いよいよ始まる… コンサート前半戦
さて、開演時間の18:00になったんですが、コンサートでは大抵5分くらい遅れてのスタートなので、あまり遅れは気にせず、他の方を喋りながらそのときを待っていました。そうすると徐々に照明が落ちていき、会場には今回のコンサートマスター・ヴァイオリンの朝枝さんをはじめに、神奈川フィルハーモニー管弦楽団の方々が入場してきました。フィルの方が席についたすぐ後、すぎやまこういちその人がタクトを持って現れました。会場から盛大な拍手が送られます。指揮台に上がり、観客に向かって笑顔で頭を下げられると、サッと後ろを振り向き、拍手が鳴り止まぬうちにタクトを持った右手が上がっているではないですか!?(驚) このテンポの速さにちょっと唖然としてしまいました(汗)。
ステージ上の様子です。見づらいですが、ステージの向こう側の2階にも客席があります。
・序曲のマーチVII Overture VII
おなじみのドラゴンクエストのテーマとも言える、定番の曲からのスタートです。…と、すぎやまさんがテンポ良く、というよりかなり早めに右手をあげられたので、神奈川フィルのトランペットの皆さんが虚を付かれたのか、あるいは心の準備が間に合わなかったのか、最初のファンファーレの出だしの音が割れてしまってました(笑)。ま、ありゃ、仕方ないのかなぁ…なんて割り切りつつ、おなじみのメロディーに感じ入ってました。やはり、『これぞドラクエ』という華麗なマーチでした! にしても、一緒にすぎやまさんの姿を見ていたんですが、すぎやまさんの指揮は言うなれば場慣れした指揮という感じで、さほど力の入っていないものでした。確かに力を入れすぎると疲れてしまいますし、その辺の配分みたいなものもあるんでしょう。すぎやまさんの場合は、コンサート前のリハーサルで充分練習をしているのだから、さほど指揮に力を入れなくてもフィルの皆さんがやってくれるだろうという、ベテランならではの発想からの指揮なのでしょうね。ま、指揮については後ほどじっくり喋ってみようと思います。
「こんばんはー、すぎやまこういちです。」
一曲目の演奏が終わるとすぎやまさんが話し出されました。もちろん会場から盛大な拍手が寄せられます。そんな中、今回のコンサートマスターである朝枝信彦さんと、演奏を務める神奈川フィルハーモニー管弦楽団の方々の紹介をされました。会場から切れ目の無い拍手が続きます。
「えー、これまでいろんなところでドラゴンクエストのコンサートを行ってきました。しかし、今回はこれまでと違って、ゲームが発売される前に演奏をするということで、これはこれまでコンサートをやってきて初めてのことです。今回、『ドラゴンクエストVII−エデンの戦士たち−』は本邦初演のはずだったのですが、急に福岡でコンサートが決まって、ついこの間演奏をしてきました。ということで、今日は東京初演ということになります。」
福岡でコンサートがあったんですか? 初耳で知りませんでした。僕らの前にすでにVIIの曲を聴かれていた人がいたんですね〜 にしても、発売前のコンサートというのはちょっと、厳しいかなぁなんてちょっと不安に思ってはいたんですが、果たして結果はいかに…
「それではこれから3曲、ゲームの序盤で流れる曲を続けて演奏しようと思います。この曲がどのような場面で流れているのか、想像しながら聞いてみて下さい。」
そうおっしゃるとサッと、フィルの方々に身体を向けて指揮棒を振りかざしました。
・エデンの朝 Morning of Eden
この曲、聴き直せば思い出せるんでしょうけど、自力では思い出せないんですよ…(苦笑) 出だしが静かなヴァイオリンのメロディーだったような気がするんですが…
・封印されし城のサラバンド Saraband
この曲も具体的には覚えていないです… ただ何か不思議な雰囲気のする音楽だったとは記憶しているのですが…
・王宮のホルン Echo of Horns throughout the Castle
テレビ番組などでよく流れていたり、ソニーのホームページに音楽データがアップされてあるので、聴いたことのある方も多かったのではと思われますが、この曲は文字通り、ホルンの音が前面に出た音楽です。王宮の楽器シリーズだと、『王宮のトランペット(V)』に続き2曲目ですね。このホルンって、管楽器の割には音が柔らかいというのが分かり、またその音が素晴らしかったです。すぎやまさんも、「やっぱりホルンの音は素晴らしい!」と絶賛するほどのものでした。曲中ではメロディーが奏でられるところで、左こぶしを高々と挙げて、ホルンパートをリードしていたのがカッコよかったですよ。
3曲が終わり、盛大な拍手が会場から送られた後、すぎやまさんが話し始めました。
「え〜、ドラゴンクエストはホントに素晴らしいゲームで、このゲームがはじめて出た時からかれこれ14年も経ったのですね〜 このような素晴らしいゲームに出会えて私は幸せです。」
このひとことで会場からひときわ大きな拍手が送られました。
「私はドラゴンクエストVIIをテストROMで5分の1くらいやったんですよ。」
今度はこのひとことで会場からどよめきが起こりました。そりゃ、みんなは発売前だからやっているはずがないし…(笑)
「ま、仕事の役得ですよ〜(笑) にしてもホント、素晴らしいです。(神奈川フィルの皆さんに向かって)ホント、良いですよ〜 やってみて下さいね〜!」
フィルの方々に向かっておっしゃったものだから、会場から笑い声もちらほら…
「そうそう、ドラクエVIIのヒントを教えても良いですか? ん、良いですね?」
どうも会場にきていた堀井さん、オリオンさん、リバストさんなど、スタッフの方に問い掛けていたみたいですね。スタッフの方々が前から10列目ぐらいの席に勢ぞろいしていたようですし。他にもアートディレクションされた眞島さんやら、プログラムの山名さん、またまた伝え聞くところによるとチュンソフトの中村さん(Vまでメインプログラマーをされ、現在『トルネコの大冒険』『風来のシレン』『街』などの作品を作られています)もいたようです。中村さんだけはこの目で伺うことは出来ませんでした。もちろん、お話をいっしょにしたリバストさん、オリオンさんも一緒におられたようです。
「私がやってみて思ったことは、『街の人々全員に話をすること』ですね。何をやって良いか分からない時に、まだ話していなかった人に話すと、これからやるべきことが分かるというがたくさんあります。今回は驚くべきことに、ドラゴンクエストVIIのシナリオが17,000ページになったということですが、そうですよね?(また堀井さんたちに問い掛けているみたいです) そういうことで凄いゲームです。みなさん、ドラゴンクエストVII−エデンの戦士たち−、是非買っていただき、やってみて下さいね! それと音楽も一緒に楽しんでいただければと思います。ゲームをやっている最中、決してヴォリュームを下げたりしないで下さいね(笑)。」
最後のひと言には会場からも笑いの渦が起こりました。にしても、やっぱりドラゴンクエストの基本は「人の話を聞く事」ですね。逆に人の話にヒントがあるからドラゴンクエストなのかも知れません。にしても17,000枚のシナリオってのは大変でしょうね。僕のこのコンサートレポートの下書きがたかだかB5で9ページでしたし(それでも、多い方なんですが…)。
「それでは、またこれから3曲続けて演奏します。」
ということで、演奏が早速始まりました。
・のどかな家並 Heavenly Village
ゲーム中での"村"の曲のようです。たしか、ヴァイオリン、クラリネットが中心の曲だったような気がします。
・哀しみの日々 Days of Sadness
曲の出だしがきれいなハープの音色でした。それからヴァイオリンのメロディーが入り込んできて、といったような感じでタイトルにあるように哀しげな曲です。ただ、この曲がレクイエムかどうなのか、ちょっと疑問に思いました。哀しいけど、美しすぎるメロディーはレクイエムにするにはもったいないし、もう一曲、レクイエムっぽい曲があるので、そちらの方がそうなのかなあなんて…
そうそう、この曲中に気づいたのですが、すぎやまさんがタクトを持っていなかったんですよ。いつのまにかタクトを楽譜台かどこかに置いておいたんでしょうね。両手を思い切り動かしつつ、指揮を振るっていました。
・憩いの街角〜パラダイス〜時の眠る園〜うたげの広場〜憩いの街角 Strolling in the Town
まず、『憩いの街角』という曲ですが、ヴァイオリン主体の文字通り"街"での曲でしょう。さほど目立った曲ではないんですが、ドラゴンクエストの"街"の曲はすばらしい曲がそろっていると思います。この曲も非常にすばらしいなぁと、すぎやまさんの力に感服するばかりです。メロディーだけを考えると今作ナンバーワンなんじゃないかなあと勝手に思っています。
そして次の曲に『パラダイス』が来ているんですが、これは"カジノ"での曲でしょうね。ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、コントラバスの弦楽器の全部がピチカート奏法(弦を指ではじいて音を出す奏法)で、かつドラムなんかが入り込み、非常にノリの良いかっこいいナンバーでした。この曲中ではコントラバスの方がノリノリでピチカートをしていたのが印象的でした。
次に歌い上げられた『時の眠る園』ですが、この曲、さっぱり覚えてません。チェロ主体の静かな曲だったような気がするんですが、確かめてみないことには分かりません。
そして今度は『うたげの広場』という曲ですが、曲中、非常にパワフルな場面があっていい感じの曲でした。最後にまた『憩いの街角』が繰り返し披露されていました。
またまた3曲終わった後、盛大な拍手が起こり、それが鳴り止むと同時にすぎやまさんが話し始めました。
「これまで、I〜VI、そして今回、VIIが出るわけですが、これまでの作品の曲が、"何とかマスタリング"とかで(笑)、新しくなって発売されます。会場でも売っておりますので、もしよろしければご購入いただければと思います。」
皆さん、このひと言に拍手で答えます。皆さん、ロンドンフィルハーモニー管弦楽団によって命を再び吹き込まれた『交響組曲ドラゴンクエストシリーズ』、買って損は無いです。それまでのCDとは全然、パフォーマンスが違います。すぎやまさん曰く、「彼ら(ロンドンフィル)の演奏に匹敵するくらい(PlayStation音源で作るオリジナル曲を)細部まで全部歌おうとすると、1曲作るのに5年かけても大変かな。<DTM Magazine 2000年9月号より>」というくらいですし、世界中のオーケストラでトップ5には入ってくるだろう方々です。また、SBM (Super Bit Mapping)という技術でCDの音質自体もよくなってますので、是非、買って聴いてみて下さいね〜(個人的に宣伝…(笑))
CDの宣伝を終えたところで、すぎやまさんは「それでは前半最後の演奏です」とおっしゃって、タクトを取られました。
・失われた世界〜足取りも軽やかに Memories of a Lost World〜Moving through the Present
まずは『失われた世界』ですけど、クラリネットの音色が鳴っていたような記憶があるのですが、はっきりとしたことは分かりません…(汗) 静かな曲であったような記憶もあるんですが… 皆さん、CDを買って確かめてみて下さいね。
そして『足取りも軽やかに』です。この曲は"フィールドマップ"での曲でしょう。トランペットのメロディーが楽しげに流れていきます。メロディー的には生死をかけた冒険って感じではなくて、仲間が揃って楽しげに冒険に出かけていくような感じのする曲ですね。この曲もかなり人気があって、よしむらさんなどもお気に入りのようです。確かに楽しげで良いですよね〜
・迫り来る死の影 Shadow of Death
おそらく"洞窟"での曲だと思います。出だしがチェロから入って、それから徐々にヴァイオリンにメロディーが移っていくような感じの曲だったと思います。これまでの洞窟系の音楽の雰囲気をそのまま残したような、「うん、ドラクエの洞窟だなぁ…」と感じられる曲でした。ただ、この曲、洞窟といえどかなり長くて、曲中、ヴァージョンの違う曲が紛れ込んでいたような気がしたんですが僕の気のせいでしょうか… ただ、この曲を聴いていた時、喉が痛くなってきて、咳をするのを我慢していました(笑)。前回の久石さんのコンサートでも同じようなことがあったし、コンサートにはのど飴を持っていった方が良いんでしょうね。
・血路を開け〜強き者ども Fighting Spirit〜World of the Strong
多くの人々が注目しているだろう、"戦闘"の曲です。テレビやインターネット、はてまてゲームショーなどで戦闘の曲を聴いた人たちの間では、「今回の戦闘の曲はイイ!」という評判があっただろうと思います。僕自身、ソニーミュージックのホームページで初めて戦闘の曲を聴いた時は、出だしは迫力があって良いんだけど、そのあとのメロディーに迫力が無いかなぁなどと思っていたんですが、実際にその曲『血路を開け』を聴いて見ると… やられました…(笑) 他の曲と較べると迫力が全然違うじゃないですか! この曲はオーケストラをフルに使ったような豪華な楽曲ですね。それにドラムが絡んできて、激しさが増した感じになり、その上、全部の楽器がそれぞれ持つポテンシャルを生かして、可能な限り出せるだけの音量で演奏するものだから、驚きと興奮に満ちた曲でした。16ビートの出だしってのは大体お決まりなんですが、力を入れる音と抜く音が交互に入り混じって、今までとは違った感じがしていました。曲中でもヴァイオリンなんかがかなりの力を込めた演奏をして弦楽器が引っ張るというのは基本的に変わりは無いんですが、そこに管楽器(トランペット、ホルン、トロンボーン)が力強く音を出せるアレンジというのがすぎやまさんの上手さなんでしょうね。メロディーでは先ほど、『憩いの街角』がナンバーワンと言ったんですが、楽曲全体を考えるとこの曲がイチ押しです。仲間を励ますような感じでもあり、鼓動の速さを伝えるようなものでもあるこの楽曲は必ず一度はオーケストラで聴いて欲しい一曲です。
次は『強き者ども』という曲ですが、これはおそらく"中ボス"あたりの曲でしょう。この曲も前の曲と同様にかなり激しい曲です。シンプルなメロディーに、ドラムが入り込んできて、身体に直接響いてくる曲です。トロンボーンなどの低音の楽器が強い音を出していました。
前半最後の曲が終わり、盛大な拍手が送られる中、すぎやまさんは舞台上で笑顔でお辞儀をしたり、観客に向かって両手を握ってパフォーマンスをしたり、神奈川フィルの方々に向かって拍手をしたりといろいろアクションをされ、2度ほど入退場を繰り返されていました。その間、拍手は全く鳴り止みません。ということで、前半終了です。
休憩中、ドラゴンクエストのプロデューサーである千田幸信さんをお見かけしました。ピシッとスーツを着込んで、風格を漂わせるというか、落ち着きを感じさせるような方でした。と言ってもかなり離れていたところから観ていたので、実際にそうなのかと言われると困るんですが、多分そんな感じの方でしょうね。