーディングをしたんです。でも、最初の1回は音が決まらなくて1曲も録れなかった。表現したいピアノの音がなかなか見つからなかったんですよ。1回のレコーディングで数百万かかってしまうので、それをドブに流すような感じで…(苦笑) だから、ピアノ1本でレコーディングするより、オーケストラを頼んでレコーディングする方が安かったんです(笑)。だから、この『ETUDE』はピアノの音だけだから…なんて思わないでくださいね。会場でも売られているようなので、非常にコストパフォーマンスのよいアルバムになってしまいましたので良かったら聴いてみてください(笑)」

会場内、暖かい笑いと拍手に包まれる。

「話は変わるんですけれど、最近、僕のCDがヒーリングの棚に入っているようなんですが、これはあまり好きじゃなかったりします(苦笑)。『ETUDE』なんかはもちろん静かな曲もありますが、激しい曲も収録されています。別に癒そうとして曲を作っているわけではないんです。

癒しを求めたければ、まず自分で癒される環境を勝ち取らなければならないと思うんです。癒しは人から与えられるものではないですから。いや、別にそんな高慢なこと表現しようとしてアルバムを作っているわけではないんですが(笑)、そんな想いをのせて作ったアルバムなわけです。

それでは、続いて3曲、 『夢の星空』、『Bolero』、『a Wish to the Moon』… この『a Wish to the Moon』は、ビールのCMからの曲なのですが、これらを演奏しようと思います」


以前から、『癒し』という言葉に関しては、あまり良い印象を持ったコメントをされていない久石だが、この日も、一時的にブームにまでなった『癒し』について問題提起された。私も、このコメントにはハッとさせられた。「癒しを求めたければ、自分で癒される環境を勝ち取れ」…最近の風潮では、『癒されたい』という他人本位な感覚が持てはやされ、積極性が感じ取れる前向きな態度っていうのが見いだされないものだった。でも、自分の理想の生活を求めるなら、その環境を勝ち取ろうとする姿勢を作らないといけない。そんな想いの乗った曲だからこそ、単なるBGMでもなく、環境音楽でもない、独自の久石ワールドが氏の醸し出す音が繰り広げられていくのだろう。

a Wish to the “ETUDE”

・夢の星空 ~ソロアルバム『ETUDE -a Wish to the Moon-』より~
楽曲紹介が終わり、拍手のボリュームダウンとともに、ステージ上の照明も落ちていった。完全に照明が落ちると、ステージ上に設置されていた青い色の淡い照明が、あたかも夜空とそこに瞬く星空のように、暗い会場内からステージを浮き上がらせた。幻想的な雰囲気。そんな中から、ピアノソロの音が会場内を包み込んだ。

この曲は2分半ほどの短い曲なのだが、この会場の雰囲気と、曲のゆったりとした感じと相まって、もっと長かった印象がある。ゆったりとした曲調の中にも、メロディの芯の強さがあるように私には感じた。CDのライナーノーツを読んでいただくと分かるだろうが、CDのジャケットデザインは、この曲をイメージしたものだろうと思われる。ひとりだけで孤独な世界をゆっくり歩く。周りには何も無いかも知れない。でも、自分をしっかり持って歩めば、何か見つかるんじゃないかということが表されているのだろう。きれいな星空をふと見つけただけでも、「またこれからもやっていける…」という気持ちになるかも知れない。

そんなことを想うと、もしかするとこの曲は、このアルバム『ETUDE』の影のテーマ曲なのだろうか。

・Bolero ~ソロアルバム『ETUDE -a Wish to the Moon-』より~
軽快なピアノの音色が続いていく。そこにチェロのゆったりとした重く力強い音が入ってきて、何となく相反するような音色と音色が徐々に混ざり合い、ピアノの音もチェロにつられて低くそして重くなっていく。そこで新たなハーモニーが生まれる。

曲中、『月に憑かれた男』と同じように、ピアノの手が休む場面で、久石はまた半身を乗りだし、感情豊かにチェリスト達を一つの到達点へと導いてゆく。


・a Wish to the Moon ~ソロアルバム『ETUDE -a Wish to the Moon-』より~
久石のコメントにもあったように、キリンのビール「一番搾り」のテレビCMにて使用されている楽曲がこれである。楽しげなメロディがピアノからまず繰り広げられた。まさに、月でウサギが踊っているような曲調だ。その月に無理難題な願い事をかけて、月に「あるか、そんなモン!」と言われてしまうといった感じで、終始アップテンポな感じだ。

きれいなピアノとチェロアンサンブルの音が心地良いなと思っていた矢先、不意に口笛が聞こえてきた。チェリストたちが、久石のピアノの伴奏に合わせ、指を鳴らしながら口笛を吹いている。この不意打ちは非常に嬉しかった。そう、テレビCMでは口笛での演奏ヴァージョンが使われているため、「なるほど」と納得された方も多かっただろう。チェリストたちも、ノリながら口笛を吹いているようだった。


演奏の最後の音が消えた直後から、会場から一斉に拍手が送られる。その拍手に笑顔で応える久石譲。その直後、マイクを手にとって話し始めた。

「そうそう、さっき言うのを忘れていました。うつくしま未来博で作られた『4 MOVEMENT』なんですが、これがDVDとCDサウンドトラックがセットになって発売されています。未来博の会場では、この作品はメインスクリーンとウォータースクリーン2面の計3面で上映されていたんですが、それを1面に再編集して作り直しました。

先ほど、『View of Silence』という曲を演奏したのですが、この曲は以前から人気がある曲で、今回『4 MOVEMENT』のDVDのエンディングに使われています。今回、『4 MOVEMENT』はDVDと一緒にサウンドトラックもついていて、そのサウンドトラックに収録されていますので、聴いてみてください」

当日、郡山の会場でも、この『4 MOVEMENT』のDVDが販売されていた。販売所では、休憩中やコンサート直前直後はずいぶんの混みようで、かなり売り上げられていたようだ。

His Favorite Music

DVDの話題に続いて、久石は話を続けはじめた。

「えー、残りの曲目が2曲となってしまいましたが、このコンサートの直前、このチェロであらかじめレコーディングした曲があります。NHKで放送されている芸術…… (ピアノの上に置かれてあった資料を見返す) ……NHKの『世界美術館紀行』という番組のテーマ曲を作りました。…どうも、以前に同じNHKの『日曜美術館』という番組のテーマを作ったせいか、タイトルが混同してしまうのですが…(苦笑) このテーマ曲、なかなか良いものに仕上がり、個人的にも非常に好きな曲です。せっかくだからみなさんに聴いていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか?」

会場から一斉に拍手が送られる。

「それではっ! 演奏しようと思います」

そう言うと、久石は指揮台前に陣取り、楽譜を用意しはじめた。チェロアンサンブル用の楽曲なのである。


・題名未定(のちの「Musee imaginaire」) ~NHK番組『世界美術館紀行』テーマ曲より~
久石譲の指揮により、チェロの壮大な音が目の前で繰り広げられてゆく。個人的に感じた部分としては、序盤はゆったりとして、なおかつ壮大なチェロの音色が空間を流れていくというものだった。後半あたりなどは、多少アップテンポしつつ力強く演奏がなされたり、ちょっと間奏的に軽めのメロディになったりという場面があった記憶がある。また、非常に長い曲だった記憶もあるが、初めて聴いた曲でもあり、ハッキリと覚えていないのが悔やまれる。この点については、後日、東京公演を収録したDVDが発売されるので、そちらで確認していただきたい。

『世界美術館紀行』のテーマ曲が鳴りやむと、久石譲及びチェリストの面々に対し、暖かい拍手が送られた。すると、プログラムの終わりを飾る2曲を演奏しはじめた。


・la pioggia ~映画『時雨の記』より~
『風のとおり道』の時と同じように、久石譲のピアノとコンサートマスター近藤貴志のチェロとの二重奏から演奏が始まった。この楽曲は、澤井信一郎監督がメガホンを取った『時雨の記』という映画のメインテーマとして使われている。

この『la pioggia』とはイタリア語で「雨」を意味しており、そのしっとりとしたメロディから『la pioggia』は非常にピアノとチェロとの相性が良く、過去のコンサートでも幾度か演奏されている。今回のツアーでメインのコンサートマスターを務めている弟の近藤浩志は、非常に音を溜めて力強い演奏をしているのに対し、この郡山でのコンサートマスター、兄の近藤貴志のチェロの独奏は、流れるように音が奏でられていたように記憶している。

楽曲を演奏しているさなか、コンサートマスターの近藤貴志の譜面台から、楽譜がフッと落ちてしまった。しかし、そんなトラブルにも慌てる素振り無く、演奏の合間に楽譜を譜面台に拾い上げて、堂々と演奏をし始めるところが印象に残っている。多少のトラブルにも動じないところがプロのプロたる所以なのだろうか。

楽曲途中から、他のチェリストの演奏も混ざり、壮大なラストで演奏が終わる。


・Tango X.T.C. ~映画『はるか、ノスタルジィ』より~
軽快なタンゴ調の響きが、ホール内に繰り広げられる。この曲の元は大林宣彦監督映画作品『はるか、ノスタルジィ』にて使用された『追憶のエクスタシー』という曲で、後にこの曲が発展し『Tango X.T.C.』になった。ちなみに、「X.T.C.」というのはエクスタシーと読ませる。これは、海外に同名のバンドがおり、久石がその名前に惹かれて曲のタイトルに使用したという経緯がある。

タンゴ風のリズムに乗りつつ、ピアノとチェロが激しい音を聴かせてくれる。すると、不意にチェロを床に置いて、立ち上がるチェリストがいた。確か第3パート担当のチェリストだったと記憶している。いきなり弦でも切れてしまったのかと勘ぐってしまったが、全くそういうわけではなかった。後ろに備え付けてあったハイハットシンバルを演奏するために立ち上がったのだった。スティックを手に、軽快なリズムを刻んでゆく。ピアノとチェロとシンバル。一つの音が増えただけでも、また一つ世界観が広がるような感じがして、音楽のノリも一段と増していった。

ENCORE

曲が終わると、客席から盛大な拍手が送られる。さっと椅子から立ち上がり、コンサートマスターの近藤貴志と握手を交わした久石は、客席に向かい深々と頭を下げた。そして、その全身で拍手を受け止め、浴びる。何度か幾方向に対して頭を下げた後、ステージ袖に戻っていった。鳴りやまない拍手。そう、客席はアンコールを待っているのだ。拍手が鳴り出してからどのくらい経っただろうか、ステージ袖に戻った久石は再びステージへと戻ってくる。すると、ピアノの前に腰をかけ、アンコールを披露する準備に入った。


・TOTORO ~映画『となりのトトロ』より~
アンコールを望む観客の拍手が鳴りやむと、多くの人が耳馴染みをしているだろう楽曲がピアノとチェロの音色に乗って、私たちの目の前にやってきた。そう、宮崎駿監督映画作品『となりのトトロ』の主題歌である。前回のシンフォニックコンサートでは『青少年のためのオーケストラストーリーズ・となりのトトロ』という作品を創り出し、CD化もされた。しかし、アンサンブル形態のコンサートによる『となりのトトロ』は初めてだろう。これまで、コンサートで『となりのトトロ』を演奏されるのが非常に少なかったのだ。

静かな音色から始まり、徐々にテンポアップしていく。あの宮崎駿作詞の有名な歌詞が頭に流れ、口ずさみたくなるようなメロディ。「トットロ、トットーロ」と軽快に、でもしかし優雅にメロディが流れてゆく。

楽曲のラストは、『オーケストラストーリーズ・となりのトトロ』のもののアレンジから使われているようで、本当に元気良く曲の最後を飾った。


拍手がホール内を包む。久石譲はその場から立ち上がり、拍手を身にまといながら、観客に向かって一礼をする。続いて、今回の出演者の紹介がなされた。第一セクションから順に名前を読み上げる。呼ばれる度に拍手の波が強くなる。

そして一通り紹介が終わった後、また会場に向かい一礼をし、ホール内をなぜかゆったりと見回していた。何かを待っているような雰囲気にも見て取った方もいたようだ。

これは後から気づいたことだが、公演中に花束を渡す場面があり、主催者側から「アンコールが終わってから渡すように」との申し合わせが伝えられていた。おそらく、この言葉が主催者側と観客側双方に思い違いを起こさせてしまったようだ。観客側としては「アンコールの楽曲が全て終わった後」という認識だったのに対し、主催者側は「アンコールは基本的に1曲で、再アンコール、再々アンコールがある可能性があるとの立場からアンコール1曲目の後」という認識があったのではないだろうかと思う。そんな状況から、主催者側の演出目論見が見事外されてしまい、期待をしたシーンに花束を渡す演出ができなかったというような形になってしまったのではないかと思われる。そんな経緯もあってか、東京の今コンサートツアー最終公演では、「アンコール1曲目の後に花束をお渡し下さい」との注意書きが会場にて掲示されていた。これはこれで、アンコールが暗に複数曲あることを示しているのだが、仕方ないところなのかも知れない。

久石は拍手の中、ステージ袖に退いたがすぐにステージ上に戻ってきた。カーテンコールで、客席に応えて再び頭を下げた後、ピアノの前に腰を据えて演奏体勢に入った。

Madness ~ソロアルバム『MY LOST CITY』より(映画『紅の豚』挿入曲)~
元々は久石譲のソロアルバムに書き下ろされた楽曲だが、この曲をいたく気に入った宮崎駿監督が同監督映画作品『紅の豚』に使えないかと打診し、映画中の飛行艇のスピード感あふれる離水シーンで使われた。非常に力強く、アップテンポな曲である。チェロの音を響かせる弓が右へ左へと激しく踊り、またシンプルなピアノのメロディが力強い音色により久石譲の指先より発せられる。

この曲は久石ファンには非常に馴染みの強い曲で、最近のコンサートでは演奏されなかったことはまず無いのではないだろうか。久石本人も非常に気に入っている曲のうちのひとつだということもあり、コンサートの最後やアンコールでよく演奏される。この「Madness」の良いところはとにかくパワフルだということだろう。特に曲のラストでそれぞれの楽器が出しうる音量を爆発的に「ジャン!」と鳴らして締めるあたりが、聴いている観客としても、また演奏しているプレイヤーとしても非常に気持ちいいものだろうと思う。

今回のコンサートでも気持ちの良いパフォーマンスを見せてくれた。力強いチェリストの弓の動き、そして最後に腕を跳ね上げるほどの力強い演奏で締めてくれるピアノ。

最後の音が鳴りやむと同時に拍手が間髪無く鳴り響く。ホールに集まった2,000人ほどの満員の観衆が拍手を送り続けている。

久石は立ち上がり、その拍手に応え、頭を下げる。すると、花束を持ってステージ上に歩み寄っていく観客が現れた。10人くらいだったろうか。思い思いの花束を差し出して、何かひと言を伝えながら握手を交わしてゆく。そんな私も花束を渡したのだが、やっぱり、いつものことながら滑舌が悪く、舌が回らなかった。それと、郡山市民文化センターのステージの高さが若干高めなので、花束を渡すときはホントに見上げるような形になってしまい、しかもちょうど天井につり下げられたライトと久石の顔が重なってしまっていた。この点は仕方のないことなのだろうが…

花束を渡す間も拍手が続き、何度かカーテンコールを受けつつ、久石譲その人は退場していった。終演である

とにかく、このコンサートについては、横っ面を叩かれたような感覚があった。ソロアルバム「ETUDE -a Wish to the Moon-」のプロモーションを兼ねたコンサートだったわけなのだが、コンサート前にこのアルバムを聴いた感想は、「ちょっと今までと違うな」という感じで、私個人としては違和感を覚えるような感覚だった。どうしても映画から音楽を感じるという部分が私としてはウェイトが高かったため、ほとんどが新曲であることも重なり、そういう風に思ってしまったのかも知れない。

しかし、このコンサートでその感覚が吹っ飛んでしまった。特に「ETUDE」からの楽曲がとにかくパワフルでかっこよく思えた。覚えている限りで比較をすると、先ほども述べた点だが、ピアノのタッチがコンサートの方が強かったように思う。どうしてなのかを分析すると、やはり「ETUDE」というタイトルどおり、アルバムの中では楽曲をお手本のように、華麗にうまく弾きたいという思いが久石譲の中にあったのではないだろうか。そのために若干、いつものピアノタッチよりも弱くなったと思われる。逆にコンサートでは、楽曲を弾くのに慣れてきて、本来のタッチの強さが戻ってきたのだろう。非常にうまく弾きこなされていたように私には感じた。

それと、やはりホールで生の音楽を聴くという情報量は圧倒的なものがある。CDはいわば表面的な音を表現するしかない。しかし生で音を聴くということは、音を聴くという行動以外にも、音を感じたり、音を奏でる様子を観たり、雰囲気を感じたり…… さまざまな角度から、五感を活用して楽しむことが出来る。その圧倒的な力から、「ETUDE -a Wish to the Moon-」へ与えるインパクトは強かったように思う。まさに、プロモーション成功と言っても良いのではないだろうか。

ちなみに、このコンサートツアーの最終日を飾る東京公演の様子がDVD発売されるということなので、アルバムと聴き較べしてみるのも良いのかもしれない。何かの発見があるのではないかと思う。

祭りの後に…

この郡山公演が終わった後、私は友人たちとともに出待ちを敢行した。この日の郡山は非常に寒かった。春の陽気を全く感じさせない寒さだ。そんな中、チェリストの方々などがチェロを抱えて出てきていた。ワゴンタクシー1台ににチェリスト3人とチェロ3台が乗り込み、宿泊先へと向かっていたようだ。じっと通用口で待つこと30分ほど… やっと久石譲その人が出てきた。黒い帽子に黒いシャツ黒いジャケットと黒ずくめの出で立ちで出てきた。手には保護用に白い手袋をしている。

「寒い中申し訳ありませんが、サインお願いします!」

そう声をかけつつ、色紙とマジックを渡す。なぜだか、この時は滑舌は良かったようだ。寒いところ、嫌な顔せずサインを受け付けてくれるのは、ファンにとってこの上ない喜びである。この時、背中にサインを書いてもらった青年もいた。コンサートで感極まり、とにかく握手目的で出待ちをしたようだが、サインをもらえると分かると、何かにもらいたいということで、洋服の背中にもらうことにしたようだ。

この時に話を聞いたのだが、郡山公演では体調が優れず、薬を飲みながらのパフォーマンスだったようである。確かに曲名を忘れてしまったり、MCが若干少な目だったりしたところを考えるとそうだったのかも知れないが、演奏する姿を見る分には全くそのようには感じなかった。

この寒い中、サインを書いてもらい、ファンとしては恐縮至極であるにもかかわらず、久石譲その人の口から出た言葉には恐れ入った。

「こんな寒い中待っててもらって本当にありがとう!」

このひと言には参った。恐れ入った。映画音楽の巨匠と呼ばれる人物がこの謙虚さなのである。体調が悪いにもかかわらずである。やはり大物はその器が違うのかも知れない。

挨拶をしサインをもらった私たちは、車に乗ったその姿を見送り、帰途についた。


以上が郡山公演の全記録である。他の公演とは若干違う部分があるかも知れないが、コンサートの雰囲気が伝われば、願ったり叶ったりである。それでは、また次のコンサートの機会にでも、このコンサートレポートでお会いしよう。

初校 2003/04/29 17:00 書き上げ
第二校 2003/04/30 20:45 修正変更

おまけ(東京公演1)

今回は本当に堅苦しい文体で書いていたので、徐々にわけが分からなくなって手が進まなくなっちゃってました(苦笑)。これで良かったのかなあと思いつつ…(苦笑)

それで、おまけとして、ツアーのファイナルである東京公演についても軽く触れておこうと思います。今回は郡山と東京の二公演に行ったんですよ~ お金はかかったんですけれど、聴き較べるのもなかなか乙なものだと思いますねえ。

それで、東京公演の舞台となった東京の初台にある東京オペラシティコンサートホール・タケミツメモリアルなのですが、人がごった返してます。人がいっぱいです。始まる前に、オペラシティ内の軽飲食店にいて、その時は全く気づかなかったのですが、ホール内に入ると、人ばかりですね。いつものようにパンフレットを買って、ホール内になだれ込みます。

僕は前から2列目に陣取っていたのですが、ホール内には見える範囲内で10台ほどカメラが設置されていました。配置図は下の図のとおりなのですが、本当にカメラが多くてビックリしました。2000年の時のコンサートでもCS放送でコンサートの模様が流され、この時は4台ほどだったように記憶しているんですが、今回はその倍以上ですから。しかもマイクロソフトなどとの協力により、この日の模様はネット配信もされました。だから、非常に力が入っていたのだと思います。

カメラの配置図

実際の演奏の方なのですが、この日は10人のチェリストがそろわず、結局9人になってしまったようでした。急遽、何か発生したのかも知れません。そんな中、演奏されたのですが、1曲目の『KIKI』の演奏が非常に素晴らしく、演奏最後の音の響きが心地よく響き、音が消え入るまでの時間が非常に長く感じました。静かな音色が微妙に、消えるか消えないかという感じで続く。切なく儚い音色なんですよ。それが、ホールが良く、そしてチェリストのみなさんの腕が良いのできれいに響いて、そのために観客の僕らは拍手のタイミングを失い、次への『谷への道』へ拍手無しで続けて演奏されました。

久石さんのコンサートでは、曲ごとに拍手されるのがほとんどでした。クラシカルな演奏会の場合は、組曲と言われたら、組曲が一通り終わるまで拍手はしないし、「続けて演奏します」と言われたら、その間は拍手しないというのが基本らしいのですが、久石さんのコンサートはとにかく1曲ごとに拍手、というスタイルでこれまで来ていました。そういうことで、僕がコンサートに参加した中では、初めて拍手無しで次の曲に移ったんじゃないかと思います。

そして、コンサート中の久石さんのMCなのですが、非常に少なかったです。郡山公演であった「4 MOVEMENT」のDVDの話や、他にもコンサートのDVD収録の話などあまり出てきませんでした。曲の説明もあまり無かったです。インターネット上でストリーミング生中継をされているためなのかも知れませんが、余計なことはあまり口にされていませんでした。

後半のソロアルバム『ETUDE -a Wish to the Moon-』の演奏では、郡山公演では無かったのですが、『月に憑かれた男』の後に、『impossible Dream』が演奏されました。コンサートパンフレットにはちゃんとプログラムとしてこの曲は掲げられていたのですが、演奏された公演とされなかった公演とがあったようです。

・impossible Dream ~ソロアルバム『ETUDE -a Wish to the Moon-』より~
この曲は静かなピアノのソロから始まった。ピアノがメインメロディを奏で、ついでリレーのようにチェロがメインメロディを引き継いだりと、流れるように演奏は続くが、徐々にその演奏は熱くなって行く。ホール内に響くピアノの低音部が、リズム良く鳴り響く。それにあわせ、チェロも力強くそれぞれの音を醸し出している。曲のラストは、激しかった曲調が静かになり、密かに終演を告げる。久石譲その人は、響く音が鳴り終わるのを待つかのようにピアノの前で目を閉じ、音が消え入るまで身動き一つしなかった。

(曲紹介だけコンレポ本文の文体に戻してみました…汗)

…そうそう、『夢の星空』での演出は本当にきれいでした。郡山でも照明を落として、星をイメージした青白い照明で幻想的にホールを演出していたんですが、オペラシティでも、全ての照明を落とし、ステージ上の久石さんを中心に青白い光で浮かびだし、また現代調のパイプオルガンも同じように青白くライトアップしていて、その光景が非常にきれいでした。これはDVDで是非とも観ていただきたいなと思います。

『a Wish to the Moon』ではもちろん、口笛を吹く場面がありました。チェリストのみなさん、非常にノリノリでしたよ。

『la pioggia』では、今ツアーの正コンサートマスターである近藤浩志さん(この近藤浩志さんは久石さんと過去のコンサートでよく演奏されている方で世界各国を渡りその演奏を絶賛されて、評価の非常に高いプレイヤーのお一人です。ちなみに、本文中でも書きましたが、郡山でコンサートマスターを務めた近藤貴志さんは浩志さんのお兄さんで、海外で活躍されているチェリストの方です)のソロがあったのですが、これがまた非常に素晴らしかった。久石さんと近藤浩志さんは長いつきあいだそうですが、呼吸がピッタリ合っていて、非常にパワフルな演奏でした。ピアノ1台とチェロ1台で、ものすごく迫力のある音が発せられており、「こんなに大きな音が出るものなのか」と圧倒されるほどでした。

そして、『Tango X.T.C.』では、郡山と同じようにハイハットシンバルが演奏されていましたが、今回は第1セクションの方が演奏されていました。東京では第1セクションには2人(うち一人は郡山コンマスの近藤貴志さん)と今回のコンマスの近藤浩志さんのあわせて3人だったので、1人余裕がある状態だったのかも知れません。

おまけ(東京公演2)

そうそう、東京会場での花束は、今回のコンサート本文中にも書きましたが、「アンコール1曲目に渡してください」との張り紙がされていたので、『TOTORO』の後に渡されたんですが、今回の東京は非常に盛り上がって、花束を渡す人が何人いたか分からないほどでした。久石さんも何度か長蛇の列を眺め、「えっ、まだ続くの!?」という感じでビックリされてました。おそらく50人以上は軽くいたのではないかと思います。僕もちゃんと渡しました。今度はドモらなかったと思うんですが、もう何を話したのかは忘れてしまいました(苦笑)。

この花束を渡している間に会場を盛り上がらせた方がいらっしゃいました。キリンビールの『一番搾り』2リットル缶を手にして現れた方が!(笑) 会場大うけでした。「そう来たか!」と、非常に感心してしまいました。久石さんも驚かれていたようですね。

あ、そうそう『一番搾り』で、東京で久石さんがおっしゃっていたMCを一つ、思い出しました。「a Wish to the Moon」の話をしていた時だと思うんですが…

「僕は義理堅い人間なので、CMを手がけるとなるべくその製品を頼むようにしています。だから飲み屋に行くときにいつも頼むのはキリンの『一番搾り』です」

(ここで会場から拍手が送られる)

「でも、トヨタ・カローラのCMもやっていたんですが、残念ながらカローラは買っていません(爆)。ごめんなさい(苦笑)」

このMCは非常に大うけでした。このMCがあったものだから、『一番搾り』を持ってきた方がツボをついたんだと思います。しかも一人だけだと思ったら、もう一人『一番搾り』を手にした方がいたものだから、沸いている会場、もっと沸き、沸騰状態になってました。

そして、やっと花束が全員渡し終えたと思ったら、最後に颯爽とステージ前に来られたお二方。久石さんにトトロのぬいぐるみを渡されました。このお二人、僕はもちろん知っているんですが、お名前は敢えて出しません(笑)。このトトロは口にカードをくわえていて、そのカードには『久石さん、世界一!』と書かれてありました。久石さん、花束贈呈を終えて、そのトトロを右手に大きく掲げました。会場は盛大な拍手とすごい声援に包まれました。この時、会場後方からものすごい声を張り上げていた方がいたんですが、どのように声を出していたのでしょう?(苦笑) また、口笛で声援を送っていた方もいらっしゃいました。

久石さんが手にしたトトロは、ピアノの足下に置かれながらアンコールに聴き入っていました。
よく見えないかも知れませんが、「久石さん、世界一!!」と書かれてるカードをくわえているようですね。

そして、アンコール曲の『Madness』を弾き終えると、再び盛大な拍手が。で、ちょっと間をおいてスタンディングオベーションが起こりました。本当に見事なパフォーマンスに感動し、自発的に立たれる方が多数。というより、会場ほぼ全員、スタンディングでした。ここまで盛り上がったのは最近例を見ません。ホントに大盛り上がりで、また拍手やら、大きな声やらが飛び交い、久石さんも感無量という感じです。この日は最終日ということもあって、チェリストのみなさんに握手を求めて動き回ってました。最初にコンマスの近藤浩志さんのところへ向かい、『夢の星空』の時に使った照明を踏まないように気をつけながら、一人一人に握手をされていました。

その間も、全然拍手が鳴りやみません。久石さんは、何度カーテンコールを受けても、そのスタンディングオベーションからの拍手は鳴りやむことを知りませんでした。苦笑いをしながら、久石さんはチェリストのみなさんを退場させて、一旦ステージ袖に戻るものの、まだまだ拍手が鳴りやまず、「負けたよ」といった表情で、ピアノに向かいました。そう、アンコール3曲目があったわけです。

・君だけをみていた ~フジテレビ系ドラマ「大人は判ってくれない」メインテーマ~
この曲は非常に希少価値が高い名曲だと思います。1992年にシングル盤が発売されましたが、アルバムには収録されていない曲で、なかなか聴くことが難しい楽曲の一つです。そのシングル盤では、ピアノの音色を中心にシンセサイザーがふんだんに使われていて、今のアコースティックな感じとはまた違う雰囲気を持っています。

その曲がピアノソロとして蘇ってきました。アレンジも随分変わっていたように思います。非常に溜めの効いたピアノソロで、最初はスローテンポだったのに、途中アップテンポになって軽快な音色を響かせたり、音を溜めに溜めて、力強いタッチでメロディを聴かせてくれたりと、ピアノの音色が目の前で七変化を見せてくれるような感じでした。

特に曲の最後、ユニゾンで力強くメロディを響かせる部分はグッと来ました。


もう、曲が終わったら盛大な拍手の嵐ですよ。そして再びスタンディングオベーション。僕もちらほらと立ち上がっている人がいるのを確認して(笑)、それでも早めに立ち上がりました(爆)。本当に、全員がスタンディングなんですもん。1階席はもちろん(とはいえ、1階席の後ろの方までは確認できなかったけど…)、2階席も3階席も、立っている人がほとんどでした。本当にものすごい拍手やら、歓声やらで… 怒号っぽい声も混じっていたり(苦笑)。

ものすごい盛り上がりののち、今回のコンサートツアーファイナルの大団円を迎えることと相成りました。


で、実はですね… この東京公演でも出待ちを敢行しました。また通用口で待っていたんですが、久石さん、ちょっとサインを書かれた後、「ちょっと人を待たせていて、そちらに行かなきゃいけないからついてきて」とおっしゃり、すたすたと東京オペラシティの建物内を縦断(苦笑)。着いたところは、オペラシティ地下1階にあるイタリアンパブの『ハブ』でした。

実は、そこで今回のツアーの打ち上げをやっていたようなんです。久石さん、足早にそちらに向かって、挨拶をされて一番搾りなどを飲まれていたようです(笑)。で、そこに今回、コンマスを務められた近藤浩志さんと、郡山でのコンマスで浩志さんのお兄さんの近藤貴志さんがチェロを手にパブに現れました。

僕は「la pioggia」に特に感銘を受けたので、近藤浩志さんにサインを頂きたいなあと思っていたので、タイミングを見計らってサインを頂き、貴志さんにもちゃっかりサインを頂いちゃいました。兄弟のサインってのもなかなか乙なものですね(笑)。

で、久石さんはパブからちょっと出てこられたんですが、直後にサイン責めです。サインを書かれたり、写真を一緒に撮ったりされてましたよ。来られた方ほとんどがサインを頂けてたんじゃないかなと思います。そういうわけで、即席サイン会は終わったわけです(苦笑)。


…その後、僕を含めて数人がパブのとなりの『アンナミラーズ』というところで、飲み物を口にしながらコンサートの感想などを語り合っていました。まあ、すぐにラストオーダーを迎えてしまうくらいの時間帯だったので、あまり長い時間喋っていられなかったのですが、ちょうど店から出たら、となりのパブでも打ち上げが終わる頃でした。ただ、また近寄ってどうのこうのとやってしまうとストーカーに間違われそうなので、そっと帰りましたが…(苦笑) でも帰り道、チェロを抱えた方をちらほら眺めることができましたよ(笑)。

 

そういうことで、コンサートレポートはこれで本当におしまいです。おまけがずいぶん長くなってしまいました(苦笑)。何か、読み返すと「おまけ」の方が読みやすいんじゃないかと不安になったりします。困ったもんだ(汗)。

ただ、今回のコンサートレポートについては、日記にも書いたんですが、悪いところをあげつらってああだこうだと書くのは安っぽい評論家みたいな感じになるので、なるべく良い点を探しながら書き上げていこうというスタンスで書いてみました。もちろん、良い点を並べようとして逆にウソをつかないようにも気をつけました。そういう部分を気にしましたが、上手く書けているか不安です。でも、書いてしまったものは仕方がないので、ここに公開します。

それでは、今度こそ本当のコンサートレポートの締めです。この長い文章を読んでいただいてありがとうございました。また、次回作があるかどうか分かりませんが、どうぞよろしくお願いします。なお、このレポートの引用などをする場合については、私にご一報下るようお願いしますね! それでは、この辺でおさらば!

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