JOE HISAISHI & WORLD DREAM ORCHESTRA 2023 愛知・名古屋公演(2023.7.22)

~French Connection~

去年のワールドドリームオーケストラ2022から1年が経ちました。この間、久石さんは海外で宮﨑駿監督映画作品のジブリコンサートで駆け回ったり、宮﨑駿監督「君たちはどう生きるか」の音楽製作などで多忙を極めていると思われましたが、毎年夏恒例の新日本フィルとのタッグが帰ってきました! ボクにとっては1年ぶりの生久石さんとなりますが、今回もレポートというより、備忘録ということで書き記していきたいと思います。

※注意
○このコンサートレポート(備忘録)は記憶をたぐりながら書いていったものであり、記憶が抜け飛んでいるところなどについては、脚色を施している可能性がありますので、完全なコンサートレポートではないことをご了解下さい。
〇音楽的な知識はあまりありませんので、誤ったことを言っていることがあります。その辺は気を付けながら(?)お読みください。
○もし間違いを見つけたり、補記できる項目があれば、コメント欄で書いてもらえると嬉しいです。
日時2023年7月22日(土) 開場:16:00/開演:17:00
会場愛知県芸術劇場コンサートホール
チケット全席指定:9,500円(税込)
サイド席(東京・名古屋):9,000円(税込)
バルコニー席(大阪・2枚1セット):18,000円(税込)
出演者指揮・ピアノ:久石譲
管弦楽:新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ
    (新日本フィルハーモニー交響楽団)
コンサートマスター:豊嶋泰嗣
合唱:栗友会合唱団(東京/名古屋)、日本センチュリー合唱団(大阪)
その他主催:ワンダーシティ/公益財団法人新日本フィルハーモニー交響楽団/日本テレビ/読売新聞社/イープラス/ローソンチケット/第一通信社
協賛:株式会社イオス コーポレーション
制作:プロマックス
主催・問い合わせ先:サンデーフォークプロモーション

曲目

クロード・ドビュッシー:「海」管弦楽のための3つの交響的素描
            La Mer, trois esquisses symphoniques pour orchestre
            第1楽章 海上の夜明けから真昼まで De I’aube a midi sur la mer
            第2楽章 波の戯れ Jeux de vagues
            第3楽章 風と海との対話 Dialogue du vent et de la mer

久石譲:Woman for Piano, Harp, Percussion and Strings
    1.Woman
    2.Ponyo
    3.Les Aventuriers

― Intermission -

モーリス・ラヴェル:管弦楽のための舞踏詩「ラ・ヴァルス」
          La Valse, Poeme choregraphique pour orchestre

久石譲:交響組曲「崖の上のポニョ」
    Symphonic Suite “Ponyo”

<ENCORE>
久石譲:「君たちはどう生きるか」より (Piano Solo)

久石譲:World Dreams

TOUR SCHEDULE

日付地域ホール名
2023年7月21日(金)東京サントリーホール
2023年7月22日(土)愛知・名古屋愛知県芸術劇場 コンサートホール
2023年7月24日(月)大阪フェスティバルホール

芸術の中心地 名古屋

毎度毎度クラシックに疎くて、クラシック曲についてはレポートする力量もないのですが、気づいたことだけ書いていこうと思います。まず、この愛知県芸術劇場コンサートホールに初めて来たんですが、シューボックス型とアリーナ形式の組み合わせたホール構成となっていて、座席数1,800席の割にはステージが近く感じるまとまったホールになっていて雰囲気の良いホールだなあと素直に思いました(参考:愛知県芸術劇場HPより)。このホール、久石さんがTBS系列で放送されている「情熱大陸」へ2001年に出たことがあって、その時にこのホールで演奏していた映像がほんの少しだけ流れていたので、なんとなく、ホールの背後にある大きなパイプオルガンのホールだって印象が頭に残っていて、「あ! あの時のホールだ!」という感覚を持ちました。そういったところもあって、いつか来たいと思っていたホールの一つだったのでようやく現地に来れたなあという実感がありました。そうそう、愛知県芸術劇場自体が「愛知芸術文化センター」という名前の建物に含まれており、音楽だけではなく、美術系をまとめた施設になっているようで、美術館なども併設されており、すごく規模の大きな施設でした。センターのそばには公園もあって、そこでは夜なんかは若い人たちが音楽を奏でたりしながら楽しんだりしており、名古屋の芸術の中心地って言っても過言ではなさそうです。って、脱線が過ぎましたね。

La Mer

舞台上の配置は久石さんの最近の傾向どおり、対向配置で左側に第一バイオリン、向かって右側に第二バイオリンが配置されていて、ハープが2台設置されているのが何とか素人目で分かったくらいです。実は今回の席が前から2列目の久石さんを拝める絶好のポジションだったため(苦笑)、その代わりにオーケストラの全容があまり見えない場所でオーケストラの配置がよく確認できませんでした。ご了承ください(苦笑)。

開演時間からほどなく舞台袖から新日本フィルの皆さんがステージ上に出てこられると会場から拍手で迎えられました。コンサートマスターを除く皆さんが着座された後、今回のコンサートマスター、WDOではおなじみの豊嶋泰嗣さんが入場され、ひときわ大きな拍手で迎え入れられていました。客席に向かって一礼されたあと、チューニングが始まりました。いつものルーティーンですね。ラ(A)の音をバイオリンとオーボエの音から音合わせが始まるわけで、これらの音色を聴くことで「いよいよ始まるなあ」という感じにさせてくれます。チューニングが終わり、豊嶋さんが席に腰を掛けると、久石さんが舞台下手(左側)から登場されました。黒いスーツに紺色のシャツだったかな。革靴もピカピカに輝いていてピシッとしたいで立ちでの登場に、会場からもさらに大きな拍手が送られます。久石さんと豊嶋さんが「よろしく!」という感じで握手をしたのち、久石さんが指揮台に上られました。

…とここまで書いてきたものの、ドビュッシーの「海」は事前にYouTubeに掲載されているバーンスタイン指揮のものを聴いてみたんですが、途中で眠くなってしまって…(汗) いや、今回の久石さん指揮のものは寝てないです。内容は詳しくないので、下手に書けないんですが、この「海」もそうだし、後半の「ラ・ヴァルス」もそうでしたが、久石さんの指揮がすごくパワフルでした。今回のWDOコンサート、前回、前々回と比べるとクラシック色が強くて、久石さん作曲の作品が好きなボクにとってはちょっと残念な構成にはなるんですけど、クラシック曲を自身の曲と同じくらいの熱量を持って指揮される久石さんもかっこいいなあと再認識させていただきました。そうそう、もう一つ。この曲も後半の「ラ・ヴァルス」もそうだったんですが、譜めくりが大変そうでした。めくりやすいように楽譜に折り目がついていたのはおそらく普通のことなんでしょうが、場面により譜めくりがスピード感が求められる場面がいくつかあったみたいで、楽譜が手に付かなくてめくり直されるなんてのを目にしちゃって大変そうだなと見てて感じました、なんてことを思い出しました。…という、「海」の内容にはほとんど触れない感じで話を締めさせていただきます(苦笑)。

Woman

「La Mer」が終わって、ステージ上が少し変わりました。金管などの奏者の方は退場されて、若干椅子の配置などを調整されてから「Woman」に移ります。調整が終わった後、一度舞台袖に捌けていた久石さんが再び登場し、指揮台に上がりました。Womanを構成する3曲は自作曲なんですが、今回は指揮に徹しての演奏となりました。

Woman for Piano, Harp, Percussion and Strings」は「Another Piano Stories~The End of the World~」という久石さんのソロアルバム(下のジャケットの左側画像がそれです。アマゾンリンクされてます。)に含まれる3曲で構成されていて、最近だと2019年のWDOコンサートでも同じ組み合わせで披露されています。この曲が選曲された意図は書かれていないんですけど、やっぱり宮﨑駿監督の新作「君たちはどう生きるか」が女性を意図的に意識されているところもあり、「交響組曲『崖の上のポニョ』」もあるから、その影響で配置したのかなと思ったりしますが正確には分かりません。実は2019年の時の演奏を収録した「Symphonic Suite “Kiki’s Delivery Service”」(下のジャケットの右側画像がそれです。アマゾンリンクされてます。)に収録されていて、そちらで同じ構成の曲が聴けますので、もう一度聴き直したい方はぜひこちらもどうぞ。

Women」はピアノとハープの音色が美しい曲。婦人服ブランド「レリアン」のCM曲として作られた曲ですが、元々は「Asian X.T.C.」に収録されていた曲を作り替えたもの。「Ponyo」はもちろん、「崖の上のポニョ」からピアノと弦楽器のピチカートの掛け合いがきれいな曲。新作「君たちはどう生きるか」を観た直後だったこともあり、ちょっとこの曲を聴いたときにウルっと来てしまいました。輪廻転生的なお話って、この「崖の上のポニョ」から始まっているとボクは思っていて、すごく「君たち…」とリンクしているなあと感じてしまっていて…(苦笑)

Les Aventuriers」は5拍子の疾走感を感じる曲です。久石さんのソロアルバム「Piano Stories II ~The Wind of Life~」(下のジャケット画像がそれです。アマゾンリンクされてます。)に収録されている曲で、フランス映画の「冒険者たち」をイメージしているようで、そのタイトルを流用したようです。5拍子ってことで久石さんの振り方を見ていたんですが、「3拍子+2拍子」を繰り返す振り方をしてました。曲によってはこの振り方だと合いづらいこともあるようですが、この日の久石さんは「3+2」でした。前は普通に「5拍子」で振っていたような気もするんですが、ま、あまり重要なことではないので備忘録として書き添えておきます(汗)。そして前半最後ってこともあり、曲の最後、久石さんの指揮の締めと、コンマスの豊嶋さんの締めが目の前で見ることが出来たのもあってすごくカッコよかったです。久石さんの右手が左側にパンチする形、豊嶋さんは弓を引ききって右側に投げ出す感じでカッコ良かったです。勢いを感じました。

曲が終わった後、若干フライング気味に拍手が鳴り始めて、盛大な拍手が久石さんと演奏された新日本フィル・ワールドドリーム・オーケストラの皆さんに送られました。久石さん、曲が終わったあと、満面の笑みで「良かった!」という表情をコンマスの豊嶋さんやフィルの皆さんに向けられ、サムアップのポーズを作られていたと思います。大きな拍手が鳴る中、久石さんが一度舞台下手に戻り、再度ステージに戻られるといういつもの光景が。そんな光景が流れるうちに前半が終了しました。

後半~ラ・ヴァルス

休憩中に舞台上が配置換えされていました。指揮台の前にスタインウェイのグランドピアノが1台デーンと置かれています。久石さん用のピアノですね。今回はどのくらい弾かれるのか気にしていました。前半の「Woman」ではピアノの音色が遠いなあ(ステージ向かって右端にピアノが配置されていて、フィルの方が演奏していた)と感じていたので、今回はどうなるだろうかという気持ちで見守っていました。それと栗友会合唱団の皆さんが第二部からとなりますが、名古屋はステージが広くないことから、ステージ向こう側のパイプオルガン前の観客席に入場されて着座で待っていらっしゃいました。でも出番は後半の「交響組曲『崖の上のポニョ』」からで、「ラ・ヴァルス」での出番はありませんでした。

…とはいえ「ラ・ヴァルス」の記憶はもうほとんど残っていません(苦笑)。最初のチューニングのところで、ピアノが配置されていることもあって、豊嶋さんがピアノの鍵盤を一音弾いて、それに合わせてチューニングするなんていう前半とちょっと違ったことが記憶に残っているのと、久石さんがすごく楽しそうに指揮をしていて、その上パワフルに指揮をしていた横顔、その姿の断片が脳裏に残っています。他にはツイッターでも言ったんですが豊嶋さんとか第一バイオリンの方の楽譜の1ページに「×」と大きく書いた紙が1枚貼られてあってなんだろうなあと気になったくらいしか思い出せない(苦笑)。ごめんなさい。

交響組曲「崖の上のポニョ」

今回の目玉の曲、宮﨑監督作品の交響組曲化シリーズということで、今回のパンフレットの記載によると今回で最後になるそうです。そういえば、パンフレットに記載がなかったんですが、編曲は今回は久石さん自身がされているのかな? 前回はChad Cannonさんがされていたんですが、今回はクレジットが無いようです。どうなんでしょうね?

曲のチョイスはちゃんと覚えていないんですが、サントラを聴き返して、「あった」「なかった」を朧げな記憶をたどってとりあえず仮で書いておきました。後で訂正させてください。でも「ひまわりの家の輪舞曲」が入っていなかったのは意外でした。映画中では「水中の町」という曲で少ししか使われていなかったってのがあるのかも。宮﨑駿監督も気に入っていた曲だったんですけどね。

(交響組曲 仮の曲目。曲名はサウンドトラックより。)
・深海牧場
・海のおかあさん(合唱)
・出会い(? 記憶違いの可能性有)
・浦の町
・クミコちゃん
・ポニョと宗助
・ポニョの飛行
・波の魚のポニョ(? 記憶違いの可能性有)
・宗助のなみだ (久石さんのピアノソロ)
・母の愛
・トキさん
・いもうと達の活躍
・崖の上のポニョ(英語歌詞。アレンジが大幅に追加)
  ※覚えている方、こっそり曲名を教えてください。<(_ _)>

断片的に覚えているのは「深海牧場」での厳かな弦楽器の音色から合唱へ派生していく出だしのところがすごく心地よかったこと。久石さんの合唱団への指示も大きく手を伸ばして、一緒に歌いながら指揮しているようでした。編曲はグラモフォンのCD(下のジャケットの画像がそれです。アマゾンリンクされてます。)のものと近い感じだったと思います。そのあとに続く「海のおかあさん」がソリストの方ではなくて合唱での演奏だったのがグラモフォンと違うところで、ソリストではないため、確か出だしの部分で変調をしていたように記憶してます。男声コーラスも入るからなんでしょうね。コーラスの歌声の一方、コンマスの豊嶋さんがコーラスとの掛け合いでバイオリンソロを入れていたのを目の前で見てました。このバイオリンの掛け合いもなかなかよかったなと思います。そして歌詞はグラモフォン版と同様日本語歌詞でした。なんかボク自身懐かしく感じてしまって、ちょっとウルウル来ていたような感じでした。この「海のおかあさん」ってボクが好きな曲なんです。なので、ソリストによるものを期待している自分もいたんですが、聴いたら聴いたで、この合唱バージョンもすごく良いなあと認識を改めました。すごく良かったです。合唱ってちょっと荘厳さが出ますよね。すごくマッチしていたと思います。

あと記憶に残っているのは、本編では唯一ステージ中央のグランドピアノが使われた「宗助のなみだ」。サウンドトラックでも、この曲だけピアノソロだったんですが、宗助の、リサ(母)を想う気持ちを表した曲(だったと思う。うろ覚え…苦笑)で、リサに何かあったらどうしようという気持ちも込められていると思うんですが、それを際立たせるためにピアノソロにされたのかなということもあって、今回の交響組曲でも久石さんのピアノソロで演奏されました。直前の曲で持っていた指揮棒を振りながら指揮台に置いたので「ん?」と思ったんですが、するとスルスルっとピアノの前まで久石さんが移動して座り、一瞬訪れる静寂。久石さんの奏でるピアノソロが会場に響くわけです。短い曲ではあったもののほとんどミスタッチがありませんでした。ボクの席から見える久石さんの手は、ほんの少し震えているようにも見えました。指揮を振りながらピアノを弾くのはなかなか大変だろうなと思いますが、しっかり弾ききっていただきました。弾き終わると、久石さん、指揮台に移動しつつ、両手を上げ、合唱団の皆さんに向けて指示をし始め、「母の愛」が奏でられたのがまだ記憶に残ってます。正直に言うと、この辺りで涙腺が緩くなっていたと思います。決壊まではいかなかったけれど。

最後の「崖の上のポニョ」はグラモフォン版のアレンジ準拠だったのかな? 弦楽器のピチカートから始まって、途中合唱団の英語歌詞での歌唱となりました。グラモフォンのアレンジが久石さんの完成形なんでしょうね。先に演奏された「Woman for Piano, Harp, Percussion and Strings」は、それこそピアノ、ハープ、パーカッションと弦楽器、さらに言えばピチカートを楽しみつつ、女性をフィーチャーした曲構成。一方、この交響組曲アレンジは、映画で使われた構成を基礎に「オーケストラと合唱」で構成され、その上、映画の主題歌で交響組曲の最後には盛り上がるように華やかなアレンジに仕上げられていたと思います。

組曲の演奏が終わり、この時も若干フライング気味に盛大な拍手が送られました。久石さんはコンマスの豊嶋さんと握手し、両手を広げ、新日本フィルの皆さんにも拍手を、というジェスチャーをされ、会場に一礼をされて舞台下手に一度戻り、再入場されて拍手に応えながら、新日本フィルの演奏者の各パートの皆さんに拍手を送られるようにジェスチャーで首席奏者の方に起立を促し、そのあとセクションの方にも一緒に起立してもらうということをされ、その時のみなさんの表情が、久石さんのもそうでしたけど、すごく満足げに見えて良かったです、本当に。

さらにもう一度、久石さんは客席に向かってお辞儀をされ、舞台袖に戻られていきました。

アンコールは、あの曲?

久石さんが手先を下に向けてブラブラ振り、また少し小首を傾げながら(おそらく、「ちゃんと弾けるかな?」というちょっとした不安を感じつつだったんだろうと思います…)、ステージ中央のピアノに視線をやりつつ再度入場してきました。

ピアノの前に座り、ちょっと深呼吸をされ(深呼吸の音が席まで聞こえてきました)、鍵盤に伸ばした手を一度戻したりと、ちょっと躊躇しながら、和音を弾き始めました。久石さんの曲って、そういえばあまり和音を使うイメージがないというか、使うんですけど、メロディとして和音を使うことってなかったように記憶しているんですが、和音を弾き始めた後に、宮﨑駿監督「君たちはどう生きるか」で流れる印象的なメロディが流れてきました。今までと傾向が違う曲だったこともあり、今回の新たな曲はものすごく自分の心の奥深くに引っかかったようで、この時点でボクの涙腺は崩壊しました(苦笑)。

このメロディは単音のメロディだと思うんですが、理由は分からないものの、映画「君たちはどう生きるか」を観た方にはものすごく突き刺さるメロディだとボクは勝手に感じています。この曲も印象的な場面に何度か繰り返し使われていますが、ボクが感じる印象としてはものすごく前向きにさせてくれるメロディであると感じてます。大変な場面であっても、自分を信じる道に向けて前に進ませてくれる力のあるメロディだなあと、これまで感じたことのない感覚を実はこの曲に感じているところです。

久石さんの演奏に戻ると、指揮をした後だということもあって、なかなか手が動かないようです。ちょっと演奏が止まりそうになるようなミスタッチもありました。それでも聴いているボクとしてはミスタッチは全然気にならなくて、久石さんが若干震えているようにも見える手を鍵盤の上で何とかコントロールしながら奏でるその調べは何物にも代えがたいように感じて、すごく心に響いてきました。あの場、あの時間に音を発しているのは久石さんが奏でる「Ask me why」(確定ではないですが、たぶんこの曲)のみ。すごく心に刺さりました。

コンサートが終わった後も、頭の中で「Ask me why」が何度も何度も繰り返されるくらい、すごく沁みました。早くサウンドトラックを手に入れてゆっくり聴きたいです。

「Ask me why」で大きな拍手が久石さんに送られたのは言うまでもありませんが、演奏がちょっとグダッてしまったためか、久石さんが何か一言話されていた記憶がありますが、よく聞き取れませんでした。「もう!」って感じのひと言をおっしゃっていたのかも知れません。

そしてアンコールがもう一曲、WDOでアンコールのお決まりになっている曲、「World Dreams」が合唱付きで演奏されました。ただ、ボクもそうだったんですけど、多くのファンの皆さんが「Ask me why」の衝撃を受けた影響が残るまま、「World Dreams」の演奏が始まったため、正直ちゃんと覚えていません(苦笑)。「World Dreams」もボクの好きな曲の一つで、しかもあまり聴かれない合唱付きのバージョンだったんですが、残念ながら忘却の彼方です。久石さんの公式インスタグラムで一部の映像・音声が配信されています(大阪公演のものだと思いますが…)のでそちらで雰囲気を確認していただければと思います。

この投稿をInstagramで見る

Joe Hisaishi 久石譲(@joehisaishi_composer)がシェアした投稿

演奏終了後は、大きな拍手が送られたことは言うまでもありません。

演奏終了直後からスタンディングオベーションで迎えられる観客の方がいらっしゃり、その輪が徐々に増えてきて、最終的にはほぼ全員の方がスタンディングオベーションをされていたんじゃないかなと思います。(後方の確認はできなかったものの、肌感覚ではほとんどの方が立たれている感じがしました。)

久石さん、四方向いても、ほとんどの観客の皆さんが立たれているのに感激され、指を組んで「ありがとう」のジェスチャーをされていたと思います。右手、左手、正面、2・3階席それぞれの方向を向きながら、お辞儀をされていたと思います。

舞台下手ではスタッフの方々が大勢スマホを手に久石さんと会場の様子を写真やら動画に収めように5~6人やってこられて、スタオベで盛り上がっている客席や久石さんの表情を収められていたようです。

そんな大きな拍手の中、一度舞台袖に戻られたあと、再入場されて拍手に応えながら、栗友会合唱団の指導されている方に対しても客席に拍手を促され、併せて合唱団の皆さんにも拍手が送られました。

また一度久石さんが舞台袖に捌けて、もう一度ステージ上に戻ってきて、今度はコンマスの豊嶋さんから手前にいる弦楽器の首席奏者の皆さんなどに握手をされつつ、会場からの拍手に改めて左右に手を広げ、新日本フィルの皆さんの演奏があってこそという感じのジェスチャーをされ、深くお辞儀をして舞台袖に戻っていかれました。

でもまだまだ拍手が鳴りやみません。確か新日本フィルの皆さんが退場し始めているんですが、まだ拍手が鳴りやまず、ステージ上に人が少なくなっても拍手が鳴りやまず、久石さんが再度ステージ上に出てくるということとなりました。若干弱くなっていた拍手が、うわっと大きな拍手になります。会場中の観客に向かって、久石さんは手を振ったり、お辞儀したりといろいろ反応しながら、最後、舞台下手で大きくお辞儀をされて終演となりました。

終わりに

毎回同じようなことを書いていますが、今回もものすごく幸せな時間を過ごせたなあと感じています。ボクは今回クラシック曲はほとんど勉強しておらず(苦笑)、あまりよく分からないままの鑑賞だったんですが、やっぱり生のオーケストラの迫力を全身に受けることは、なかなか代えがたい体験だったなあという振り返りをしています。また、クラシック曲を振るう久石さんがものすごく楽しそうに、またパワフルだったので、去年の8月にコロナに感染されたことや、10月に体調を崩されてテリー・ライリーさんのコンサートが中止になったりなんてことがあったことをすっかり忘れさせるくらいお元気に見えて、ファンとしてはうれしかったです(というか、コロナ感染や体調を崩されていたこと、すっかり忘れておりました…汗)。

また「Woman for Piano, Harp, Percussion and Strings」「交響組曲『崖の上のポニョ』」も改めて楽しく聴けました。「交響組曲『崖の上のポニョ』」の選曲もあまり気にならず、ほっこり楽しめたという感覚があります。強いて言えば、「崖の上のポニョ」を英語歌詞で歌われていましたけど、国内であれば日本語で良かったのかなと思ったくらい。

でも、それよりも何よりも「Ask me why」でした。この曲を久石さんのピアノソロで聴けたことで全部持っていかれた気がします。ものすごく良かった。ピアノが弾けないボクも、この曲を弾いてみたいという感じになります。

コンサートパンフレットの久石さんのコメントでは、宮﨑駿監督の映画音楽を再構成する交響組曲が、新作を除くと全作完了ということで、いったん休止して、「新たなアイデアが浮かび次第、また再開します」というコメントがありました。このコメント、読み方次第では新たなアイデアが浮かんだらすぐに再開するというとらえ方もできるので、WDOの取り組みは是非とも継続していただきたいなと思っています。まず「君たちはどう生きるか」の交響組曲化をしていただきたいし、「交響組曲『紅の豚』」はちょっとファンの間では物議を醸した選曲だったこともあって(苦笑)、アップデートを求める方も結構いらっしゃるのかなというところもあります。宮﨑×久石タッグの作品のコンサートを心待ちにしている若い皆さんも大勢いると思いますので、是非とも若年層の音楽への入り口の門を開いておいていただきたい、そんな風に強く願います。

そうそう。東京公演ではマイク多数のほか、カメラの配置もあったようですし、名古屋でもマイクが多数設置されていました。映像配信や、ライブ盤等のリリースが期待できるなと思っています。すべての久石ファンの方に「生演奏」を観ていただくのが叶わなくても、その時のパフォーマンスを記録し、また多くの方に観ていただくための円盤化、または映像・音声の配信も重要だと思います。今回のコンサートの模様はもとより、これまでのコンサート映像・音声のリリースもぜひしていっていただきたいと切に願っております。

そんなお願いを最後にしながら、コンサートレポートという名の備忘録を締めようと思います。拙く、しかも長い文章を読んでいただきありがとうございました。また、次回ありましたらよろしくお願いします。

2023.07.28 22:40 掲載
2023.07.29 00:30 一部修正
2023.07.29 09:15 リンク追加、一部修正
2023.07.30 01:30 一部追加

関連リンク

久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋】Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2023」コンサート・レポート

  • 久石さんの情報量が一番あるサイト「久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋」主宰のふらいすとーんさんのコンサートレポートページです。久石さんのこれまでの経過を踏まえた情報量の多いレポートとなっており、音楽的にいろんな角度から読めると思います。昨年同様、オーケストラ、吹奏楽経験者の方はふらいすとーんさんのレポートで「久石譲」その人を深堀りできると思いますのでぜひぜひご覧ください。
ショー@オーナー
  • ショー@オーナー

2件のピンバック

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です