PIANO STORIES’99 Emsemble Night with Balanescu Quartet (from Be HISAISHIST!! Volume.1)

僕がはじめて行った久石さんのコンサートです。いろんな出来事があった、思い出のいっぱい詰まっているコンサートでした。ハプニング(?)もありましたが、本当に記憶に残るものでした。皆さんにもその記憶の一部でもお伝えしたかったので、このようにレポートとして残してあります。このコンサートに来れなかった人も、いっしょに楽しんだ人もご覧いただければと思います。

日時1999年11月11日(木) 18時から
会場東京芸術劇場
チケット全席指定 S席6,500円
出演者久石 譲(ピアノ)
Alexander Balanescu(第一ヴァイオリン)
Thomas Pilz(第二ヴァイオリン)
Chris Pitsillides(ヴィオラ)
Nick Holland(チェロ)
金城寛文、高野正幹(ウッドウインド)
斎藤順(ベース・コントラバス)
神谷百子(マリンバ)
大石真理恵(マリンバ・パーカッション)

曲目

794BDH / Sonatine / New Modern Strings / MKWAJU / TIRA-RIN / EAST (Balanescu Quartet Original Song) / Two Of Us / 太陽がいっぱい / Les Aventuriers

    INTERMISSION

アシタカとサン / HANA-BI / DEAD Suite [d.e.a.d.] / DEAD Suite [愛の歌] / DA・MA・SHI・絵 / Summer / Tango X.T.C / Kids Return

encore
もののけ姫 / Madness / DEAD Suite [愛の歌] (special encore)

TOUR SCHEDULE

10月21日(木)倉敷倉敷市民会館
10月23日(土)大阪フェスティバルホール
10月24日(日)名古屋愛知厚生年金会館
10月28日(木)盛岡盛岡市民文化ホール
10月29日(金)仙台宮城県民会館
10月30日(土)秦野秦野市文化会館
11月1日(月)広島広島郵便貯金ホール
11月2日(火)広島広島厚生年金会館
11月5日(金)福岡メルパルクホール福岡
11月8日(月)札幌札幌コンサートホール
11月10日(水)東京東京芸術劇場
11月11日(木)東京東京芸術劇場
コンサートチラシより
コンサートチラシより

平成11年11月11日の記念の日に、JRの○○線の某駅から特急列車に乗り、東京へと向かいました。そう、目的はもちろん、生の久石さんを、生の演奏を聴きに行くために。車中でCDを聞くため、CDプレーヤーと共に「Joe Hisaishi Symphonic Best Selection」や「WORKS 1・2」などを持ち、もちろん車中で聞いておりました。でも、やはり長旅、疲れてウトウトしていたんですが、途中僕の隣りの席に座った男性が、眠っているのだか何だか分からない人で、だんだん眠りの世界に入っていき、頭が傾いたと思ったら起き上がり、また傾いたら起き上がりと、なにか出来の悪いオーケストラの指揮者みたいで面白かったです。ウトウトしていたのも、一気に目が覚めました。

で、そうこうしているうちに到着し、電車を乗り換えて池袋まで来ました。とりあえずお土産にと西武に行きました。この2週前に東武に行ったので、今度は西武へと思っていたんです。で、ふと思ったこと。なぜ池袋の西側に「『東』武」があって、なぜ東側に「『西』武」があるの、と思ったんですが、誰かこの質問に答えてくれる人はいらっしゃるでしょうか。やはり池袋の謎なんでしょうか。

そのあと、買い物も済ませ、ホテルへチェックイン。少し休んでから、コンサート会場である東京芸術劇場へ向かいました。いやあ、田舎者から言わせると「でっかい」なあという建物でした。かなり早く着いてしまい、ホールでウロチョロしていました。何か胸ポケットに赤ペンを掛けている、妖しい人がウロチョロしているなあって感じの僕でした(笑)。暇だから、赤ペンをくるくると回して遊んでたし…(笑)。そうこうしているうちに、会場時間17時30分になり、入場。CDを3枚とパンフを買って、自分の席へ。その時、nezさんの掲示板でお世話になっている渋谷さんやNANAさん、七重さん、みせす ちゃいるどさんにお会いし、ちょっとお話をしました。そのあとコンサートが終わった後ですが、でぶトトロさん、遥楽さんにもお会いしました。その後、渋谷さんと遥楽さんと一緒にちょっとしたお話を出来たのが楽しかったです。その話は後に回しまして… いつの間にか時が過ぎ…

18:00 開演のアナウンス
これはいつもの如くのようですが(僕は初コンサート)、誰も出てこられません。しばし待つ…。

18:05 バラネスクカルテットの方々入場!
おお、バラネスクさんだ! 「醍醐寺音舞台」と同じだ、と感慨にふけっていました。おなじみのハットをかぶって、出てこられました。ところが… 拍手なし… うーん、いくら脇役だったとしても、今回の題名に『with Balanescu Quartet』とあるように、今回のコンサートの目玉なんだから拍手があっても良かったと思うんですが…(そうそう、やっぱり醍醐寺のときにいた、第2バイオリンだったバラネスクさんの奥さんがやっぱり来られていなかったですね) このあと、マリンバの方やウッドウインド(サクソホン、フルートなどを吹く人)の方々が出てこられ、音あわせをしておりました。…と、音あわせが終わると、会場が静寂に包まれ、徐々に照明が落ちていきました。そろそろかな…

醍醐寺音舞台」 京都の醍醐寺で行われたJAL主催のコンサート。久石さんが総合演出をし、バラネスクカルテット、ディープフォレスト、ニューヨークシティバレエ団などが出演。
バラネスクカルテット」 1987年に結成。ヴァイオリン奏者アレクサンダー・バラネスクを中心に活動を行っている。ジャンルにとらわれない演奏で世界的に注目を浴びている。


18:07 久石譲 登場!
久石さん登場。うおお! 本物、本物! ありゃ、もうちょっとすらっとした体型の方なのかなと思っていたんですが、そうでもなかった(笑)。スポットライトを浴びた久石さん、舞台中央でじっとまっすぐ前…でもなく、前方ちょっと斜め上を見つめ、非常に緊張した面持ちで一礼。会場から大きな拍手が。

とりあえず、ここで位置関係を言っておきますと、手前左側からウッドウインドの方が2人(金城寛文さん、高野正幹さん)、そして中央にはもちろんピアノの久石さん、右側にはバラネスク・カルテットの方々4人(右端からバイオリン×2、ビオラ、チェロ)。後方左側にマリンバの神谷百子さん、久石さんの後ろにコントラバス(曲目によってはベースを弾いてました)の斎藤順さん、そして右側にマリンバ&パーカッションを大石真理恵さんという面々。

僕が書いた舞台図です。見づらいですが勘弁してくださいね。

久石さん、会場の拍手の中、ピアノの前につきました。汗をかいた手をハンカチーフで拭きつつ、気持ちを整えてました。そうすると会場の拍手もいつの間にか止み、また静寂の一瞬。「794BDH」が始まりました。コンサートがはじめての僕には、興奮の極みでございまして、すっかりこのときのことが思い出せなくなっております(苦笑+悲)。忘れないようにとメモを取っていたんですが、そのメモには「途中、久石さんは手を休める場面があり、そのとき楽しそうに笑っていた」とありました。やっぱりバラネスク・カルテットと演奏をするっていうのは楽しいんでしょうね。続いて「Sonatine」を演奏。このときは久石さんはバラネスクさんを見つめながらピアノを弾いていました(というか、僕の席からはそのように見えていました)。普通、ピアノってスコアをスコア立て(?)に立てかけて演奏するものだと思っていたんですが、久石さんってスコアを立てかけずに、そのままピアノの上に広げておいたものを眺めながら演奏するって感じでした。曲が長いので立てかけられないんでしょうね。

794BDH」 マツダのファミリア4WDのCMに使われていた曲。軽快なリズムのノリが素晴らしい。
Sonatine」 北野武監督作品「Sonatine(ソナチネ)」のテーマ曲。メロディーの繰り返しが綺麗。

ものすごいど忘れをしていました。「Sonatine」のあと、「New Modern Strings」という曲が演奏されていました。えー、久石さんが喋り始める前か後かはもう忘れてしまったのですが、コンサートの時に書いたメモを見ると、どうも喋る前みたいです。この曲、僕は今まで聞いていなかった曲で今ではもう、どんなものだかは、すっかり覚えていません。僕の持っていないCDの中に収録されている「Modern Strings」を新たにアレンジしたものということなんですが、聞いたことがないので分かりませんとしか言えません。感想も、覚えていないので言えません… メモ帳にも一言、「知らない曲」としか書かれていない… ダメだこりゃ…

New Modern Strings」 久石さんのソロアルバム「I am」に収録されている「Modern Strings」を新たにアレンジしたもののようです。

「New Modern Strings」を演奏したあと、拍手がなっている中、久石さんはマイクを持ってしゃべり始めました。「こんばんは。久石譲、そしてアンサンブルです。今日がコンサートの最後なので思い残すことのないよう頑張ります。温かく見守ってください。」会場から大きな拍手が沸き起こりました。生の久石さんの声、やっぱりテレビとは違いますね。ああ、僕の約10メートル先には久石さんが… 今までテレビでしか見たことがなく、「本当にあんな人が存在しているのだろうか」と思った方はいなかったでしょうか。僕は思いました。でも、この日でその存在は「確信」に変わりました。久石さんは存在するのだと。やっぱりコンサートがはじめての人の特権ですね、この想いは。


続いて久石さんは次の曲の紹介をしました。「続いての曲は「MKWAJU」より、「MKWAJU」、「TIRA-RIN」です。メロディーは出てきませんが、音が作り出す空間的な広がりを聞いてほしいと思います。」ここあたりとかは、nezさんのホームページのレポートと同じですね。

MKWAJU(ムクワジュ)」 短いフレーズが繰り返し、そのメロディがずれていくミニマルミュージック。
TIRA-RIN」 これもミニマルミュージック。アンサンブルヴァージョンはとても素晴らしいです。

ミニマルミュージックとは…
    短いフレーズを繰り返しながら、再生速度のずれているテープレコーダーを2台以上で同時再生しているような音楽です。徐々にメロディがずれていき、同じメロディフレーズでも違う感じに聞こえる面白い音楽です。アフリカの民族音楽だとか…

2曲が終わったあと、久石さんとバラネスク・カルテットの方々を残し、他の方は退場されました。その後、久石さんがバラネスク・カルテットの紹介をされました。醍醐寺音舞台のことをはなされ、非常に相性が良かったので今回のアンサンブルを依頼したこと、現在バラネスク・カルテットがやっていること、そして今までいい感じでコンサートが続いていることなどを淡々と話されました。そして、バラネスク・カルテットのオリジナル曲「EAST」を披露、その演奏中は久石さんは舞台そでへ退場されていました。赤いライトが照らされる中、バラネスクさんが頭を上下左右に動かしながら、激しくバイオリンを引いているのが印象的でした。この「EAST」って曲、聞いた感じですが、音楽シロウトの僕なのではっきりしたことが言えないんですが、なにかミニマル・ミュージックっぽい感じでした。「醍醐寺音舞台」でバラネスク・カルテットが久石さんに感化されて、新曲を作った時にミニマルを取り入れたのかな、とそう考えましたが本当のところはどうなんでしょうか。とは、書いたものの、この「EAST」という曲、「醍醐寺音舞台」でも演奏されてました… でも、バラネスク・カルテットもミニマルミュージックを知っている方々で、久石さんも「おそらく技術的にはバラネスクより上手いミュージシャンは、日本にいくらでもいるでしょう。でも彼らはミニマル・ミュージックのあり方、繰り返すことの意味をよく理解しているんですね。」とおっしゃっており、やはりミニマル・ミュージックをはっきり理解している人でないと、いくら演奏が上手くても曲にならないようです。

「EAST」が終わった後、久石さんが再登場。そして、バラネスク・カルテットのバイオリン1人、ビオラの方が退場し、ピアノとバイオリン、チェロで「TWO OF US」が演奏されました。非常にいい演奏で、感動しました。でも何か演奏の最中、「スースー」と何か物を引きずる音が聞こえたのが気になりました。何の音だったのでしょうか。未だに謎です。演奏中、チェロの人が何かを引っ掛けていたのかな… で演奏後、久石さんがマイクを持ちました。「この曲は大林宣彦監督の作品「ふたり」の為に作った曲です。ですが、何かテレビで流れているようです。ご対面番組だそうで…」久石さん、話が続きます。「バラ色の何とかって番組だそうです。もちろん、私は見ていませんよ。」会場から思わず笑い声が巻き起こりました。「『ふたり』の英語版の曲でした。…分かったかな。」とこの曲の説明で会場から拍手が。そうですね、英語の「TWO OF US」は日本語で「ふたり」って意味になりますね。そうそう、後から思い出したんですが、この「TWO OF US」の演奏中、チェロのソロ部分があったんですが、その部分を引き終えて、安心したのか、チェロ奏者の人が久石さんに向かって笑顔を見せ、久石さんも笑顔で返しました。「上手くいきました」「ものすごくいい音色でしたよ」…そんなやり取りを表情で交わしているような、そんな感じでした。

TWO OF US」 上にも書いたように、大林監督の「ふたり」のメインテーマ。決して「バラ珍」のではない。

次の曲の説明に入りました。「去年に『Nostalgia』というCDを出したんですが、そのレコーディングをイタリアでやったんです。で、せっかくだからという事でニーノ・ロータという人が作った「太陽がいっぱい」を自分なりにアレンジしてみました。3拍子から5拍子にしたり、タンゴ風にしたりと。えー…、そして前半最後の曲は… 何だっけか?」ありゃ? 久石さん、プログラムを思いっきりど忘れしていました(笑)。「そうそう、「冒険者たち」という映画があるんですが、その映画を観て作った(って言っていたかなあ…(汗))「Les Aventuriers」です。お聞きください。」僕は、この「Les Aventuriers」の読み方が分からなかったんですが、僕の聞き取りが正しければ、「レザヴァンチュリエール」だか「レザヴァンチュリエー」だったと思います。コンサート後に、遥楽さんと渋谷さんに確かめてみたんですが、確信的な答えは分かりませんでした…。にしても久石さんの演奏している姿はかっこいいです。鍵盤をたたく姿、フィニッシュの動き。真似したくなる…(笑) でもピアノの弾けない僕には、叶えられぬ(悲)。これからピアノとかの練習をしてみようかなあと、ふと思ってしまいました。

太陽がいっぱい」 ニーノ・ロータという人が作った曲をアレンジ。タンゴのノリはやっぱりすごい。
Les Aventuriers」 『PIANO STORIES II』に収録されている曲。説明は上の文にて…

19:54 前半終了
前半が終わりました。この間、渋谷さんとNANAさん、七重さんとしゃべってました。それにしても僕って黙っていたら30歳代に見られそうなのが怖い… ま、若い時から老けて見られるという事は、年取ってもあまり変わらないってことですね(おいおい、そういうものか?)。そうそう、なぜだか僕の席の前の列、4席が前半、空席だったんですよ。ありゃ、どうしたのかなと思っていたんですが、僕の真ん前の席に男性の方が座られました。うーん、やっぱり目の前に来られると、ちょっと邪魔だったりして…(笑)

20:09 後半開始のアナウンス
例の如く、誰も出てきません。…が、待っているとふと会場が暗くなっていきました。…出てくる、と息を呑む観客、音の全くない一瞬。

20:12 久石さん、再び登場!!
久石さんがお一人で出てこられました。ピアノの前につき、鍵盤に手をつけ… ありゃ、手を戻した。ちょっと躊躇したみたいです。手が汗ばんでいたのかな。少しの躊躇はありましたが「アシタカとサン」のピアノソロが始まりました。この曲、僕のお気に入りの曲です。皆さん、「アシタカせっ記」が好きな方が多いのですが、やっぱり「アシタカとサン」の方が捨てがたいと思っている僕には、とってもありがたい1曲でした。にしても、本当に久石さんはピアノの前では自分の世界に入って感情的にピアノを弾いている感じで、ただただすごいなあと思うばかりでした。続いて「HANA-BI」もピアノソロで演奏されました。この曲の時、はっきりとピアノの鍵盤と久石さんの手がぶつかり合う音が聞こえました。ぶつかり合うと言っても、ピアノの音色が弱くなった時なので、メロディに合わせて「タッタッタッタ」と聞こえる程度でしたけど。それと、この「HANA-BI」の中で、右手で伴奏、左手でメロディーを弾くという場面がありました。何か、左手でメロディというのは弾きづらそうでした。

アシタカとサン」 『もののけ姫』の最後のシーン、緑が復活する場面に使われる感動の曲。
HANA-BI」 ベネチア映画祭グランプリ北野武監督作品『HANA-BI』のメインテーマ。


今回の目玉「DEAD組曲」
「HANA-BI」が終わった後、バラネスク・カルテットの方々と、コントラバスの方が出てきました。今回の目玉「DEAD組曲」の説明が久石さんからされました。「今年は1999年で世紀末、世紀末と叫ばれていますが、20世紀は2001年からなんですよね。まあ、そういう時期という事で世紀末に向けて音楽を作りました。これまで「孤独」の先には「死」があるという事で曲を作ってきたんですが、人間は必ず死ぬんですよね。いつか死ぬから前向きに生きよう、そういうことで今回の曲を作曲しました。」久石さんの説明が続きます。「で、この『DEAD組曲』なんですが、これをアメリカの音符読みで読み直すと、『レ・ミ・ラ・レ』となります。」実際にレ・ミ・ラ・レと弾きつつ、「これを展開するとこんな風になります。」とレ・ミ・ラ・レがいろんなメロディーになって、久石さんのピアノから発せられました。「この音が展開する『DEAD組曲』は第4楽章で成っており、今回はその第1、第2楽章を演奏します。第1楽章は死を見つめる曲で非常に激しい曲です。第2楽章は第1楽章とは変わって愛の曲です。」ひと通り、説明された後、実際に演奏が始まります。

DEAD Suite -Movement 1-
激しい曲とのことで、どのようなものだろうと期待してました。テンポの速い曲で、特にバラネスクさんはパワフルにバイオリンを弾いていました。しかし、よく聞いてみると… あれっ… この曲では久石さんのピアノは控えめなのね… 久石さんは伴奏に徹しておりました。「激しい」曲なのでもっとピアノをかきむしるような曲なのではと思っていたんですが、いい意味で裏切られた感じですね。で、この曲が抑揚が激しく、何か目の前で物語が繰り広げられているような感じを受けました。何らかの悲劇、そして一時の休息、そしてまた悲惨な光景… うー、早くCDを発売してもらいたい。

DEAD Suite -Movement 2-
この曲、素晴らしすぎる。聴いていくにつれて、その音楽に飲まれていき、自分がその音の中に入っているような感じのする曲でした。非常に感動しました。ジーンと来て、泣き出すということはなかったけれど、うるっと来そうな感じではありました。なぜ、『レ・ミ・ラ・レ』で、こんなにメロディアスな曲が作れるのだろうか。僕には無理です。というか、曲は作れませんが… でも、すごかった。もう、それしか言い様がありません。

「DEAD組曲」の2曲を弾き終えたあと、久石さんは「普通はレコーディングを終えてから、こうしてコンサートで演奏をしているんですが、今回はこのコンサートが終わったあとに、この今回のコンサートのメンバーでレコーディングをします。来年の4月あたりにCDを出しますので、よろしかったら聞いてみて下さい。」とおっしゃいました。このコメントに観客から拍手が。

続いて「DA・MA・SHI・絵」へ。…もうさっぱり、コメントが思い出せません。というより、これまではnezさんのレポートを比較しながら、思い出しているんですが… 「これも『MKWAJU』と同じように、メロディがバラバラになる曲です。続いて北野武監督の「菊次郎の夏」より「Summer」です。この曲の途中に、北野さんと一緒にやった最初の映画「あの夏、一番静かな海。」のメロディが挿入されています。聞いてください。」と説明し、まず「DA・MA・SHI・絵」を演奏。この曲は、「題名のない音楽会」をテレビで見たときに始めて聞いたので、知っていることには知っていたんですが、その時の演奏よりも、かなり≪バラバラ≫になっているなあ、って感じでした。そして次の曲の「Summer」… ん? あれ、久石さん、何かそそくさと舞台そでへ戻って行っちゃったぞ!? どうかしたのか? と、思ったんですが、すぐに戻ってきました。一体、何があったのだろうか… で、結局この時は照明がいつもと違うらしく、舞台監督と照明スタッフに伝えにいったそうです(久石譲ファンクラブ会報より)。で、肝心の「Summer」なんですが、やっぱり「あの夏、一番静かな海。」の「SILENT LOVE」からのメロディ(だと思います…)がバラネスク・カルテットと、ウッドウインドで”パーパーパパ-”というのが良かったですね。でも、そっちに気を取られて、演奏がすぐに終わっちゃった。

DA・MA・SHI・絵」 この曲もミニマルミュージックです。
Summer」 北野武監督作品『菊次郎の夏』のメインテーマ。軽快なメロディが映画を彷彿とさせる。

演奏を終え、久石さんがマイクを手に取り話し始めます。「えー、今年は映画を3本やったんです。1本は、『はつ恋』。2本目は秋元康さんが監督された『川の流れのように』。そして3本目は、『天空の城ラピュタ』の英語版。これはアメリカ用に曲を作り直しています。もし観る機会があったらぜひ観てみてください。」と話され、観客がまた拍手で返しました。

「さて、終わりが近づいてきました。今度の曲は、いつもオーケストラでもアンサンブルでも必ずコンサートでやる曲があります。「Tango X.T.C.」です。これをお送りします。そして、最後の曲はこれも北野監督の映画の曲です。「Kids Return」を演奏します。お聞きください。」と、演奏が始まりました。「Tango X.T.C.」は、ものすごい迫力がありました。これこそ「久石流」というような抑揚のあるメロディ、そしてパフォーマンス。勢いのある指先の動き、曲に入り込んだ久石さんの表情。ノリに乗った演奏でした。そうとしか言い様がないです。そして「Kids Return」これもおなじみの曲ですが、やっぱり生は違うなあ。目の前に久石さんがいて、演奏する。やっぱり格別のものがあります。やっぱりかっこいいですね。この曲の途中で、久石さん、右手を鍵盤に滑らせて音を鳴らす(すみません、上手く表現できません)アクションは良かったです。、もう一つ、この曲のフィニッシュもかっこいいですね。鍵盤を叩いて、両手を大きく上にあげる。久石ファンだとあこがれちゃう動き、もうしびれました!

Tango X.T.C(タンゴ エクスタシー)」 大林宣彦作品『はるか、ノスタルジー』テーマ。久石さんのお気に入り。
Kids Return」 北野武監督作品『Kids Return』のメインテーマ。この曲も久石さんが気に入ってます。

「Kids Riturn」の演奏が終わると、久石さん一同が一礼をし、舞台そでに退場。観客みんな、拍手拍手の連続で、全然鳴り止みません。そうすると、久石さんがひとりで戻ってきました。…と、なんとアンコールの前に花束を持った女性たちが… いや、男性もかなり多い! やはりファイナルのことだけあります。久石さんは手に持ち抱えられないほどの花束とワイン(NANAさんと七重さんが一番最後に手渡して、ワインを渡した時にドッと沸きました)を受け取り、ちょっと苦笑いをしながら、バラネスクさんを呼び戻してアンコール1曲目「もののけ姫」が始まりました。舞台上のパイプオルガン(?)が青色に染まるイルミネーションの中で、おふたりが楽しそうに演奏していました。澄んだきれいな音色が会場に響き、切ない曲を表現されてました。もちろん演奏後、盛大な拍手が起こったのは想像に難くないと思います。観客に向け一礼をした後、バラネスクさんが足元に用意してあった、黄色いチューリップの花1輪を手渡し、2人で熱い抱擁を交わしました。舞台下では、今度はバラネスクさんへ花束を届けるために女性2人が待っていました。バラネスクさんが花束を受け取り、またまた盛大な拍手。そしてひと段落がついて、両氏が舞台そでに戻ろうとした時、ものすごい勢いで花束を持った女性が僕の脇を通り過ぎていく… ところが久石さんも、バラネスクさんもそれに気付かず、退場されちゃいました… むなしく、舞台すぐ下に一人で立ち尽くしている女性。もちろんその間、拍手が鳴り止まずに続いているんですが、その女性は仕方なくちょっと後ろに戻ってきて、僕のすぐそばでやっぱり立ち尽くしていました。そんな中、久石さん達全員が戻ってきました。また拍手が大きくなります。でも花束を持っている女性が花束を渡す間髪を入れないで、スタッフ紹介が始まってしまいました。一人ずつ、久石さんから名前を呼ばれ、それぞれに拍手が送られてます。…と、ひと通り紹介が終わると、アンコール2曲目「MADNESS」が! (このとき、花束を持って立っていた女性は、僕の前の空いていた席に座り込んで、演奏を聞いていました。)この曲もかなり定番の曲ということで、やっぱり迫力がありますね。ものすごい力がこもった演奏。バラネスクさんも小気味いい動きをしながらヴァイオリンを弾いています。そして、最後のフィニッシュは、やはり力のこもった手を鍵盤から解き放つパフォーマンスで観客を酔わせてくれました。

もののけ姫」 宮崎駿作品『もののけ姫』の主題歌。米良美一さんのカウンターテナーが魅力でした。
MADNESS(狂気)」 宮崎駿作品『紅の豚』の挿入曲。宮崎さんが、久石さんのソロアルバムの収録されているこの曲を聴いて「これ、『豚』に使いたい」と言って挿入された曲。久石さんお気に入りの曲。

そして、そして… なんと、いままで東京ではなかった(渋谷さん談)というスタンディング・オベーションが起こりました。そういえば、おそらく観客の方だったと思いますが、客席のC~D列にいた真ん中あたりの人に「今回がツアーの最後なので、久石さんをねぎらうためにスタンディング・オベーションをお願いします。アンコールは2曲なのでその後にお願いします。」と言っていた女性がいたことを思い出しました。どうしようかと考えていた僕も、少し反応が遅れましたが、スタンディング・オベーションに参加しました。拍手続きだったため手が痛いというより、疲れて手が動かなくなってくるほどでしたが、それほど素晴らしい演奏でした。

……!?? スタンディング・オベーションに久石さん、痛く感激したようで、笑みをこぼしながらピアノの前に座り、「本当は今ので最後だったんですが… DEADの2曲目をもう一度演奏します。」とおっしゃってくれました! てっきり最後だと思ったため(他の会場は「MADNESS」で終わりだった)、ものすごい驚きと感謝の念でいっぱいでした。しかも、僕が一番感銘を受けた曲、「DEAD組曲 -Movement 2-」を演奏してくれるなんて… 久石さん、チェロの方と音を合わせて、いざアンコール3曲目へ。

この様子は、1階席2列目にいて、久石さんの表情がはっきり見えたみせす ちゃいるどさんの言葉を借りた方が良いかもしれません。なので、掲示板に書き込まれたものをちょっと加工して書かせていただきます。(みせす ちゃいるどさん、許してね。)

この曲を最初に弾いた時の様子と全くちがっていました。
顔はこわばり、苦痛にも似た表情で、ほとんど目はつむっていたと思います。
みるみる、鼻が赤くなり、ほほに涙が筋を付けました。
演奏の合間に手の平でほほを下から上にふきあげました。
その直後からピアノを弾く指先が大きくふるえはじめたのがはっきり見て取れました。
鼻は益々赤くなり、久石さんの目に涙がこみ上げているのがわかりました。
でも演奏はすばらしく、ミス無く、終了しました。
両手で頬をふき、次に赤いハンカチが顔をごしごしっとふき上げました。

(Written By みせす ちゃいるど)

僕の席からははっきりと確認することは出来なかったんですが、確かに演奏し終わった久石さんは涙ぐんでおり、手で目をぬぐって、僕たちに向かってまた一礼をしてくださいました。やはり予想外のスタンディング・オベーションに感激、感動した感じで、僕にとってそれは非常に驚きと感動に満ちたものでした。久石さんが涙した姿なんてテレビでも見たことはありませんでしたし。

で、忘れていました、花束を持って立ちすくんでいた女性のこと。この女性、演奏が終わった後にまた出て行ったのですが、久石さん、またもや気付かずに退場。ですがその後、三度、久石さん登場。やっとその女性に気付き、花束を受け取りました。久石さんはその花束を頭上に高々と上げて、観客に答えます。もちろん拍手は鳴り止みません。演奏者全員が舞台に出てきて、久石さんの礼に合わせて、全員が一礼。ものすごい拍手です。2000人の拍手が久石さんに向けられています。再び、久石さんたちが一礼。拍手の中、久石さんたちは舞台そでの中へ退場されていきました。これにて素晴らしいコンサートは終わりを告げ、やっと拍手は鳴り止みました。

21:30頃 コンサート終了
ふと、渋谷さんたちとの帰り際、ピアノの上を見てみると、久石さんがバラネスクさんから貰った黄色いチューリップの花1輪がのせられているじゃないですか。チューリップがピアノからちょっと頭をたらしているその光景は、コンサートが終焉した切なさとマッチしていて、本当に写真として取りたい一枚でした。宴の後、という感じで本当に切なかった。あの光景は、今後、僕の心の中に焼け付くような、それほどのものでした。

コンサートが終わり、ホテルに帰った直後に紙切れに忘れないうちにかいた絵です

でも、本当のことを言うと、コンサート中、自分の中に「冷静な自分」がいて、本当にコンサートにのめりこむという感じにはなれなかったのです。うーん、ジャーナリストの血か…(今年卒業した母校では新聞局長だったので…) それと、音響も席位置が悪かったせいか、音の迫力があんまり伝わってこなかった… ま、その辺は仕方ないかなあと思っています。でも、それを差し引いても非常に楽しめました。あ、でも、一番肝心なことが… 僕は前から7列目だったんですが、そこからだと久石さんは約10メートル先にいるんですが、微妙な距離のせいか、何か存在感が僕のところまで伝わってこなかったって言うか、何か実感するまで行かなかったんですよ。でも、そんなこと言ったら、2階席、3階席の方たちに怒られちゃいますね。やっぱり、芸術劇場の場合、1列目か2列目のほうが良いかもしれないです。あと、あれほど花束を持った男性が多かったとは… 僕も用意して握手したかった。今度、僕と一緒に花束渡す方、いませんか?(笑)

23:20頃 ホテル着
ホテルに戻り、ちょっとした作業をして(ちょっとした、と言っても24:30頃までやってましたが)、寝付こうと思ったのですが、結局26:00過ぎまで寝れませんでした。やっぱり、コンサートが終わって興奮してるのね… コンサート前はそれほどでもなかったのに…

11月12日 帰路
コンサート会場で買ったCDを聞きながら帰ろうかなあと思いつつ、ふと上野駅のホームで電車を待っている最中に、「戻るのか…」っていうような、何か後ろ髪を引かれるような想いに駆られていました。「もう終わっちゃったのか… コンサート…」そう、終わっちゃったんですよね。1日後に遅れて何か胸に込み上げるものが出てきました。来年、もう一度聞きたい。今はただそれだけです。来年はオーケストラかな? いや、意表をついて他のもので来る可能性もあり?

余談
いやあ、帰りに東武に寄って来たんです。が、ホテルを8:30にチェックアウトしたんですが、東武は10:00から… 9:00からやっているのかなあとちょっと期待していたんですが、そのもくろみも見事にはずれました。仕方なく、池袋駅内のカフェテリアでカフェオレを飲み、時間になったところで入っていきました。で、東武に寄った目的っていうのは、久石さんの音楽の楽譜がないかなあと思って、ちょっと立ち寄ったんです。コンサートを見て、ああ、僕も弾いてみたいなあと思っちゃって。ただ、東武、西武のような大型百貨店になると、ドラクエでいう「ダンジョン(洞窟)」みたいなもので、非常に迷ってしまいまして、ずーとウロチョロしていました。警察に職務質問されなかったのが不思議なくらいで(笑)。ようやく見つけたCD店には楽譜はありませんでした。でも、その隣りに本屋が… 本屋にあるかなあと思いつつ、眺めてみたら… 残念ながら、「ナウシカ」や「ラピュタ」などの宮崎作品の楽譜はあるものの、久石さんのソロアルバムの楽譜はありませんでした… なぜ坂本龍一のやつがあるのに、久石さんのはないの? とりあえず、そのまま何も買わずに帰ってきました。

そして、最後に。家に帰ってきて、テレビをつけたら天皇陛下の即位10周年の記念行事がやってました。そこで「X JAPAN」(はもう解散されたんですが…)のYOSHIKIがオーケストラをバックにピアノを弾いているじゃないですか。それは良いことだと思うんですが、その脇から女性たちの黄色い声が… 「おい、声を出さないで、音楽をじっと聴くのが本来のファンじゃないのか?」と思っちゃいました。でも、ああいう舞台では、なんとなく久石さんの方が合っていると思ってしまうのは、私だけでしょうか… それにしても、YOSHIKIがバンドで演奏する時は、まあ、叫んでいても一向に構わないと思うんですが、クラシック系統の音楽を聴く時にはちょっとマズイでしょ。…YOSHIKIファンの方々、ごめんなさい。でも、それくらい礼儀だと思います。

ご拝読ありがとうございました。この内容を書くのに数時間もかかり、11月12日中にアップする予定だったのですが、やっぱり次の日にずれ込んでしまいました。ここの内容は、nezさんの「久石譲&宮崎駿フォーラム」のコンサートレポートを参考にしながら書かせていただきました。内容的にダブる部分もありますが、読み応えのあるものになったと思います。また、みせす ちゃいるどさんの書き込みを引用させていただきました。

※何度か、このレポートを修正しております。不適切な表現等も少し含まれておりました。その点は訂正しお詫びしておきます。

(1999/11/13 02:00アップ  2000/01/15 18:30校正 第7校)

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