「君たちはどう生きるか」に思いを馳せる②
結局前回は最序盤のストーリーを追いかけてしまったではないか!(笑)
ま、前回ついでに、今回のサウンドトラックでメインで使われている曲「Ask me why」は、WDO 2023のコンサートで久石さんの生ピアノで聴けたこともあって、ものすごく心に刺さっている曲なんですが、最初の冒頭に流れる「Ask me why(疎開)」で、ピアノで弾かれるメインメロディの音が抜かれても成立する曲となっているのがすごいなと単純に感じました。前にも同じことを言っていますけれど…(苦笑) 眞人の、失った「母さん」を表しているのがメインメロディなのかも知れません。
個人的に、最初に映画館で観て、聴いて好みだった曲は「28.大伯父」「31.大伯父の思い」「35.大崩壊」の、”大伯父”をテーマにした曲です。ピアノの和音の響きがきれいで、もしかしたら久石さんの演奏じゃないのかもと思っているところもありましたが、今は勝手に「久石さんの演奏だろう」と思い込んでます(笑)。
あの、あの世なのか想像の世界なのか、そこを司る大伯父を表す荘厳な音楽が、映画鑑賞時に脳裏に残りましたが一番印象的だったのは「35.大崩壊」です。大伯父が何とかバランスを保っていた世界が、いとも簡単に崩れ去っていく場面でも、大伯父を表す荘厳なテーマがバックに流れてきて、流れる画とのアンマッチさがすごく脳裏にこびりついてます。
大伯父がバランスを保っていた、あの白い石でできた「積み木」に使われる「石」って、人の「意思」とかけているのかなと感じています。積み木に選ばれなかった、草原に転がっていた「白い石」って、純粋無垢なものではなかったため外され、捨てられたたものと推測できます。それを、ヒミに「触ってはいけない」と言われているのに、眞人は意に返さず拾い上げてポケットに入れている時点で、ちょっとした「悪意」を持っていて、大伯父と対峙した時に、自分には悪意があるから、大伯父の仕事が引き受けられないと言い返した。ボクとしてはマンガ版「風の谷のナウシカ」のラストの場面と同じ考え方(腐海の毒に順応する人間として作られた自分たちは、完全に浄化された世界では生きられず、代わりに悪意の持たない新しい人類に置き換えられる計画だったものの、その新しい人類たちの卵をすべて叩き割り、自分たちが血を吐きながらでも生き切るんだという強い意志をナウシカのセリフ「いのちは暗の中の瞬く光だ」が表している)だなあと感じながら鑑賞しました。悪意を少なくても持っているからこそ「人間」なのだということになると思うんですが、マンガ版「風の谷のナウシカ」をバイブルだと思って読んでいるボクとしては、すごく腑に落ちるラストだったと思っていて、その結果起こった大崩壊で、荘厳な音楽が流れているのがさらに印象に残ったんだと思います。
にしても、大伯父の悪意ってどこに行ったんでしょうね? 何度か「大伯父は本を読みすぎて頭がどうにかなってしまった」と言われているものの、インコあたりに悪意を渡してしまったのかな?? あるいはアオサギに預けたのか?? まだまだ謎があります。
そうそう。ついでにもう一つ。あのあの世なのか大伯父の想像の世界なのか分からない世界ですが、他にも言っている方がいらっしゃいますが、眞人の血族だけが「人間」の姿になっているようなので、もしかするとキリコさんって、眞人と血縁関係が実はあるのかも知れません。描かれていないけど。他にもあの世界に行き来していた人がいて、眞人がインコたちに襲われようとしていた鍛冶屋って、表の世界から誰かが行っていたんじゃないかと思ってます。眞人にナイフの研ぎ方を教えていたオヤジさんだったり、体調が悪そうだった男性が確か冒頭に1名いたと思うので、その方が実は鍛冶屋の家にいたのに何らかの理由でインコに追い出された(いや、逆に何らかの理由で表の世界に戻らざるを得なくて、不在の間にインコに占領されたのか…)のかも?
…こんな謎解きができるようないろんな受け取り方ができる映画って面白いと思うんですが、今までのスタジオジブリ作品とは明らかに違うもので、あまり子供にすんなりおすすめできない作品でもありますよね。子供はすんなり読み取ってくれるのかが良く分かりません。でも、「ラピュタ」「トトロ」あたりの作品を期待している方がいるとしたら、まったくお勧めできない映画です(苦笑)。ボクは素晴らしい映画だと思っているんですけれど。