「それでもボクはやってない」評

なんか参議院選を前にいろいろ騒がしいですが、そんな喧噪をよそにして(苦笑)、ずいぶん前に鑑賞していたのにあまりコメントをしていなかった周防正行監督作品「それでもボクはやってない」について、ちょっと書いておこうと思います。

 お話はだいたいご存じかと思いますけど、痴漢えん罪にあってしまった加瀬亮扮するフリーターの話で、これまでの「シコふんじゃった。」「Shall we ダンス?」などのコメディタッチ路線とは一線を画す映画で、メチャクチャ社会派な映画だってことはすでに何らかの形で聞いている人は多いんじゃないかと思います。
 実際に映画館で観た感想なんですけど、ディテールがすごくて違和感が無いんですよ。裁判所や拘置所の中なんかは証言を元にかなり費用をかけて作り込んでいるのもすごいし、もっとすごいのはメチャクチャ難しい話題を扱っているのに、映像自体は重くなく、すんなりと観ていけるのがすごいなと感じました。そして、裁判所がストーリーの舞台としている映画なんて、これまでなかったし、そういう部分でも画期的なんじゃないかな。
 でも、それよりもなによりも「えん罪」に対する監督の熱い思いが映画から伝わってきますね。警察、検察の高圧的な対応や、裁判は裁判官が主役になっている不可思議さ、容疑者と弁護士との関係、そしてこれから始まる裁判員制度に向けた警鐘などなど… 143分の長丁場ですけど、いろいろとちりばめられていて、時間がものすごく短く感じられました。これは国内の映画賞には必ずノミネートされていい作品だと思うし、されるべきだと思います。上手く伝えられないですけど、ホントに力を持った映画だとボクは確信してますよ。
 ただ、ひとつだけ苦言を述べるのであれば… 作品の性質上、仕方ないんだろうと思いますが、敢えて言うとこの作品は「映画」じゃなくても良かったのかもなというところが気になった点です。大音響で迫ったり、雄大な映像を流すわけでもないので映画館で観るメリットってそんなに大きくないんですよ。だから、自宅で観ても、ほとんど質としては変わらない作品だったので、映画の興行自体も「ヒットした」ってほどではなかったはず。DVD待ちの人が多いんじゃないかな、なんて思います。こういうドキュメンタリータッチで、裁判を映画にすると仕方ないことなのかなと思いますけど。
 そんなこんなでDVD発売前にちょこっと書いてみました。こういった社会派映画が好きな人は是非観て欲しいです。損はしないはず。

オーナーのお薦め度
 それでもボクはやってない ★★★★★★ 星6つ

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