そして円熟の時へ… コンサート後半戦
後半はすぎやまさんからのお話から始まりました。
「ドラゴンクエストとは関係の無い話になりますが、最近何か世の中がおかしいなぁと感じています。政治経済もそうですし、金融とか、あと青少年の犯罪などがそうでしょう。なぜそんなことが起こってしまうのかなぁと自分なりに考えると、どうも自分中心で物事を考えたり、判断したりしているのではないだろうかと思うんです。自分自身に得なのか、損なのかという、単なる損得だけで判断してしまうというのがその理由なんじゃないでしょうか。その点、ドラゴンクエストは自分の身を投げ打って、自分の身を犠牲にして他の人々を助けるという、愛他的と言いますか、そういった自己犠牲というのをゲームから体験できるわけです。みなさん、愛他精神というのを大切にして下さいね。」
すぎやまさんは、選挙での一票の格差についての意見広告を出されるなど、社会的な物事については非常に関心のある方で、ドラゴンクエストというパイプを通して、若い世代の人々へ何らかのメッセージを送りたかったのでしょうね。確かに、おっしゃるとおり、全ての"おかしい"出来事というのは、いわゆる自己中心的な考え、自分よがりな考えから起こされているのはうすうす感じられると思います。すぎやまさんのお話を考えると、ドラゴンクエストのやっている方々にはそのようなことを起こしてもらいたくない、といった願いというものもあったのだと思いますね。
すぎやまさんは「それでは、今から続けて最後の曲まで一気に演奏をします」とおっしゃって、後半の最初の曲に入りました。
・スフィンクス〜大神殿 Sphinx〜Mysterious Sanctuary
まず最初の『スフィンクス』はIIIの"ピラミッド"に通じるところがある曲でした。細かいところまでは覚えていないので、あとで確認をしてみようかなぁと思います。
そして『大神殿』という曲… これもあまりよく覚えていないです。スケールの大きい荘厳な曲だったと思うのですが、ハッキリしません。
・小舟に揺られて〜海原の王者 Aboard Ship〜Pirates of the Sea
『小舟に揺られて』は文字通り、小さな船が海の上をプカプカと浮いているような曲でした。でも、やっぱり具体的には覚えてない…(汗)
そして『海原の王者』は、非常に力のある曲で、出だしが大型船の出航を感じさせるようなファンファーレっぽい感じでした。相変わらずすぎやまさんはファンファーレが上手いなぁと感じました。中央競馬のファンファーレ然り、ドラクエのファンファーレ然り、素晴らしいのひと言です。そして大きな船が、海原を突き進むといった力強いメロディーが展開されていきます。この曲だけを聴いてみると何かゲームのキーポイントというか、重要性というのが伝わってくるような感じがします。VIIのロゴの背景にも大型船が映し出されていますし、どうも「船」というのがキーワードなんでしょうね。
・愛する人へ To My Loved One
またまたこの曲ではすぎやまさんがタクトを手から外して、フリーハンドで指揮をされていました。ゲスト・コンサートマスターの朝枝さんのヴァイオリンソロからこの楽曲は始まります。悲しげにも綺麗なメロディーが流れる楽曲でした。
・魔塔の響き Screams from the Tower of Monsters
これは文字通り"塔"の曲ですね。出だしを弦楽器(ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、コントラバス)すべてがピチカート奏法(弦を指ではじいて弾く方法)で入るといった面白いものでした。曲のテンポも速かったので、ピチカートでよくこのテンポについていけるなぁと感心していました。不思議で怪しい感じがする曲になっているんですが、"塔"の曲であるにも関わらず非常にメロディーが美しかったです。
・哀しみを胸に〜やすらぎの地 With Sadness in Heart〜A Safe Haven
この2曲はほとんど覚えていません。それにしても『哀しみを胸に』はレクイエムなんでしょうか? その点が非常に気にかかります。
・魔法のじゅうたん Magic Carpet
マリンバ(もしかすると鉄琴かも知れませんが…)の軽やかな音色に乗って、ヴァイオリンの楽しげな音色がその上に乗ってくるような感じの曲でした。何となく『空飛ぶベッド(VI)』に感じが似ていたような気がします。
・遥かなる空の彼方へ Over the Horizon
この曲もゲームのキーとなるような感じの曲でした。非常に力強い場面と、メロディアスな場面が入り混じって、深みのある綺麗な素晴らしい曲でした。しかし、どのような場面でこの曲がかかるのかちょっと楽しみなところでもあります。場面が題名からだとあまり想像が出来ませんし…
・オルゴ・デミーラ Orgo Demila
この曲は"ラスボス"の曲でしょうね。ドラゴンクエストVあたりから続いている、ラストボス特有の威厳を表すかのようなおどろおどろして、低音の効いているゆったりとした曲になってました。個人的にはIIIの「勇者の挑戦」系の曲が好きなので、そっち系のものを作っていただきたかったのですが、これは仕方の無いことだと思います。箇所箇所で力強くはなるものの、やっぱり低く落ち着いた曲でした。それにしても、「オルゴ・デミーラ」ってどんな意味なのでしょうね。まさかラスボスの名前が"オルゴ・デミーラ"なわけは無いと思うのですが…
・凱旋そしてエピローグ Triumphal Return〜Epilogue
プログラム最後であるエンディングテーマであろうこの曲は、やっぱりこれまた素晴らしい。曲の最初は故郷に戻ってきたんだといった安堵感と、また故郷が自分たちを受け入れてくれているようなメロディーが流れてきます。その後、タイトルにもあるように凱旋パレードを行っているような強い曲調が繰り広げられていきます。街中を巡って、人々がヤンヤヤンヤと歓声を上げて祝福しているのか、あるいは喜んでいるのか、そんな感じのメロディーです。その後、今度はこれまでの旅で起こった出来事や、出会った人々を懐かしむように思い出したり、今、何やっているのだろうかと思いふけっているような感じに優しいメロディーに移っていきます。このようにさまざまな要素が組み合わさった曲で、壮大なスケールを感じさせるような曲でした。
プログラム最後の『凱旋そしてエピローグ』が終わった後、盛大な拍手が鳴り止まなかったのは言うまでもありませんでした。本当に全然鳴り止みません。笑顔ですぎやまさんが拍手に応じています。すぎやまさんも、コンサートマスターの朝枝さんも、また神奈川フィルハーモニー管弦楽団の皆さんも満足げな表情を浮かべています。いったん、すぎやまさんが舞台袖に戻られた後、また指揮台に戻ってきて、マイクを手に取りました。
「どうもありがとうございます! こんなに拍手をもらったら、アンコールをやらないわけには行かないでしょ…(笑) ということで、アンコールはやります!」
会場から盛大な拍手が送られます。もちろん、僕たちはアンコールのために拍手をしたわけで…(爆) ま、それ以前に楽曲自体が非常に素晴らしかったですね!
「で、今回、アンコールの曲は何にしようかと考えていたのですが… これまで今回を含めて計七作までやってきて、そろそろ一番最初を振り返るのもいいかなぁと思います。」
今度は会場からどよめきと、一層盛大な拍手が起こりました。
「ということで、『I』の曲を演奏したいと思います。"街の人々"です!」
会場からの拍手とともに、さっとタクトを用意して早速演奏に入りました。
・ドラゴンクエストIより 街の人々 People from Dragon Quest I
いやあ、ドラクエファンにとっては本当に懐かしい曲でしょう。何せ14年前に初めて作られた曲ですから。すぎやまさんや、ドラゴンクエストのスタッフの方々にとっても、昔を思い起こす曲でしょう。出だしがヴァイオリンなどの弦楽器が中心となり、その後、クラリネットなどの音色などが交じり合いながら曲が展開されていきます。やっぱり、ドラクエシリーズの"街"の曲は名曲ぞろいです。
この曲が終わると、会場からまたまた大きな拍手がすぎやまさんたちに送られます。それにすぎやまさんがいろんなアクションで答えています。そうするとまたマイクを持たれて話されました。
「またまたこんなに拍手を頂いたので、もう一曲をやらなければなりませんね?」
とコンサートマスターの朝枝さんの顔を見つつ、おっしゃいました。もちろん、会場から拍手が送られているのはいうまでもありません。
「今、『I』の曲を演奏して、『I』のことをいろいろ振り返った方もいるでしょうけれども、やっぱり『I』と来たら、そう、『II』でしょう!」
待ってましたとばかりに会場から盛大な拍手が… そう、こうなると皆さん、願うのはあの曲しかありません!
「『II』で"振り返る"ような曲… そんな曲を考えると… そうです。この曲、『この道わが旅』!!」
やっぱりエンディングである、『この道わが旅』しかありませんよ、ここまで来ると! 場内、拍手が渦巻きます。その拍手も、すぎやまさんが右手を挙げると同時に鳴り止みます。
・ドラゴンクエストIIより この道わが旅 My Road My Journey from Dragon Quest II
願っていた曲で、そう来るだろうなぁと思っていたんですが、この曲が始まると同時にゲーム上のことだけではなく、それまでの様々なことを思い出してしまって、胸がいっぱいで一人、感動していました。
アニメの「ダイの大冒険」で団時朗さんがこの曲を歌い上げていますが、それも非常に名曲で、ドラゴンクエストファンにとってはおなじみの曲です。エンディングの名曲だけあって、それまで歩んできた"道"を思い起こさせるんですよね。出だしはハープから入り、その後ヴァイオリンの音色が入ってくるのですが、それがまたググッと心に響いてきます。また、トロンボーンのソロと、トランペットのソロ部分があり、トランペットの方はメロディーがちょっといじられてあり、それがまたメロディーに深みを与えるような感じでした。大感動の一曲でした。
もう会場から大きな拍手が起こって全く鳴り止みません。すぎやまさんは舞台の出入りを繰り返し、何度も笑顔で頭を下げたり、コンサートマスターの朝枝さんと握手したり、神奈川フィルに対して拍手したり、観客に答える反応をしたり、いろいろされていましたが、最後、神奈川フィルハーモニーの皆さんを席から立たせ、全員で礼をして、盛大な拍手の中、すぎやまさんが退場され、続いて神奈川フィルの皆さんが退場していきました。
このとき、僕は「せっかく、『I』と『II』をやったんだから、ロト三部作ということでもう一曲やってもらえないかなぁ」なんてひそかに思っていたんですけど、やっぱりアンコールは2曲でした(笑)。