第18回ファミリークラシックコンサート ドラゴンクエストの世界(Be SUGIYAMANIA 5th!!・2004.8.10)

先日、ドラゴンクエストコンサートを鑑賞してきました。ドラゴンクエストVIIIの曲を聴けるかも、という謳い文句にのって(笑)、その熱気むんむんとした模様をお伝えしようと思います!

また、いつもの通り、こちらのレポートと合わせまして、Be Series本家である「Be HISAISHIST!!」シリーズ(久石譲コンサートレポート)も合わせてお楽しみいただければと思います。

※注意
○このコンサートレポート(備忘録)は記憶をたぐりながら書いていったものであり、記憶が抜け飛んでいるところなどについては、脚色を施している可能性がありますので、完全なコンサートレポートではないことをご了解下さい。
○もし間違いを見つけたり、補記できる項目があれば、コメント欄で書いてもらえると嬉しいです。
日時2004年(平成16年)8月10日(火) 18時から
会場池袋・東京芸術劇場大ホール
チケット全席指定 S席5,000円 A席4,000円 B席3,500円
出演者指揮とお話(Conductor) すぎやまこういち(SUGIYAMA, Koichi)
ゲストコンサートマスター(Guest Concert Master) 深山尚久(MIYAMA, Naohisa)
演奏(Performance) 東京都交響楽団(Tokyo Metropolitan Symphony Orchestra)
その他主催:スギヤマ工房
協賛:(株)スクウェア・エニックス、(株)アニプレックス
企画・構成:すぎやまこういち
制作:スギヤマ工房

曲目

交響組曲「ドラゴンクエストIII」 Symphonic Suite DRAGON QUEST III

ロトのテーマ / まどろみの中で / 王宮のロンド / 世界をまわる(街~ジパング~ピラミッド~村) / ローリング・ダイス / 冒険の旅 / ダンジョン~塔~幽霊船 / 戦いのとき

INTERMISSION 休憩

回想 / 鎮魂歌~ほこら / 海を越えて / おおぞらをとぶ / ゾーマの城 / 戦闘のテーマ~アレフガルドにて~勇者の挑戦 / そして伝説へ 

Encore
淋しい村~はめつの予感~さびれた村
「ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君」より 序曲 / 広い世界へ

冒険の時!(コンサート前半)

この時期にお決まりで何かをやっているっていうのは誰でも何かしらあると思いますが、最近のボク自身の夏のお決まりと言えば、「ファミリークラシックコンサート ドラゴンクエストの世界」を聴きに行くって事でしょうか。

ということで、いつものごとながら、今年もドラゴンクエストのコンサートを鑑賞してきました。今回は「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」がプログラムされてました。このIIIはやはりシリーズ中でも人気が高い作品のうちの一つで、ゲーム自体も評価が高いし、また音楽も非常に評価が高いというのは、ちょっとゲームをかじったことのある方であればご存じだと思います。僕自身も、IIIのゲームも音楽も、非常に好きなものが多いです。

ということで、楽しみにしながら会場である東京芸術劇場(池袋)へ向かいました。今回は当日券もなく、チケットが完売されたそうです。IIIという作品の魅力ゆえの出来事なんでしょうね。回りを見渡すと同年代の方が非常に多い印象も受けました。

で、前置きはともかく、会場に入ってみました。このホールに何回来たんだろう? 1、2、3… たぶん今回で6回目でしょうか。ずいぶん来たものだなあ、池袋には(笑)。ホールの説明は他のレポートで何度も書いているので、ここでは割愛しますが、とにかく東京芸術劇場と言ったら、大きな回転切り換え式パイプオルガンです。今日もクラシックスタイルのオルガンになってました。現代スタイルのオルガンもかっこいいんですよ。一度、機会があったらみてくださいね! そして天井の高いこのホール、いつもの東京芸術劇場そのものでした。あ、そうそう、天井といえば、天井からマイクがつり下げられていました。マイクが3ヵ所、計6本くらいでしょうか、セットされてました。ライブ盤が発売されるかも知れません。ちょっと期待ですね!!

いよいよ開演の時間となります。東京都交響楽団(面倒くさいので「都響」と言いますね)の団員の方が入場するとともに拍手がなり始めました。このコンサートのちょっと前に行った久石さんの「World Dream Orchestraコンサート」ではフィルの方々への拍手がなかったんだよなあとちょっと残念に思いながら、都響の皆さんに拍手を送ります。そしてゲストコンサートマスターの深山さんの入場。一層力強い拍手が鳴り響きます。そして、おまじないのようにいつものコンサートで行われる音合わせ(チューニング)です。チューニングが終わって、静かになった会場にすぎやまさんが颯爽と入場されました。割れんばかりの拍手です。そんな中、幾方向かに向かってちょこっと会釈をするような感じのお辞儀をされてから指揮台に向かわれます。いよいよスタートです。

・ロトのテーマ Roto
ドラゴンクエストと言えば、この曲となるんですが、よく考えてみると僕はロト編の序曲は生で聴いたことはなかったんだなあということに今、気付きました。知らない人がいるかも知れないので説明すると、ドラゴンクエストは第3作までが「ロト三部作」、第4作から第6作までを「天空編」、第七作以降は…なんだか分かりませんが(笑)、ちょうど第4作から話が全く変わったことから、序曲の前奏的な部分であるファンファーレが変わったわけです。そんなわけで、僕はこれまでは天空編以降のトランペットファンファーレの序曲しかコンサートでは聴く機会がなかったんですが、今回は第3作までに使われたホルンのファンファーレの序曲を聴くことができました。この時点から、「懐かしいなあ」という思いに駆られます。多くの人は、僕と同じような感覚に浸ったことでしょう。そして、なんといっても都響の演奏が素晴らしかった。ファンファーレなども音が安定していてよかったですし。

いつもの事ながら、盛大な拍手の後の開口一番は自己紹介から。「どうも、こんばんは! すぎやまこういちでございます。」と第一声を発されました。その後、ゲストコンサートマスターの深山さんの紹介と、都響の紹介をされました。特に都響の説明には時間を割かれていました。

東京に拠点を持つオーケストラはいっぱいあって名前がちょっと違うと、全く違うオーケストラになってしまうという話がありました。「東京フィルハーモニックオーケストラ」とか、いろいろややこしいですからね。すぎやまさん自身、雑誌などの取材の際にロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の話をしているのに、後から記事などを確認してみると「ロンドンシンフォニー」となっていたりするなんてことを苦笑いをされながら話されていました。

そうなんですよね。オーケストラの名称って微妙なところがあります。僕なんかがよくコンサートで聴かせてもらっている「新日本フィルハーモニー交響楽団」なんかは、「新」を抜いちゃったらえらいことになりますからね(苦笑…「新日本」と「日本」は元々同じオーケストラでゴタゴタがあって分裂してしまったらしいので…)。そう、某有名企業がキャンペーンで「新日本フィルハーモニー交響楽団」のコンサートを開いたときに、「新日本フィルハーモニー管弦楽団」と名称表記しちゃってたこともありました(苦笑…ボクのコンレポにあるコンサートでの出来事でした)。

そうそう、もう一つ都響の話をされていました。都響は「東京都」のオーケストラなんだという点。東京都民のオーケストラということを強調されてました。ベルリンフィルなどの歴史のある有名楽団なんかがもしつぶれることがあったら、その時のベルリン市長は落選してしまうだろうなんて話をしていました。そんな話を枕詞にして、都響は素晴らしい楽団だから、絶対に潰すようなことがあってはならないし、これは政治家の方々は文化的なものに対して頑張って守ってやって欲しいということを話されてました。すぎやまさん、一都民として石原都知事に意見をするような感じでおっしゃってましたよ。ホントに、都響のことを逐一話に挙げられてバックアップするような発言をされていたのが印象的でした。

・まどろみの中で Prologue
この曲はスーパーファミコン版にリメイクされたときに追加された曲。クラリネットの音色が響き渡ります。そういえば、ゲームの出だしでいろいろ質問されたよな、なんて思い出しながら聴き入っていました。

・王宮のロンド Rondo
この王宮系の曲は、弦楽器が使われることが多かったりするんですが、そのストリングス(弦楽器)の演奏の動きがピッタリ一致しているところが非常に心地よかったです。ストリングスのために書かれたような曲で、途中ヴァイオリンソロをコンサートマスターの深山さんが披露されているところがまた良かったですね。素早い弓裁きは、本当に華麗でした。それにしても、ホント、弓の動きがみんなピタッとはまるから面白いものです。

「王宮のロンド」の演奏が終わった後、「全然関係のない話になってしまうかも知れないけれども…」という前置きをされてから、プロ野球再編問題の話をされ始めました。その中で、某球団のオーナー(後日辞任してしまいましたが…)が「たかが選手が!」という発言をされたことに対して苦言を呈されていました。この発言は昔の封建制度の考え方そのものだと。そんなことを考えると、「たかが選手」というのは現代に合わないぞ、という事を強くおっしゃってました。

・世界をまわる(街~ジパング~ピラミッド~村) Around the World
4曲がメドレーで連なる曲。前々からレポートで書いていますけれど、すぎやまさんの「街」を表す曲は非常に素晴らしいんですよ。このIIIでも、街の楽しげな様子がフルートなりストリングスなりの弾む曲調から表現されてます。街の中は、魔物から襲われることはないですからね。一息つけるなあと感じられるような曲のように感じます。

「ジパング」は一昔前の日本を表した曲で、雅楽がベースになったものです。でも演奏はオーケストラなんですよね。トランペットが音を揺らしながら演奏したり、ストリングスのピチカート、コントラバスのバルトークピチカート、フルートがさも雅楽の篳篥やら横笛のような音色を出したりと、さまざまなものを活用されながらの演奏でした。コントラバスのバルトークピチカートとは、先の弦楽四重奏のレポートの際にも書いたんですが、弦を大きくはじいて指板に当てて雑音を出す奏法です。CDでリリースされているものでは普通のピチカートでの演奏のように聞こえますけど、このコンサートではその部分がバルトークピチカートに変わっていたようです。

「ピラミッド」は、アラビアの雰囲気が漂う楽曲で、オーボエがそれにうってつけの楽器でしょうね~ アラビアっぽいって感じがします。調べてみるとアラビアの民族楽器の中にスルナイという管楽器があって、後に改良されて音色が和らげられたものがオーボエになったのだそうです。とにかく、オーボエを中心に独特のメロディを何度も何度も繰り返すことによって、異様な雰囲気を醸し出しているように感じます。

「村」も街の曲と同様に安心できる感じがしますよね。街の曲では楽しさや朗らかさが出てましたけど、この「村」ではのんびり農村でたたずむという感じがします。

・ローリングダイス Rolling Dice
初演が昨年(2003年)の夏の名古屋のコンサートのアンコールで披露され、その後PS2版「ドラゴンクエストV」にそのアンコールされた演奏が流されています。この曲は、すぎやまさんの説明にもあったんですが、サイコロがコロコロコロと転がっていくところを、マリンバで表現されていて、楽しげでサイコロの目がどう出るだろうというハラハラドキドキするような気分にさせられます。昨年のコンサートでは非常にマリンバの音色が全面に出た演奏だったんですが、今回は多少強さが抑えられていて、オーケストラと一体になって、素晴らしい演奏をしてくれました。

ローリングダイスの演奏が終わった後、またすぎやまさんが話し始められました。

まず、先ほど書いたようにローリングダイスの曲の説明があったんですが、その後「ドラゴンクエストVIII」へと話題が及びました。なんとそこで、「ドラゴンクエストVIIIの作曲作業は、先週で全て成し遂げたっ!!」と力強く宣言されました。もちろんその発言で会場が大いに沸きます。楽譜も目方で2~3キロくらいはあるんじゃないかとのこと。

この後、実は爆弾発言をされているのを、コンサートが終わった後に気付きました。すぎやまさんの口から「今年中の発売に向けて頑張ります!」とのコメントが。スクウェア・エニックスからは今冬発売という情報しか出ていないんですが、やはりファイナルファンタジーシリーズの発売とのバッティングとかの兼ね合いで予想されるように、若干前倒しで今年中発売という線が濃厚なのでしょう。

それと、作曲作業は終わって、これからPS2の音源に乗せる作業が待っているわけですが、その作業をするサウンドクリエイターの方たちがコンサートに聴きに来ているとのこともおっしゃってました。生の音を聴いて、ゲームに行かして欲しいとのこと。

そんな発言をされたのち、前半最後まで続けての演奏が始まりました。

・冒険の旅 Adventure
多くの人は「待ってました!」というフィールドの曲が流されます。前奏から、ストリングスがハイテンションで音を響かせてくれます。今でも、コンサートマスターの深山さんが全身を使って弓を動かされる様が思い起こされます。そして、その後にトランペットなどによるメロディーが鳴り響く。それを指揮するすぎやまこういちという構図は、生演奏でないと分からないと思います。拳を握って、トランペットなりに指示をするさまは力強くて、その力強さが東京都交響楽団の音色として表され、壮大な大地を力強く歩み出す勇者たちの行進が目の前に繰り広げられている様子が手に取るように感じられました。

・ダンジョン~塔~幽霊船 Dungeon~Tower~The Phantom Ship
おどろおどろしい「ダンジョン」から演奏が始まった。怪しく鳴り響くフルートの音色と、揺れながら響くストリングス。今、NHK交響楽団版とロンドンフィルハーモニー版とを聞き比べてみたんですが、音程が少し変わっているような感じが… 後発のロンドンフィル版の方が音程が低くなって、よりおどろおどろしくなっているような感じです。今回のコンサートでも同じように音程が低く演奏されたと思うんですが、とにかく静かな出だしとなっており、まさに魔物に見つからないように、オーケストラメンバーの身体の動きが少なく、音も小さいなっているのかなというようなことが伺えました。それが徐々に大きくなって、音が鳴り響いていくというような感じになってきました。

「塔」は、タイトルそのまま、魔物の巣窟となっている塔を慎重に様子を伺いながら詮索するさまが感じられます。「ダンジョン」は地中深くに入っていくさまが感じられ、「塔」は建物って感じを受けるのはなぜなんでしょう。やっぱり音階が高いためでしょうか。高い音を繰り広げつつ、怪しさを醸し出すうまさが光るような曲だと思います。それと、この曲は8分の7拍子や8分の5拍子などの変拍子が入っていたので、すぎやまさんは4拍子に半拍を入れ込んだような指揮をされていたのが印象に残ってます。

「幽霊船」は、指揮と音の拍子が合っていなくて、「あれ?」という印象を受けたのがかすかな記憶に残ってます。現代音楽の技法を使われているそうで、拍と指揮があっていなくても良いみたいです。でも、これは演奏者は大変でしょうね。しかも同じメロディの繰り返しで、幽霊船の異様な雰囲気を表すところなんかも素晴らしいんですが、やっぱり演奏する方は大変でしょう。何ともなさそうな曲のようにサラッと演奏してしまうところは、プロのプロたる所以なのでしょう。

・戦いのとき Gruelling Fight
この曲はスーパーファミコン用に移植されたときに新たに付け加えられた中ボス用の曲なんですが、ゲーム中で印象に残っている場面としてはオープニングに主人公の父オルテガが、魔物との戦いに敗れ火山の火口に落ちてしまう一戦を描く場面が思い起こされます。曲の冒頭で小刻みに揺れ動くストリングスの音色と、ホルンとトランペットの重く響く演奏は、人間と魔物の間に漂う一瞬の緊張感を表しているかのようです。特にホルンとトランペットの音色は魔物の声を表しているようで、戦闘の直前のやり取りを感じられます。

個人的にこの戦闘曲がかなり好きです。この後演奏される「勇者の挑戦」も素晴らしくて甲乙付けづらいくらいです。もし、ファミコン版のドラゴンクエストIIIを作成していた当時にこの曲ができていたら、「勇者の挑戦」とラストボス用の曲を迷ったんじゃないかなと思うくらいです。

そんな感じでコンサートの前半が終了となったんですが、会場の拍手が全然収まらず、前半なのにすぎやまさんがステージ上に一旦戻ってきて、観客に向かって会釈をされていました。前半からこれだけ盛り上がるってことは、観客側としてはそれだけ素晴らしかったという感情のバロメーターなんでしょう。

そうそう、ちょうど僕は1階席のJ列(10列目)のステージに向かってやや左側の席だったんですが、その前のI列の真ん中のレーンにはドラゴンクエストの蒼々たる面々が揃っていました。中央に堀井雄二さん、ドラゴンクエストのプロデューサーの千田幸信さん、旧ドラクエ課であるスクウェアエニックス第9開発部部長の三宅有さん、そしてドラクエVIIとPS2版ドラクエVのアートディレクションと、PS2版ドラクエVの開発会社の社長でもある眞島真太郎さんもいらっしゃってました。話に聞いたところだと、2階席中央奥にはファイナルファンタジーの音楽でおなじみ植松伸夫さんもいらっしゃっていたようです。

そして後半へ…(コンサート後半)

20分間の休憩の後、再びステージ上には都響のメンバーが帰ってきました。またチューニングをされた後、すぎやまこういちさんがステージにスタスタと現れました。もちろん大きな拍手で迎えられます。スコア立ての脇に置いてあったマイクを手にとって、しゃべり始められました。

まずはSUGIレーベルの立ち上げのことを話されてました。第一弾は都響の演奏でのドラゴンクエストVだという報告です。このCDの売れ行きがなかなかなのだとか。

そして、CCCD(コピーコントロールCD)のことをついて話をされました。これについてはいろんな意見などをもらっていて、「CCCDをパソコンに入れてコピーしようとしてもうまくできないじゃないか」と文句を言っている人がいるけれども、そうできないようにしてるのがCCCDなんだという話をされていました。CCCDは音楽家や演奏家が飯を食べていくために考えられたもので、いろいろコピーされてしまうと発売会社なども存続できなくなって、新たなCDの発売が困難になっていくんだという話に繋がっていったと思います。

それとよく言われている音質のことについて。「CCCDについては音質が悪くなるんじゃないか」とのことでSONYの機材の揃ったルームで聞き比べたそうなんですが、あまり違いが分からなかったそうで。若いスタッフに歳いくつだと聞かれ、「73歳だけど」と答えたら、「それじゃ無理だ」と言われたなんてことを笑い話にされていました。ただ、音質には大差はないと思うけれど、ものすごく耳のいい人は聞き分けられる人がいるかも知れない。そういう方は、是非生のコンサートを聴いて欲しいと話されていました。

個人的にはCCCDはもう二つ問題点が孕んでいると思います。CCCDが正規の規格ではない点。そして著作権などの知的所有権の扱いの低さ。

CCCDが正規の規格ではないので、CD等プレイヤーでの再生保証がないですよね。なのに、CCCDが再生できない場合の返品は受け付けないとのこと。著作権の取扱いについて、確かにしっかり守っていかなければならない部分ですが、再生できない可能性のものを売って返品受け付けないというのはひどい話ではないかなということも感じるわけです。しかもCCCDもいくつか会社によって扱いが違うわけで、今回の都響ドラクエV(ソニー系)は「レーベルゲートCD2」という規格(?)なんですが、東芝EMIはそういう規格にはなっていない。対応がまちまちというところです。

この点については、ソフト販売側(CD販売)とハード販売側(プレイヤー販売)が一体となって、新たな規格などの検討を行って欲しいと思うところです。現在でもSACD(スーパーオーディオCD)やDVD-AUDIOなどは規格自体にコピーガードの仕様も入っていることですし、そちらの規格に徐々にシフトしていったりするなどの検討をすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

あとは、コピーして配布することが悪いことだという意識をもっと一般の方々に持ってもらうことでしょうね。CDなどはレンタル屋や友人から借りてコピーして返すものとか、妙な意識が付いちゃっているところがあります。中古CDなんかもモノとしては中古かも知れませんが、肝心な中身(音楽)自体は新品も中古も関係ないですからね。インターネットが普及した今、ネットを介して音楽を手に入れることも可能となっていますし、その辺りの意識付けということも重要となってくることでしょう。

…って、なぜドラクエコンサートのレポートなのに、こんなに著作権について熱く語っているのだろう…?(苦笑) すみません、話題がかなり大きく逸れちゃったような気がしますが、気を取り直して…と。CCCDの話の後、最後まで演奏を一気にされていきました。

・回想 Distant Memories
チェロのソロが曲の最初を飾るもの悲しい曲です。チェロのソロから、オーボエのソロに変わり、やっぱりもの悲しい。先ほど、「戦いのとき」の曲説明の中で、主人公の父・オルテガは魔物に敗れ、火山の火口に落ちたと書いたんですが、この時に実は生き残っていて、主人公のいた世界とは異世界であるアレフガルドで生き残っていたわけです。でも主人公とその父のやっとの対面を果たしたとき、父は新たな戦いに敗れ息絶える直前だったという場面で流れる曲でした。

オルテガとの想い出を振り返りつつも、無念さがにじみ出るような感じの演奏が感じられました。ふと、1996年に発売された『交響組曲「ドラゴンクエストIII」そして伝説へ…』を眺め返してみて、すぎやまさんのコメントにふと目が止まりました。

この「回想」の演奏に際して、ロンドンフィルハーモニー管弦楽団の主席チェロ奏者のロバートさんという方が、この曲が流れる場面を説明して欲しいと言われたそうで、すぎやまさんは特にオルテガの話をし、なぜチェロの音色に必然性があるのかを説明されたそうです。そして、ロバートさんはオルテガの壮烈な最期を思いながら演奏したとのこと。

この都響の演奏でもそんなことを感じさせる名演奏だったと思います。

・鎮魂歌~ほこら Requiem~Small Shrine
「鎮魂歌」は聴いたことがないなあとか、印象に残っていないなあと思う人が多いかも知れません。魔物との戦闘で敗れてしまった時に流れる曲なので、「この野郎!」と思ってリセットをしてしまったり、コントローラーの何らかのボタンを押すと切り替わりますからね。この曲はストリングスのゆったりとした悲しげなメロデが、返って戦い破れてしまった主人公に対して「なぜ破れてしまったのか…」という強い哀しさ、悔しさみたいな感情が空の上から注がれているような、そんな不思議な曲でした。

「ほこら」では、「鎮魂歌」での、空から注がれてくるような不思議な感情というか、感覚のようなものが、辺り一帯を包んでいるような感覚を、荘厳なストリングスの音色が感じさせてくれる曲でした。

・海を越えて Sailing
いつも、海を進む曲はそうなんですが、すぎやまさんが手で大きく円を描きながら指揮を執っているのが印象的です。思い出してみてください。旅(ゲーム)も半ば、やっと手に入れた帆船で、広大な海原へと心強い仲間とともに出立していくわけです。遮る山も谷もなく、ホルンとヴァイオリンなどのストリングスが目の前に広がる水平線を感じさせてくれます。そうか、海をフィーチャーした楽曲もなかなか良いものだなあと改めて感じることの出来た曲でした。

・おおぞらをとぶ Heavenly Flight
この曲はシリーズの中でも名曲中の名曲として目されるうちの一つだと勝手に思い込んでいますが、ハープの音色をバックに冒頭から始まるフルートの音色から、それをつなげるようにオーボエが引き継ぐメロディーは、その一瞬でもうやられてしまいます。その後、オーケストラ全体で紡ぎ出す厳かな響きは、体中の力を振るわせるような、そんな力があるように思います。

ラーミアという空飛ぶ不死鳥をイメージしたこの曲は、大空をゆったりと舞うように、そして神秘的な力を持つ振る舞いをハッキリ感じさせてくれます。この曲は個人的には一番ベストな曲でした。涙腺ゆるんでしまい、危うく涙しそうになってしまいました。

力強い楽器構成の曲ではないものの、先ほども言ったように、そのメロディにははっきりとした力が存在すると確信しています。

・ゾーマの城 Zoma’s Castle
個人的には「おおぞらをとぶ」から続けて「戦闘のテーマ~アレフガルドにて~勇者の挑戦」に行って欲しかったなあということも思ったりもしました。ファミコン版で親しんできた僕らの世代であれば、この「ゾーマの城」は新たに追加された曲で、ファミコン版では無かったわけです(苦笑)。だから、「おおぞらをとぶ」から「戦闘のテーマ~アレフガルドにて~勇者の挑戦」への曲の流れも捨てがたくなる。ただ、最後のフィナーレを飾る直前、嵐の前の静けさを感じさせるこの曲も乙なものだなあとも思います。

ちなみにこの曲は「ダンジョン」の変奏曲となっていて、ストリングスが主体に演奏が進められていきます。だから、「あれ、このメロディ、どこかで?」と思うこともしばしばですけれど、「ダンジョン」よりおどろおどろしく、より高貴な雰囲気のあるメロディに感じられます。

・戦闘のテーマ~アレフガルドにて~勇者の挑戦 Fighting Spirit
いつもの事ながら、戦闘系の曲については、オーケストラならではの迫力を存分に味わえるものだということを、毎回感じるわけですが、特にこの曲は多くの人が待ちに待った楽曲だと思います。「ドラゴンクエストIII」といえば、最後の大魔王と戦う「勇者の挑戦」を抜きには語れません。

タイトルだけを観ても、他のシリーズ作品と一線を画すものがあります。他のものは魔物や魔王が主体となったタイトルなんですが、このドラクエIIIの最後の決戦の曲だけは、主人公主体の曲となっているんです。主人公を鼓舞するかのような、最終決戦での曲はこれだけではないかと思うわけです。

都響のメンバー、特にストリングスは迫力ある演奏は、「戦闘のテーマ」冒頭から力強い弓運びをしていたのが印象的で、中盤の「アレフガルドにて」のハープは、毎度のことながら心に響きます。この「アレフガルドにて」は、ドラゴンクエストIそしてIIにおいても、「広野を行く」というフィールドを歩む場面で使われる曲で、その若干不安げに満ちながら歩むさまを思い起こすたびに、心に来るものがあります。

その「広野を行く」のメロディをハープが弾き終わるとともに、大音響とともに「勇者の挑戦」が始まるわけです。弦楽器の素早い動き、力強い金管楽器の響き、打楽器のリズム感と力強さ、それぞれが大魔王の巨大さを表すとともに、その巨大さに立ち向かう主人公との熱き戦いを感じさせます。

そして、この「勇者の挑戦」は、実は「広野を行く(アレフガルドにて)」の変奏曲でもあるわけです。全然気付かなかったんですが、よくサビのメロディを聴いてみると、「広野を行く」っぽいんです。これには非常に驚きました。また途中に「ロトのテーマ」のファンファーレなどもちりばめられているという豪華編成となっているわけです。

楽曲が鳴りやむと、我慢できない観客から拍手がわき起こりました。すぎやまさんは、パッと客席に顔を向け、ちょっと笑われるとすぐに向き直り、指揮棒を振り始められました。おそらく、勇者の挑戦から直接次の曲である「そして伝説へ」へ入りたかったんだろうなあと思いました。

・そして伝説へ Into the Legend
そして、あのトランペットの音色が流れてくるわけです。勇壮で、壮大なトランペットの音が。曲の冒頭から、達成感を感じさせるような力強いさまを感じることができます。

すると一転して、フルートが静かにメロディを奏でていきます。この長い旅路で置いてきたものがたくさんあった。失ったものもたくさんあった。それでも前に進んでゆこうというような曲で、曲自体も素晴らしい事ながら、その前に都響のメンバーのパフォーマンスが素晴らしかった。このコンサートを通して、綺麗で、美しくて素晴らしい演奏を聴かせてくれたことは、観客の僕らにとっては非常に嬉しい限りです。

それにしても不思議なものです。発売から16年ほどが経ち、当初はあのファミリーコンピュータのピコピコ音でこれらの曲が鳴り響いていたわけです。それでも「勇者の挑戦」などは強烈なインパクトを受けたことを今でも覚えているし、「そして伝説へ」はその「勇者の挑戦」を受けての曲だということもあって、何とも言えない感覚になったことも思い起こされます。やっぱり、その時はゲームの主人公と感情が一体化してますよね。その音楽が同時発音が3音か4音の範囲で表現されていたわけだから、今考えると難しいことをしていたんだなという事を感じさせられました。

そしてオーケストラでの大迫力の曲。もちろん、3音や4音で音が発せられる音楽とは若干アレンジは違うものの、やっぱり素晴らしいわけです。「そして伝説へ」は「そして伝説へ」以上でも以下でもなく、そこで鳴っているわけですから。やっぱり生演奏は良いです。出来れば、多くの人に生演奏で聴いてもらいたい、そう思います。

演奏が終わるともちろん拍手喝采です。たしか「ブラボー」という声もかかったような気がします。すぎやまさんは会場に向けて笑顔で答えられ、何度も都響のメンバーをねぎらうようなリアクションを取られていました。

一度、舞台袖に戻られてからステージに再登場。マイクを取ってしゃべられたんですが、客席の入りについて話されていました。3階席までギッシリ席が埋まり非常に嬉しいと話されました。そういうことで、アンコールをやりますと宣言。今回は、当日券もないということだったんですが、やっぱりドラクエIIIだからというところもあるんでしょう。

その後、すぎやまさんは、「客席がガラガラで拍手もパラパラだったら寂しい曲をやろうかなと思っていた」と話され、満員でも良いよね、と都響版「ドラゴンクエストV」天空の花嫁のために新たに書き下ろされた「寂しい村~はめつの予感~さびれた村」の説明をされました。で、曲に入る前に思わずひと言「じゃ、まず、この曲をやります! …あっ!」 アンコールなのに「まず」を言っちゃったら、まずいでしょって感じで…(笑) すぎやまさんも、「やっちゃった」という感じで苦笑いして口を押さえてました(爆)。

アンコール
・ドラゴンクエストVより 淋しい村~はめつの予感~さびれた村 Sad Village~Mysterious Dissapearance~Disturbed Village

「ドラゴンクエストV」天空の花嫁にて、もともと曲としては作られてはいたものの、オーケストラ化されていなかったんですが、都響でのオーケストラ収録の際にアレンジされ、初収録となった曲です。

今ごろ気付いたんですが、この曲はこの演奏がコンサートでは初演ということになるんですね。この会場で聴いた観客たちが、世界で初めて生で聴けたってわけです。ありがたいことです。でも、新曲って事ではないので、実感としては沸きづらいですが…(苦笑) しかも、この曲が来るとは個人的には思っていなかったもので…

そんなこともあって、実はよく覚えていなかったります(汗)。そこを記憶を絞り出すように思い出すと、「淋しい村」は、ゲーム中では辺鄙な村で流れる曲だったはず。のんびりするなあという部分と、ちょっと淋しいなぁという感じが半々に感じられるような曲だよなあと感じたことを思い出しました。

「はめつの予感」は印象的な使われ方をする曲だと思うんですが、聴いていて気持ちよかったです。にしても、曲としてはこのようなタイプの曲ってあまり作られていないですよね。単発的に情景を思い浮かばせる曲はいくつかありましたけど、この曲は、いくつかの場面で使われて、タイトルのとおりあまり良くない場面が起こる直前の導入曲というか、何か起こるぞと思わせぶりな曲というか、そんな感じのものだと思います。

「さびれた村」がその後続きますけど、ドラゴンクエストVは村系の曲が多くなりますよね。ゲームではある出来事により滅ぼされてしまった、ひと気のない村で流されます。村なのですが、若干開けた村なので、のんびりとした感じがさほど強くないです。人工的な建造物が建っているからこその寂しさというものが感じられます。表現の幅が広いですよね、音楽って。

演奏が終わって拍手が起こったんですが、すぎやまさんはステージ袖には向かわれません。さっき「まず」って言っちゃったので…(笑) マイクを持たれて、「ドラクエVIIIの曲をやりましょう」とおっしゃり、VIIIの序曲の演奏となりました。「序曲」だという話が出たときに会場から、ちょっとした笑い声が… 「IIIのとはイントロが違うからねぇ~」ってすぎやまさんが返されていましたが、今日2回目の序曲です!(厳密に言うとIIIは「ロトのテーマ」になっちゃいますが…)

・ドラゴンクエストVIIIより 序曲
VIIの序曲と、IVの序曲の合体版だということで、前半と後半の演奏が違う形となってます。これまでの序曲でも前半と後半で演奏形態が異なるっていうのはありましたけど、過去の作品のアレンジが組み合わさるというのは初めてですね。でも、パッと演奏されてもなかなか気付かないものです。演奏は、最初は高らかなトランペットの音色から、後半はホルンの荘厳な音色へと移り変わっていく感じで行われました。
ちなみに、この時の演奏について、個人的に感じたのは、スコアにスラーが付いていなかったのか、金管楽器の演奏が、Vの序曲よりも音の伸びをちょっと切ったような形になっていたような、スタッカートっぽい演奏になっているように感じたのを思い出しました。もしかしたら気のせいなのかも知れませんが、若干音を切り気味に演奏していたので、軽快な序曲という印象がありました。

もちろんほとんどの観客はこの「序曲」が終わった後もすぎやまさんを帰しません。盛大な拍手がすぎやまさんに対して、強いアンコールを求めています。すると、もちろん用意しておいたんでしょうけれど、「ドラゴンクエストVIIIのフィールドの曲をやります! 『広い世界へ』です!」 そう説明されたんですが、フィールド曲をやるという時点から拍手が始まってしまい、曲名が聞きづらかったです(笑)。

・ドラゴンクエストVIIIより 広い世界へ
プレイステーション版ドラクエVに付いているVIIIのプレミアムディスクでフィールド曲が流されていたので、てっきりその曲かなと思ったら、イントロがちょっと違ってました。同ディスクの音源ではハープからトランペットへとメロディが流れてましたが、オーケストラ編曲されたこの曲はハープからストリングスへと音が回されていような形となってました。ストリングスにてメロディが流された後に、プレミアムディスクでおなじみのサビ部分のホルンへと続いていきます。ハープのメロディもちょっと変わっていて、やっぱり、オーケストラアレンジをするとちょっと変わってくるんでしょうね。

途中で曲調が変わり、ドラムスなどが入り込んで、ハイテンポアレンジとなって音が響き始めたところは、かなり驚きました。ホルンが鳴り響く部分が、カジノとかで豪遊しているような楽しげなものに音色が変わっているんです。

この「広い世界へ」には本当にビックリして、楽しめました。素晴らしい曲です。しかもフィールド曲としては、これまでとは異なり、非常に長く、かつアレンジも途中で感じが変わりますし。聴いていて力が入るし、なんと言っても楽しい。この音楽でゲームが楽しめるんだろうなあと思うと、今からワクワクしますよね。
あとから聞いたんですが、曲調が変わるところは、何か意味があるらしいですね。それについては、本編をやってのお楽しみと言うことですので、みなさん、曲調が途中から変わるところは要チェックです。

世界初演である「広い世界へ」の演奏があり、沸き立つ会場。全く収まりません。いつものごとくすぎやまさんが会釈をしながら、ゲストコンサートマスターの深山さんとにこやかに握手を交わし、都響のメンバーにもねぎらいのジェスチャーをするなどをして何度かステージを行き来していたんですが、全く拍手が収まりませんでした。都響メンバーが退席して「あ~ もう終わりか~」という状況になっても拍手が全くやまず、慌ててすぎやまさんがステージ上に出てきて頭を下げられていたのが印象的でした。

そんなこんなで2004年夏の東京・ファミリークラシックコンサートのレポートは以上でした。って、なんかあまりレポートの体裁をなしていないような感じも…(苦笑) 曲説明が長すぎて、実際のコンサートではどうだったのかっていう記載が少ない部分もあっただろうと思います。それはその部分の記憶が引き出せなかったからです(苦笑)。申し訳ないです(汗)。

そんな拙文を、時間書けて読んで頂きありがとうございました。また、次の機会もごひいきに!(爆)

2004.09.04 14:40 書き上げ
2004.09.04 22:10 修正

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