映画「バッテリー」 評

 今日、さっそくあさのあつこさん原作の映画「バッテリー」を観てきました! それをちょっと語ってみたいと思います。

 ネタバレは「続きを読む」の方に書くようにしますが、映画だけで言えばスカッとした爽やかな映画だったなあと感じました。でも、原作があるからこそ、個人的には「あれ?」という肩すかしを若干受けた面もあります。その辺はネタバレになってしまうので後で書きます。
 出演陣はフレッシュな面々が揃いました。主役・原田巧役に林遣都(はやしけんと)くんが務め、若干演技に荒削りな面があったような気がしましたが、「眼」に大きな力があって気持ち良く観られました。眼で物語ることができる俳優さんってそういないので、今後が楽しみ。
 キャッチャーの豪役の山田健太くんは、ピッタリだったなぁ。明るく振る舞う場面、怒る場面、いろんなシーンがあったけど、演技はかなり良かったと思います。ちょっと涙が出そうになったシーンもあったし。他にも巧の弟・青波役の鎗田くんがけなげな弟を演じて、かわいかったかな。
 あ、そうそう。個人的にキャスティングがツボにはまったのがオトムライ(戸村)役の萩原聖人さん。メチャクチャそのままで面白かった(笑)。原作そのまま飛び出てきたような感じで、もうちょっと出番が多くなると、映画に深みが出てきたかなあと。
 ……ん? なんか前置きっぽくなったような…(苦笑) なんだかちょっと予防線を張っておいて(笑)、ボクの感想をば。
 映画の尺が足らないな、って感じが率直な感想。全て描き切るには時間が足らなさすぎに感じました。逆に詰め込みすぎっていうような感じなのかな? 爽やかな映画には違いないんですけど、もうちょっと心理描写に時間を掛けて欲しかった。原作を読んでいるだけに内容を補完しながら観られたんですけど、原作を未読の方が鑑賞すると、「なんでいきなりそうなるの?」っていうところがいくつかあったように思います。
 でも、「家族との絆」「仲間との絆」をテーマに据えた今作、本当にスカッとした映画に仕上がっているところは、滝田洋二郎監督の技のなすところでしょうか。
 そうそう。音楽は吉俣良さんが手がけています。というか、ま、その前に主題歌を熊木杏里さんが歌うから注目していたっていうところもありますが、サントラの方は「劇伴」に徹しているというような感じで、実はあまり頭に残っているメロディが無いんですよね(苦笑)。おそらく、映画に溶け込みすぎて頭に残っていないという… 久石さんの音楽を知っているからこそ、「ありゃ?」っていう感じが(爆)。ただ、そこでラストに流れてくる『春の風』での熊木さんの歌声がものすごく印象に残りました。その割にはサントラを買っちゃったんですが…(爆) いえ、映画を観る前に思わずパンフと一緒に買っちゃったんです、ハイ。
 今回から、とりあえず映画を観に行こうか迷っている人のために、6段階のオススメ度を出そうと思います。観に行くときのちょっとした参考にしてくださいね! そうそう、6段階がミソね。5段階だと真ん中の3つってのが評価が微妙になっちゃうのでその辺はハッキリさせるための6段階です。
 とにかく、初々しい野球に打ち込む姿を観て、「ボールを久しぶりに触ってみたい」と思わせたこの映画、ちょっと観て欲しいな、と思います。でも、是が非でもというところまでは今ひとつ言えないかなというのが少し残念な部分です。
映画バッテリー公式ホームページ
オーナーのお薦め度 ★★★★☆☆ 星4つ


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 「肩すかし」と書きましたけど、小説と映画は、描き出すテーマが異なっているように感じたので、小説を楽しんで、その世界観を期待して観てしまったら、「なんで?」ってことになってしまうような感じがあるのが否めないのかなと正直受けました。
 小説はメインに据えているのは天才ピッチャー巧の心情の移り変わりであったり、天才の側に居て悩むキャッチャーの豪や、門脇秀吾の幼なじみの瑞垣の心の中の葛藤だったりするわけなんですよ。それぞれ心の中にいろんなものを抱えて野球と接している。その辺りをどのように映画化にあたって料理されるのかなと期待していたんですが、よくよく考えるとそんなの『無理』なんですよね。
 映画はいわゆる「映像化」して伝える媒体なので、そういう心情をどういう風にやっても、映像にはできないんですよね。ボールを放る感触や、剛速球をキャッチする快感、心の葛藤などは、映像化するのはほとんど不可能ですよ。やっぱり言葉に表さないと伝わらないけど、言葉にしたらどうしても映画が説明的になってしまって面白くなくなる。
 「小説」と「映画」は違うものではあるけど、映画化するにあたって、ものすごく監督や脚本の方は悩まれたんじゃないかなと思うんです。映画でのテーマは「家族・仲間との絆」になっているんですけど、原作ではもちろんテーマのひとつにはなっているものの、やっぱりそこがメインではないわけです。原作者が伝えたいこととは異なるテーマなわけです。
 やっぱりそこは原作のあさのさんが快諾したんだろうなあというところが感じられました。ま、「映画化」されることが単純に嬉しくて快諾したっていう可能性ももちろんありますけど、ご本人が「滝田監督の『バッテリー』」と表現されるところを考えると、同じ材料を使った違う作品と考えるべきなんだろうなあとボクは感じるわけです。
 そういうところが肩すかしを食らったところだったわけなんですが、そういう状況なので、フェアな映画の見方ができているか不安な部分があります。グッとなかなか来なかったもんだから。
 あとはいろいろカットしちゃって、そこに至る過程が描ききれなかったというところもあるかなと。
 冒頭だといきなり沢口と東谷が歓迎会と称して巧と仲良くなってしまうのがちょっと早すぎだし、豪が巧の放るボールに対応できなくなってキャッチングできなくなってしまうところから、ボールを捕球できるまでになる経過がちょっと性急な気もするし。巧の心の変化が描き切れていない部分もあるかなと。でも、力のある原作6巻分の料理をするんだから、やむを得ないんだろうなあと思いますね。
 そんなところで、主題がかなりボケてしまった感があるのかなあと。なんとか「家族・仲間との絆」へとテーマを持っていったんだけど、作品の根底にある対人間としての仲間との内なる葛藤というテーマが少しだけ見え隠れしちゃって、混沌としちゃったというか。
 ま、この感覚は原作を読んだ人が感じることができる特権なのかも知れません(苦笑)。原作を読んでいない人は是非とも読んでもらいたい、会心の一作だと思いますよ。
 って、映画を薦めるべきところで原作を薦めてしまうというのはなんだかなぁという感じですが(苦笑)、でも、星4つとしたとおり、爽やかな映画だと思います。少年少女時代の頃を思い起こして観てみるのも悪くないと思いますよ! でも、ヤフーではあまり評価が高くないのがちょっと気になる(苦笑)。

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