「地上の楽園」を聴いて

今日は作業をしながらラジオを聴いてみたり、音楽を聴いてみたりしてたんですが、ふと久石さんのソロアルバム「地上の楽園」を聴いてみたくなって、流してみました。

今の久石さんでは考えられないんですが、最初の曲から4曲目までボーカル曲がつづき、11曲中7曲がボーカル曲です。うち、9曲目の「Lost Paradaise」は共作ではあるものの久石さんも作詞を手がけ、さらに歌っている今ではレアな曲です。クレジットには書いてませんけど、声が明らかに久石さんのものです、ハイ。

1994年発売のアルバムなので、現時点からだと28年前の作品で、久石さんが43歳の頃にリリースされたものです。今のボクと同い年です。聴いていて、異色のアルバムではあるものの、すごくシックリきて心地よい。なぜかなあと考えていたんですが、作り出した久石さんと同年代だからなのかな、とふと感じました。

このアルバム、作るのが非常に苦しかったようで、1992年の夏に製作にかかってから発売が1994年夏なので、2年掛かっているようで、この時は確か小説「パラダイス・ロスト」を書いていたのではないかと思います。色んなことを模索していた時期だったんでしょうね。前作の「My Lost City」と、宮崎駿監督作品の「紅の豚」が終わって、当時、「ジブリ」自体の認知度はそれなりにありましたけど、ベルリン国際映画祭の金熊賞を受賞した「千と千尋の神隠し」は2001年(受賞は2002年)の作品ですし、いわゆる「劇伴作曲家」でやっていくか、売れ筋ボップスの作曲、プロデュースを手がけるのか、あるいは自らボーカルをやるのか。迷っていた時期なんだろうと思います。だから、いろいろやってみたんだろうと思います。

その現れからか、ジャケットでは久石さんが雄弁にいろいろと語ってらっしゃいます。1曲ごとにコメントを寄せているし、「Joeより愛をこめて」というメッセージを寄せているものの、むちゃくちゃ思いを寄せているからか、右側のページはそもそも段落が分かれておらず読みづらい(苦笑)。

目を惹く曲をいくつか。

3曲目の「さくらが咲いたよ」は海外の女性ボーカルの方に日本語を歌ってもらって、ちょっとした日本語の違和感がちょっとしたアクセントになっている曲。歌詞自体はものすごく物騒で、「さくら」を女性と重ねているのか、男が女のために人の首を取ったり、女が美しすぎて荒れ狂ってしまったり。最後は「さくらが散ったよ あとは何もない」で締められ、怪しげなんだけれど、ちょっと女性ボーカルにちょっと惹かれるところがあります。後々に娘の麻衣さんがカバーした曲でもありますね。

7曲目の「GRANADA」はボーカル曲ではなく弦楽器主体のアコースティックな曲ですが、「5・5・5・4・4」の変拍子という異色の楽曲です。でも、小気味良い”変な”リズムに心をゆだねるのが心地よい楽曲です。ジャケットを読むと、”ざくろの実が割れたものをじっと見たことがありますか?”と書かれており、GRANADAって単語自体がスペイン語で「ざくろ」を指す言葉だそうです。ざくろの見た目から”真っ赤な血にような汁の海に人間がのたうち回っている”なんてジャケットで表現がされ、ちょっとエロティックで(ジャケットには「すごく鄙猥(ひわい)でいかがわしくて何だか吸い込まれそうで、まるで地獄だ」と書かれてますが…)カッコイイ曲になっていると思います。

9曲目の「Lost Paradise」に触れないわけにいかないですよね。「パラダイス・ロスト」という私小説っぽい小説をご本人が書かれていますが、作詞も手がけられ、ご自身で歌われています。「Lost Paradise Lost Paradise すべてはサタンの誘惑から始まった」というものすごいパワーワードの歌詞で、印象に強く残ります。サタンにそそのかされて楽園だと思ってたどり着いた「地上」にはもはや何もなく、そこには「愛」しか残されていなかった、という内容でしょうか。もしかすると、羽のない天使たち二人が残されているので、互いの「愛」のみということなんでしょうか。ジャケットの絵とタイトルもこの曲から来ているのだろうと思います。

10曲目の「Labyrinth of Eden」は美しいピアノコンチェルトで、後にソロアルバム「ENCORE」ではピアノソロで弾かれて、コンサートでも演奏されることがあり、人気がある曲の一つだと思います。「Lost Paradise」と対になる曲で、「ボーカル」と「ピアノ」で対比させているのかも知れません。「迷宮への誘い(いざない)。死-それは一つの終わりであって始まりでもある。」ピアノの音色があの世への誘いなのかも知れません。それが「あの世」と気づかないかも知れませんが。そして、11曲目の「ぴあの」で気持ちが昇華され、久石さんが「ピアノ」に気持ちが戻ってきたのかも知れません。

帯に「ビル・ブラッフォード(キング・クリムゾン)、ビル・ネルソン等のサポートによって2年5ヶ月振り、待望のニュー・アルバムが完成!」と書いてあって、ジャケットにも「信じられるかい? あのビル・ブラッフォードだぜ!」とあるんですが、すみません。存じ上げませんでした… 有名なイギリスのロックドラマーの方なんですね。ウィキみたら、「ビル・ブルーフォード」読みの方が最近使われているようですが。

久石さんのボーカル曲、また新たなものを聴いてみたい気持ちもあることはあるんですが(苦笑…久石さん、声もきれいでらっしゃるし)、なかなか難しいだろうなあと思います。なので、このアルバムも再発売してもらえると最近ファンになった方も嬉しいのではないでしょうか。

【収録曲】
1.The Dawn 2.She’s Dead 3.さくらが咲いたよ 4.HOPE 5.MIRAGE 6.季節風(Mistral) 7.GRANADA 8.THE WALTZ (For World’s End) 9.Lost Paradise 10.Labyrinth of Eden 11.ぴあの(English Version)

【発売日】1994.7.27 【コード】PICL-1085 【レーベル】パイオニアLDC
【価格(当時)】3,000円(税込)(税抜価格 2,913円)

2件のコメント

  • 懐かしいですね。名盤です。
    そして私も久しぶりですね。生きてます。
    お互いに歳を取りましたね。私は今年、歳男です。

  • お久しぶりです! 24歳ですね!(爆)
    いつの間にか40歳越えてるんですもんね。
    「フナ」とか言っていたころが懐かしいです。

    このアルバム出た頃はボクはまだ久石ファンじゃ
    なかったんだよな…(苦笑)

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