こちらでは映画音楽の第一人者、久石譲（ひさいし・じょう）さんのご説明をしていこうと思います。

1950年12月6日生まれ。長野県中野市出身。国立音楽大学作曲科卒。

幼少のころ、ヴァイオリンを習い始めた時から音楽への興味が湧き、長野から上京して国立音大に進む。大学では学業のかたわら、さまざまなプロミュージシャンのコンサートのサポートを行う。そんな中、テリー・ライリーの「A Rainbow in Carved Air」を耳にし、初めてミニマル・ミュージック（短いフレーズやリズムがわずかに変化しながら繰り返し繰り返し演奏される音楽形態）に触れる。そのミニマル・ミュージックに衝撃を受け、以後テリー・ライリー、スティーブ・ライヒ、フィリップ・グラスなどのミニマル・ミュージックコンポーザーの影響を受ける。

大学卒業後、「はじめ人間ギャートルズ（1974年）」「ろぼっ子ビートン（1976年）」などのテレビアニメーションの音楽を担当するほか、映画音楽界の巨匠と呼ばれた故・佐藤勝氏の映画音楽を手伝いをする。その後独立し、氏のファーストソロアルバム「INFORMATION（1982年）」を発表する（実際の最初のアルバムは「MKWAJU（1981年）」なのだが、これは氏名義ではなく、MKWAJU EMSEMBLEとなっている）。このアルバムの表題ともなっている、「INFORMATION」という曲は西武百貨店で1年もの間、店内で流されていた。

その後、宮崎駿監督アニメーション映画作品「風の谷のナウシカ（1984年）」の抜擢以降、宮﨑駿監督作品「君たちはどう生きるか（2023年）」まで、宮﨑駿監督の長編アニメーション映画作品の音楽を担当する。

その後、大林宜彦作品「ふたり」や北野武監督作品「HANA-BI」、滝田洋二郎監督作品「おくりびと」、李相日監督作品「悪人」、高畑勲監督アニメーション作品「かぐや姫の物語」、山田洋次監督作品「家族はつらいよ」、渡辺歩監督アニメーション作品「海賊の子供」など、数々の話題作の音楽を手掛け、これまで1991年から1993年の3年連続で日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞し、さらには1999年「HANA-BI」、2000年には「菊次郎の夏（北野武監督）」にて2年連続で日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞、他にも「崖の上のポニョ（2009年）」「悪人（2011年）」「風立ちぬ（2014年）」で、計8度の日本アカデミー賞最優秀音楽賞に輝き、さらには海外においても「千と千尋の神隠し」でアニー賞音楽賞のほか、韓国映画「トンマッコルへようこそ」、中国映画「おばさんのポストモダン生活」などで各国の最優秀音楽賞を受賞している。

またソロとしても、ソロピアノやオーケストラなど様々なスタイルで積極的に活動しており、「Piano Stories（1988年）」「PRETENDER（1989年）」「MY LOST CITY（1992年）」「地上の楽園（1994年）」「Shoot The Violist ~ヴィオリストを撃て~（2000年）」「Another Piano Stories ～The End of the World～（2009年）」など、精力的にアルバムを出している。2023年からクラシックの名門のドイツ・グラモフォンより世界デビューし、アルバム「A Symphonic Celebration Music from the Studio Ghibli films of Hayao Miyazaki」をリリースし、全米ビルボード１位を獲得したことが話題になった。

そして1998年には長野パラリンピック冬季大会の式典・文化イヴェントの総合プロデューサーを担当し、また同大会の開会式をプロデュースし、長野エム・ウェーブに火柱を起こすなどのその演出性の高さが話題になった。2001年には福島県須賀川市で開催された博覧会「うつくしま未来博」の夜間メインイヴェント「うつくしまナイトファンタジア」のプロデュースを担当。また、久石氏自身、第一回の映画監督を務めた映画「カルテット」公開され、音楽だけには限らない幅広い場での活躍が光っている。

またコンサート活動については、2004年から新日本フィルハーモニー交響楽団と「新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ（WDO）」を結成し、音楽監督に就任するなど、ピアノ演奏から現在は指揮活動にシフトし、国内各地での演奏会を実施してきた。さらにはウィーン交響楽団、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団、ロンドン交響楽団、メルボルン交響楽団、シカゴ交響楽団、ロサンゼルス・フィルハーモニックなど世界の主要オーケストラと世界各地でコンサートも開催し、また、氏プロデュースによりミニマル・ミュージックなどの世界の最先端の”現代の音楽”を紹介するコンサート・シリーズ「MUSIC FUTURE」を2013年から始動、さらに2018年からは作曲家としてクラシックの指揮に取り組む新たな「FUTURE ORCHESTRA CLASSICS（FOC）」を立ち上げ話題となっている。

2020年から新日本フィルハーモニー交響楽団 Music Partner。2024年4月よりロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団のComposer-in-Association。さらに2021年から首席客演指揮者を務めている日本センチュリー交響楽団の音楽監督に2025年に就任予定。

平成9年度（1997年度）第48回芸術選奨文部大臣新人賞（大衆芸能部門）を受賞。
2009年紫綬褒章、2023年旭日小綬章を受章。
2024年 第51回アニー賞 ウィンザー・マッケイ賞（功労賞）を受賞。

（参考）
FUTURE ORCHESTRA CLASSICS VOL.7(2024)パンフレットの久石譲氏の紹介文章を参考にしました。