映画「サイレントラブ」を観てきた
映画館へ行って、久石さんが音楽を担当した映画「サイレントラブ」を観てきました!!
ストーリー
声を発しない青年・蒼(あおい:山田涼介)が出会ったのは、交通事故で目が不自由になり、ピアニストになる夢が途絶えそうな音大生の少女・美夏(浜辺美波)。ある事件をきっかけに「自分には夢をみる資格はない」と自らを責める蒼は、美香の夢を叶えることに初めて希望を見いだしてゆく。
「YESなら1回、NOなら2回、私の手の甲を叩いて」。それが、蒼の気持ちを知るために美夏が提案してくれた〈会話〉だった。初めて触れた美夏の手の温かさが、蒼の凍えた心をとかしてゆく。やがて蒼に深い信頼を寄せるようになった美夏は、「私にとってあなたの手は神の手。いつもこの手が助けてくれた」と感謝を伝える。美夏のその言葉は、暗闇にいた蒼に一瞬だけ灯をともす。
だが、蒼にはわかっていた。「本当の自分の手は、ずっと前から汚れている」と。今はただ、君を傷つけるすべてのものから守りたい。君が心に光を取り戻すそのときまで。そんな蒼の願いは、思わぬ運命とぶつかり合う………。(※映画パンフレットより一部抜粋しました)
映画館の様子
私の観た映画館では、満席とまではいってませんでしたが結構お客さんが入っていたと思います。Xでも書きましたけど、雰囲気的には半分以上のお客さんは主演の山田涼介さんのファンの女性の方だったかな? あとカップルで来られている方も多かったように感じました。
印象
事前に情報を仕入れずに観に行きました。分かっていたのは内田英治監督が北野武監督作品が好きで影響されていて、「あの夏、いちばん静かな海。」が好きで、今作はセリフが少ないということと、久石さんのことも内田監督が好きでオファーしたこと。それと出演が山田涼介さんと浜辺美波さんだというくらい。
まだ公開中なので映画の内容にあまり触れちゃうとネタバレになっちゃうからあまり具体的なことは言いませんが、音大を舞台にしたお話だってのに観始めてから分かったくらいで。
その上、ラブロマンス映画だと勝手に思っていたんですが、先ほどの内田英治監督が北野好きで「あの夏、いちばん静かな海。」に影響されており、しかも今作はセリフが少ないということで、普通のラブストーリーではないのかも、と思ったらやっぱり普通のラブストーリーではなく、ちょっとどんよりとした重めの雰囲気のラブストーリーで、ボクの好みの映画だったんですが、お客を入れることを考えるとこんなに暗い感じにして大丈夫だったのかな、という心配をしちゃうくらいです。
しかも、ふいに訪れる「バイオレンス」が2か所、いわゆる「グロ」シーンがあって、山田涼介ファンの方なんかはちょっと直視しずらいシーンだったのではないかなと感じました。完全に北野作品を意識した作品だったんだなと、あとから振り返って気づきました。
でも、こんなちょっと陰のあるラブストーリーって、ここのところ映画をトンと観ていなかったので分かりませんが、あまりなかったのではないかと思って、なかなか良い映画だったのではないかなと思いました。
俳優陣の演技
主演の山田涼介さんのほとんど声を発さない演技がなかなか良かったと思います。表情だけで見せてくる演技、良かったです。しかも格闘技をやっている設定だったので、格闘シーンもいくつかあったんですが、良かったと思います。
ヒロインの浜辺美波さんは目が見えない役ってところで歩き方とか目線の置き方とかも研究されたんでしょうね。違和感は全くありませんでした。で、とある山の中にあるカフェ(だったのかな?)のシーンで見せる浜辺さん演じる美夏の横顔はボクも惹かれてしまいました。すごく大人っぽくて綺麗だなあと思いました。
そうそう。もう一人、野村周平さん演じる悠真というキャラクターが出てくるんですが、最初はすごく嫌な役だったものの、途中からちょっと変わるんですが、最終的にこの悠真だけ何も残らなくなってしまうことになるので、そこへの救済を付けてほしかったなあという風に感じてしまったところは、野村さんの演技がうまかったということになるのかなあ。
音楽
サウンドトラックを事前に聴いていて、まったく「ラブストーリー」の音楽に感じなくって、どういうことなのかな、というところから映画を観たわけですが、全然音楽に違和感がなくて、良かったです。いや、古い久石ファンとしては、もう少し音楽がしゃしゃり出ても良いのではないかと思うところがあるにはあるんですが、最近の久石さんの傾向どおり、ミニマルミュージックを基本に置いて、あまりメロディアスにならない音楽を付けたんだろうなあという感じがします。
そうそう。いくつか「エレキギター」が出てきて、なぜ「エレキ」なのだろうと思ったんですが、音大を舞台にクラシックとは無縁な「異質のもの」という山田涼介演じる蒼の位置づけを「エレキ」として表現されたのかなあという受け止めをしています。あと、ところどころ出てくるハープの音色は、もしかして浜辺美波演じる美夏を表すものだったのかな、と思ったり。メロディじゃなくて、音色、楽器で表現しようとしている部分があるのかなと感じたところです。
あとかてぃんこと角野隼斗さんに演奏が依頼された「Silent」、なるほど、そういう使い方をされたかあ、という感じでした。奇をてらわない使い方でした。ただ、映画の撮影は1年半前とのことだったようですが、曲の収録は確か去年の夏ごろだったように思うので、映像に合わせて録音をされたんだろうなあ、なんてことをちょっと思って、あまりのびのびとした演奏ができなかったのではないかなと少し邪推してしまう自分がいます(苦笑)。映画上もこの曲がチラッと出てくるので、収録に先行して作られていて、おそらく久石さんが演奏されているデモバージョンを基に映画撮影を行って、あとからピアニストの角野さんにちゃんとした演奏を依頼したってことなのかなあと勝手に妄想を膨らませてます。
ただ、少し惜しいのは「Silent」の曲の短さ。結構印象に残る曲ではあるんですが、少し短い。映画で出てくる尺を考えるとサウンドトラックとしては問題ないんですが、せっかく久石譲作曲、角野隼斗演奏であればもう少し長い曲として聴きたかったなという想いがあります。ちょっともったいないああと思っちゃいました。
〔オーナーのお薦め度〕
サイレントラブ ★★★★☆☆ 星4つ
大感動するって感じではないですけど、素直に「良かった」と思える映画だったと思います。ただ、「ラブストーリー」を期待して観に来た方に「バイオレンス」をぶつけちゃう感じになっているので、そこはちょっとマイナス点になっちゃうかもなという感じがします。ただ、内田英治監督がちょっと気になってきました。「全裸監督」も監督されたらしいし、これからちょっと注目しておこうかなと。