「Shoot The Violist」を聴いて

このところ久石さんネタを連発しておりますが、今度は思い出深い作品「Shoot The Violist」を紹介してみようと思います。

2000年に発売されたこのアルバムは「久石譲アンサンブル」名義でリリースされた唯一のアルバムで、ピアニストとしてのパフォーマンスを見せてくれる久石さんを存分に楽しめるアルバムです。

この前年に実施されたコンサートツアー「PIANO STORIES’99 Emsemble Night with Balanescu Quartet」に参加されたメンバーで、確かコンサートツアー中か終わった後に収録された音源だったと思いますが、このコンサートツアーがボクが初めて鑑賞した久石さんのコンサートだったので思い出が詰まっています。

この間にも書きましたけど、この前年に行われた「醍醐寺音舞台」という寺を舞台にライブ・コンサートをする企画で一緒だったバラネスク・カルテットを呼んで編成されたアンサンブルでしたが、この「醍醐寺音舞台」、毎日放送(TBS系列)で放送され、新旧入り乱れた曲構成とそのパフォーマンス、そして醍醐寺の雰囲気が素晴らしくて、正直生で聴いてみたいと思い歯がゆく思っていました。そうしたらバラネスク・カルテットと共演するコンサートがすぐに実現することになって、初めてのコンサートとして鑑賞したという思い出深いコンサートになりました。

8月5日の日記にも似たようなことを書いているので、重複してしまうので改めての説明はしませんけど、久石さんにとってたぶん、バラネスク・カルテットとの共演は転換点だったものと推察しています。

そんな思い出深いアルバムなので、いろいろ気持ちもあっちゃこっちゃ行ってしまいそうですが…(苦笑)

そもそもタイトルが日本語訳で「ヴィオリストを撃て!」って言うタイトルが衝撃的ですよね? 『何で!?』って正直思っていました。最後に書いてますけど、当初のタイトルは「Shot the Violist」だったんですが、「shot」だと過去形になってしまっておかしくなってしまうのと、元々フランス映画の「ピアニストを撃て」から着想を受けているようで、そちらの英語題も「Shoot the Piano Player」のようなので、間違えてタイトルをつけていたのに気づいてタイトルを修正したようですね。しれっとタイトルが変わっていて、当時「!?」と思ったものでした。(巻末におまけの広告をコッソリ掲載しておきます。。。)

さらにブックレットに不穏なことが書いてあるのがちょっとビックリします。

あなたは今、ピストルを持っている。そのピストルには、2発の銃弾が込められていて、あなたは撃つことができる。目の前に3人の男がいる。サダム・フセイン、アドルフ・ヒットラー、ビオラ奏者…。さて、あなたは誰を撃てば良いでしょうか?

その下に「答●2発ともビオラ奏者!!」って書いてあって、正直「どうしたんですか!?」っていう風に思いますけど、ビオラにもっと注目を集めたいという思いがあってのことだったんだろうなあと思います。いつのコメントだったかは忘れてしまったんですが、弦楽四重奏でビオラは目立たないんだけど、しっかりした人がビオラをやらないと全体がおかしくなってしまう。それくらいビオラは重要なのだという話をされていた記憶があります。

さてさて、曲をいくつかピックアップしてみます。

やっぱり4曲目と5曲目に入っている「DEAD Suite」は外せません。1999年のコンサートの時に初めて演奏された曲です。コンサートでの久石さんの説明をそのまま流用すると「人はいつか死ぬものだから前向きに生きていこうということで作った曲。DEADをアメリカの音符読みで読み直すと『レ・ミ・ラ・レ』となる。この音が展開する『DEAD組曲』は第4楽章で成っており、今回はその第1、第2楽章を演奏します。第1楽章は死を見つめる曲で非常に激しい曲です。第2楽章は第1楽章とは変わって愛の曲です。」という説明がありました。

第1楽章の[d.e.a.d.]は比較的弦楽器の激しいメロディが全面に出た楽曲ですが、第2楽章の[愛の歌]は久石さんのピアノの優しい音色が繰り広げられ、「レミラレ」でこんなに美しいメロディが作り出せるのかと驚いた記憶があります。最近この曲は演奏されませんけど、良い曲なので是非聴いてもらいたい曲の一つです。

この「DEAD Suite」は構成を変えて「WORKS III」にオーケストラ編曲されたものが収録されています。[愛の歌]が第2楽章から第4楽章に移動して組曲の締めとして使われることになって再編成されました。オーケストラで演奏されるのも悪くありませんが、「Shoot The Violist」の方がアンサンブルとして勢いがあるから、ボクはこちらの方が好みですね。

ホント、全曲が注目曲ではあるんですが、1曲目「794BDH」、3曲目「DA・MA・SHI・絵」、7曲目「MKWAJU」、8曲目「LEMORE」、9曲目「TIRA-RIN」は久石さんのミニマルミュージックが炸裂していて、久石譲アンサンブルの力強さ、勢いを感じられます。久石さんのピアノ演奏も、当時「ピアノは打楽器」と言っていましたが、ピアノでリズムを刻んでいる感じでそれがものすごく心地良いです。振り返って考えるとこの時期にこの編成で録音されたことが素晴らしかったなと思います。

そして、2曲目の「KIDS RETURN」、6曲目の「TWO OF US」、10曲目の「Summer」で映画音楽のメインテーマですけど、「KIDS RETURN」はピアノと弦楽器の疾走感が半端ないですね。疾走感が心地良いです。「Piano Storis II ~ The Wind of Life ~」でも演奏されていますけど、テンポが全然違うし、ボクはこちらの方が力強さがあって好みです。

「TWO OF US」はバラネスク・カルテットのバイオリンのAlexander Balanescu氏とチェロのNick Holland氏の演奏が素晴らしすぎです。大林宣彦監督作品の映画「ふたり」のメインテーマですけど、もしかすると日テレ系のバラエティ番組「バラ色の珍生」のご対面場面で流れてくる曲っていった方がピンとくる人も……ってそれももう古いか…(苦笑) もちろん久石さんのピアノもものすごく官能的で良かったです。

「Summer」は北野武監督の映画「菊次郎の夏」のテーマであったり、トヨタカローラのCMで使われるなどで非常に有名になりました。そうそう、そのアレンジの時にSummerの中に「あの夏、いちばん静かな海。」のメインテーマの「Silent Love」のサビのメロディが挿入されたんですね。すっかり忘れていました。物々しいタイトルのアルバムではありますけど、この曲がラストに来ることで、これまでの楽曲は激しいやりとりが多かったですが、最後に何か優しい気持ちになって聞き終わることができるアルバムになっているなあと感じることができました。

最近ファンになった方に是非聞いていただきたい曲です。ストリーミングなどでも聞けると思いますので、チェックしてみてください。

【収録曲】
1.794 BDH 2.KIDS RETURN 3.DA・MA・SHI・絵 4.DEAD Suite [d.e.a.d] 5.DEAD Suite [愛の歌] 6.TWO OF US 7.MKWAJU 8.LEMORE 9.TIRA-RIN 10.Summer

【発売日】2000.05.17 【コード】POCH-1928 【レーベル】ポリドール
【価格(発売当時)】3,059円(税込)(税抜価格 2,913円)

【クレジット】
作曲・編曲 久石譲 All composed and arranged by Joe Hisaishi

久石譲アンサンブルメンバー  Joe Hisaishi Ensemble members:
 ピアノ:久石譲 Joe Hisaishi : Piano
 バラネスク・カルテット Balanescu Quartet
  第1バイオリン:Alexander Balanescu Alexander Balanescu : Violin 1
  第2バイオリン:Thomas Pilz* Thomas Pilz : Violin 2 *
  ビオラ:Chris Pitsillides* Chris Pitsillides : Viola *
  チェロ:Nick Holland Nick Holland : Violincello

 ベース:斎藤順* Jun Saito : Bass *
 木管楽器:金城寛文* Hirofumi Kinjo : Woodwind *
 木管楽器:高野正幹* Masamiki Takano : Woodwind *
 マリンバ:神谷百子* Momoko Kamiya : Marimba *
 マリンバ&パーカッション:大石真理恵* Marie Ohishi : Marimba & Percussion *

 *6曲目(TWO OF US)を除く *except M-6

プロデュース:久石譲 Produced by JOE HISAISHI
録音:サウンド・シティ    Recorded at Sound City
   ワンダーステーション       Wonder Station
レコーディング・ミキシングエンジニア:大川正義
 Recording & Mixing engineer : Masayoshi Okawa
アシスタントエンジニア: Nobushige Mashiko (サウンド・シティ)
            秋田裕之(ワンダーステーション)
 Assistant engineers : Nobushige Mashiko (Sound City)
           Hiroyuki Akita (Wonder Station Inc.)
テクニカルエンジニア:浜田純伸(ワンダーステーション)
 Technical engineer: Suminobu Hamada (Wonder Station Inc.)
編集:Hiroya Ishihara(ワンダーステーション)
 Editor : Hiroya Ishihara (Wonder Station Inc.)
マスタリングエンジニア:藤野成喜(ユニバーサルミュージック)
 Mastering engineer : Shigeki Fujino (Universal Music K.K.)

A&R :
Akira Watanabe (Fujipasific Music Inc.)
Moto Kitsukawa (Polydor K.K.)

A&R supervisors :
Akira Sasajima (Fujipacific Music Inc.)
Katsuyuki Usui (Polydor K.K.)

Promotion planner :
Yasutake Namiki (Polydor K.K)

Marketing planner :
Kyoko Teradate (Polydor K.K.)

Management Office :
Wonder City Inc.

Recording Cooperation :
Keizo Maeda (Conversation & Company Ltd.)
Motomu Horiuchi (Conversation & Company Ltd.)

Art Direction &Design :
Norihiro Uehara (Ud)

Illustrator :
Shinko Okuhara

Photograph :
Ryoichi Saito

Portrait :
Katsuo Sakayori

Artwork coordination :
Chise Kamimura (Polydor K.K.)
Yumi Haga (Universal Music K.K.)

Executive producers :
Ichiro Asatsuma (Fujipacific Music Inc.)
Ikuzo Orita (Polydor K.K.)
Ayame Fujisawa (Wonder City Inc.)

Special thanks :
Eiichi Fujimoto (Dr.F Music Co.,Inc.)
Seiichi Kawai (Will Power Co.,Ltd.)

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