鷲崎健「えくぼヶ原飄夢譚」を聴いて

鷲崎健さんの生誕50周年記念5thアルバム「えくぼヶ原飄夢譚(ひょうむたん)」のクラウドファンディングに結構お金を突っ込みまして(苦笑)、5月末に返礼品として届き、鷲崎さんの曲を楽しませてもらっているわけですが、感想を全く書いてなかったのでちょっと書いておこうかなと。
Twitterでも書きましたけど、変な曲が多かったので少し心配していたんですが、すごく音楽のクオリティが高くて驚きました。アルバム作り上げるのに5,000万円くらいかかっているようなので、音の作りがすごく贅沢というか、生音が多くて(ほとんど生音かな?)うっとりしながら聴けています。
そんなところで、1曲ごとの感想、ご紹介をしていきます。
Talk to me baby
今ではインターネットラジオ番組「粋狂トカトントン」のエンディングテーマに使われているのですごく身近になった曲ではある(笑)。最初の曲としてはすごく落ち着いていて、軽ーく聴くことが出来る曲。軽い曲なんだけど、ホーン隊(トランペット、トロンボーン)が入って、ものすごくアレンジが華やいだ感じになってます。好きな子と話をしたい、すべてを知りたいって歌詞ですが、なんか良いなあ。フィクションらしいんですが、この辺りの感覚はボクも近いところがあるのかも。
5分ドッグ
いちばん変な曲の筆頭ですね(笑)。「1日に5分だけ犬になってしまうサラリーマン」の曲です(笑)。確か、曲を作り始めて一番最初にできた曲だそうです。変な曲でアレンジも陽気。コーラスも女性シンガーの皆さん(Suaraさん、亜咲花さん、YuRiKAさん、あんにゅさん)が参加し、しかも曲中に出てくる犬の鳴き声「ワン!」の一言を声優の吉野裕行さんが声を入れている豪華布陣。すごく楽しい曲になってました。そうそう、近いうちにこの曲のMVが作られるはずなので、CDの一般発売に合わせて、皆さんに聞いてもらえると思います!
沢村ガール ~俺が私で私が俺で~
この曲はちょっとおふざけで、野球を知らない鷲崎さんが野球を題材にした曲を作ったら、相棒のパーカッションで組んでいる内田稔さんに受けるんじゃないかということで作ったという曲。女の子が失恋して相手にもらった指輪を海に思いっきり投げ捨てたら、プロ野球のスカウトから「お嬢さん、良い肩だね? 野球に興味ありませんか?」と声をかけられて、それをきっかけにプロ野球に入ってMVPを獲ってしまうんだけど、女房役のキャッチャーが気になり始め……という、曲というよりミニストーリーのような曲です。このアルバム、こういう曲が多いです。前の曲から引き続き、コーラスは女性シンガー4名の方が入って、曲中にピッチャーのセリフがあるんですが、こちらは声優の花守ゆみりさんが務められました。…って言っても若い声優さんは良く分かってなくて…(苦笑)
俺を歌にしちゃうのはいつだって君
全体的に変な曲が多い中で、この曲はすごくラブソング。鷲崎さんの強めの声と、ストリングス主体のアレンジがちょっとアンバランスさがあるように感じて、でもそれがなぜか心地よいというか。メロディラインが高いところにあるからそうなっちゃうのかな。アコギバージョンの方も良いんですが、そちらはクラウドファンディングに参加した方へのオマケですね。
おかえり太陽
この曲、虹のコンキスタドールの的場華鈴さんが卒業されたのに戻ってきたなんてニュースがあったときに鷲崎さんが、グループの「太陽」とされていた的場さんのイメージして作った比較的短い曲。個人的にすごくこの曲もお気に入りです。歌詞が素敵で、2番も1番を繰り返すだけなんですけど、それで十分力のある歌詞と曲だと思います。鷲崎さんが初めて披露した「鷲崎健のアコギFUN!クラブ」でアコギ一本で歌い上げた曲が素晴らしすぎました。これもクラウドファンディングのオマケでしか聴けませんが、アレンジが大きく変わらないようにアコギ、エレキ、ベース、ドラム、キーボードのみで、1番はアコギのみで演奏されてました。このアレンジも良かったです!
虹虫
「♪地中に埋まった虹の下半分を 餌にして生きるという不思議な虫がいる 『虹虫』=Rainbow Eater=と呼ばれているその特殊な生き物を研究したある学者のこれは記録でありメモである」という歌詞で始まる、10分を超える曲です。この曲もストーリーテリング的な曲で、「虹虫」ももちろん空想上の生き物ですけど、よくこんなことを思いつくなあという歌詞です。で、ネタバレしちゃうんですけど、「♪虹虫はかつて『虹』そのものであったとそう考えられる」という飛躍した結論になっているんですけど、おそらく学者が、真夜中、虹虫が脱皮する時に発する虹の光を受けておかしくなっちゃったんだろうなあと思うんですけど、なんか学者のこととか、虹虫のこととかをいろいろ夢想して楽しめる曲なんです。10分という長い曲ですけど、さほど長さを感じませんでした。なんか、スルメ的な曲ですね。好きな方が多いだろうと思われる1曲です。
ツイストで踊り明かそう
サム・クックさんの同名曲を鷲崎さんが歌詞を勝手に変えて(苦笑)、いわゆる「意訳」をしたもの。一時期、鷲崎さんが意訳ブームの時があって、その時に披露された曲。著作権の期限が切れているということで、リリースが出来たようです。今、原曲を少し聴いてみたんですけど、歌詞は全然違いますね(笑)。これは雰囲気を楽しむ曲だろうと思います。鷲崎さんの歌詞も良い! できれば鷲崎版「オー・シャンゼリゼ」も聴いてみたいんですけどね。
猫のように
タイトルが「猫のように」となっているんですが、これは「犬」の曲かな? ちょっと比喩的な表現が入っているような気がしますけど、あの子の膝の上に載っている猫のことがうらやましいってことなのか、どうなのか。
世界の終わりのポラロイド爺さん
このアルバムって奇妙奇天烈な曲が多いんですけど、この曲もタイトルだけでも何のことやらさっぱり分からないような曲です(苦笑)。「世界の終わり」と呼ばれるところで、記念の顔出しパネルでポラロイド写真を撮って売る爺さんがいてって話で、10分を超える曲なんですけど、ストーリーが展開していって、主人公(オレ)と爺さんが意気投合して、店を経営してそこそこ人が来るようになったものの、突然朝起きたら爺さんが冷たくなっていて、爺さんがなぜか自分の亡くなろうとする時を写真で撮ろうとして…なんていう歌詞を追いかけて聴くと、なぜか泣きそうになっちゃうんですよね。正直なぜか分からないんですけど、この曲はボクにはものすごく沁みました。ネタバレになっちゃうけど、主人公(オレ)自身がいつの間にかポラロイド爺さんになっているのも素敵で輪廻転生チックだなあなんて思いながら聴いてました。色眼鏡をせずに聴いてほしい1曲です。
移動式正月団
この曲もミニストーリーみたいな感じの曲で、文字通り「移動式正月団」がやってきて、正月を持ってきてくれるってものですけど、その世界観も不思議だけど、ゆったり聴ける曲です。
BRING BACK(無理だよDJ)
鷲崎さんのインターネットラジオ番組「粋狂トカトントン」のオープニングテーマとして使われている曲です。改めて聴いてみたんですけど、雰囲気やら歌詞の言葉運びが「ヨナヨナ~Yoke of Nights~」に似ているなあって感じがしました。ちょっと言葉遊びが入っている感じが似ててて、どちらもラジオのオープニングテーマ。ただ、作った当初はラジオのオープニングに使う予定はなかったんでしょうけど。鷲崎さん、基本的にフィクションで曲を作っているという話をされてますが、ちょっと鷲崎さんの私情も入っているんじゃないかなと勝手に思っちゃうんですが、どうなんでしょうね? にしても女性シンガーの皆さんのコーラスとホーン隊(トランペット、トロンボーン、サクソフォン)も入ってすごく良いアレンジです。
ロックンロール・マーメイド
この曲もストーリーのある曲です。ひょんなことからレッドツェッペリンのTシャツを着た人魚とオレ(主人公)の話で、ボクはロックはあまり良く分からなくて、いろんなロックの曲を引っ張ってきたり、アレンジもロック寄りなんですが、あまりボクには引っかからなかったんですが、好きな人は好きな曲だろうなあと思います。
スプリンター
ギター一本で鷲崎さんが弾いたものが、アルバムになったら「ピアノ」のみの伴奏で歌われています。子どものお母さんの視線で書かれた曲だそうで、そういったところから、優し気なピアノの伴奏になったんだろうなあなんて感じつつ、たぶん人差し指と中指で走る「スプリンター」として子供が遊んで、お母さんの肩に載せるなんてことを想像しながら、歌詞とメロディーを追っていくと、この曲もなかなか良い曲だなあと感じてます。歌詞の視線がすごく優しくて、良いなあと感じます。ちょっと地味な曲だけど、この曲も好きだなあ。
ママはバンクシー
これもストーリー性のある曲。タイトルのとおり、「ママがバンクシー」だったら、なんて誰も考えないような歌詞を作って「鷲崎健のアコギFUN!クラブ」で披露された時には笑ってしまったと思います。絶対鷲崎さんは受け狙いで作った曲だと思います。歌声も途中からなんかサザンの桑田佳祐さんの歌声に似てくるし…(苦笑) あ、そうそう。アコギFUNの時のタイトルは「”僕の”ママはバンクシー」だったのをタイトルを変えているんですね。今頃気づきました。曲中のサビは「♪僕のママはバンクシー」と歌うんですけど、最終的にタイトルから「僕の」をカットした理由は分からないですけど、ま、書かなくても分かるだろうし、なんて細かいことを気にしちゃうタイプです(苦笑)。
釣りメカ日誌
引き続きストーリー性のある曲です。タイトルから分かるとおり、「釣りバカ日誌」から来てます。ご主人が病気を患って、主人の代わりに釣りをする専用のロボットのお話。鷲崎さんもちょっと声を作って声色をロボットっぽくして、さらに鷲崎さん本人がマンドリンを演奏して、ちょっと陽気な、というか少しノーテンキに感じるようなアレンジで、ロボットのため感情を乗せずに、ノーテンキに釣り専門で日々を過ごして、いつの間にか一人も人間がいなくなってしまったっていう、実は悲しい曲なんだろうなあという内容を、明るくノーテンキに綴られる曲です。
銀河鉄道の朝
鷲崎さんが読書好きということもあって、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をオマージュして、現代に「銀河鉄道の夜」があったらどうなるだろうという感じの表現で、ただちょっとノンフィクションの部分があって、中央線の駅のホームに飛び込んだ人がいたんだけど、怖くなって向こう側に転がって逃げた、なんてちょっと現実に引き戻されるような、不思議さも含まれる楽曲。結構、楽曲自体はすごく明るいんだけど行き先も言われていないし、ちょっとした怖さも感じる曲だけど、世界観にはすごく惹かれますね。
Walkin’ Walkin’
鷲崎さんが散歩が趣味で、自身のことを珍しく歌ったノンフィクションだと何かで聴いた記憶があります。鷲崎さんを慕う「学園祭学園」の4名がこの1曲だけアレンジなどに入って、コーラスなんかは青木佑磨さんが入っていて、ちょっと「鷲崎健のヨルナイト×ヨルナイト」を感じてしまうような雰囲気です。普段の鷲崎さんを少し感じられる曲で、ボクも夜散歩をしているので、「♪たまにrun run run」はしてないけど、いい雰囲気です。
Shake
この曲もサム・クックさんの同名曲を鷲崎さんが意訳カバーをした曲です。ゴメンナサイ、元の曲が分からないので何とも言えない(苦笑)。原曲を聴いてみたんですけど、全然違いますね(苦笑)。すごくテンポアップしているし、鷲崎さんが好き勝手やった感じ。で、サックスで武田真治さんが入っていると(笑)。武田さん、すごく鷲崎さんのことを買ってくれていて、ぜひアルバムに参加したいと話をしていたのを思い出しました。
えくぼヶ原
「えくぼヶ原飄夢譚」の最後を飾る「えくぼヶ原」、この曲もストーリー性があるというか、「えくぼヶ原」という虚構の場所のことをゆったり鷲崎さんが語り、アルバムのバックグラウンドになるような、包み込むような感じでアルバムが終わるのは、変わった曲を束ねるには相応しいと思いました。こんな「えくぼヶ原」に行ってみたいなあと思わせてくれる、そんな楽曲ですね。雰囲気が良いとしか言えない。改めて歌詞を見ながら聴き直したら涙が出てきた… ちょっと引用が長いんですが、「♪この街を包み込む絹のような 奇跡は続いて」「♪愛を歌っても歌わなくても 二人は同じ夢を見る えくぼヶ原は夢を見る えくぼヶ原は君と歩く えくぼヶ原に日が沈む」、良いなあ、この世界観。
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一般発売が7月23日なので、近くなったらMVも公開されるでしょうから、その時にはMVなどのURLも追加しようと思いますが、クラウドファンディングで突っ込んだ甲斐がありました。すごく良いアルバムだと思います。また、少し時間がかかるようですが、鷲崎さんの楽曲がカラオケで配信されるようですので、そちらもちょっと楽しみにしています。って、あまりカラオケにはいかないんですけどね(苦笑)。鷲崎さんがちょっと注目されて、アルバムが売れてくれれば、ファンとして嬉しいなあというところです。
【収録曲】
Disc.1
1.Talk to me baby 2.5分ドッグ 3.沢村ガール ~俺が私で私が俺で~ 4.俺を歌にしちゃうのはいつだって君 5.おかえり太陽 6.虹虫 7.ツイストで踊り明かそう 8.猫のように 9.世界の終わりのポラロイド爺さん
Disc.2
1.移動式正月団 2.BRING BACK(無理だよDJ) 3.ロックンロール・マーメイド 4.スプリンター 5.ママはバンクシー 6.釣りメカ日誌 7.銀河鉄道の朝 8.Walkin’ Walkin’ 9.Shake 10.えくぼヶ原
【発売日】2025.7.23(CD2枚組) 【コード】AMET-0027 【レーベル】アトミックモンキー 【価格】5,500円(税抜価格 5,000円)