コンサート後半その2『へ!?(驚)』 編)

    さて、次の曲は「アシタカせっ記〜交響組曲もののけ姫より(作曲・編曲 久石譲)」です。ところが、まだピアノが舞台の奥の方にあって、前の方に出てくる気配がありません。これから久石さんの曲が目白押しなのに、おかしいなあと思っていたら…… 久石さんが出てきた姿を見て、本当に「へ!?」と驚きを禁じ得ませんでした。久石さんが、手に「白い棒」を持って出てきたのです。もしや、あれは…タクト(指揮棒)!? 何と久石さん、指揮者として登場してきました。今までのコンサートで指揮をやったことなんて聞いたことなかったので、本当に驚きました。一度見たことがあるといえば、NHKでの「人体3」の紹介番組で鉛筆を持って指揮をした久石さんくらいです。そう、オフィシャルのダイアリーで「渋谷へ買い物に行く久石さん。『ついに買ったぞ!』と手にしてきたモノは…。値段を聞いたらアララ、700円とずい分リーズナブル。ちなみにソレを入れるケースは3,000円もするとのこと。 」とあり、また音の出ない楽器というのは、そう、タクトのことでした! でも指揮棒って700円で買えるものなんですか〜 もう少し高いような気もするんですけど、ま、そんなに使わないので(笑)、安いものでも良いと思われたのかも知れないですね。それにしても、久石さん、この指揮に向けてずい分練習をしたようです。オフィシャルのダイアリーを見ているとそんな感じがします。で、実際の指揮の方なんですが、指揮初心者とは思わせないほど上手い! ピアノ同様に非常に力強い指揮でした。演奏も同様に力強く、本当に素晴らしかったです。特に僕が感じ入ったのが、曲の最後。徐々にオーケストラの音がヴォリュームダウンしていくところが、こんなに綺麗に、しかも安定した音を保ちながら消えていくのか、とその東京シティ・フィルのテクニックに感服していました。これまでオーケストラなど生で聞くことなんてなかったので、これほど綺麗な音色を奏でるとは全く知りませんでした。もちろん、演奏が終わった後は拍手のあらし。久石さん、指揮台から一度降りて客席に向かって一礼をされるとすぐに次の曲に入ります。

アシタカせっ記
〜交響組曲もののけ姫より〜
ご存知の通り、1997年公開の宮崎駿監督作品「もののけ姫」のエンディングテーマです。監督曰く「(エンディングの)スタッフロールは見なくてもいいので、目を瞑りながら聞いて欲しい」という曲です。「交響組曲もののけ姫」はCDが徳間書店より出ています。演奏はチェコ・フィルです。

    「Gene NHKスペシャル『人体III』メインテーマ(作曲 久石譲/編曲 三宅一徳)」です。そう、この曲も指揮が久石さんです。CDに入っているこの曲の出だしはもちろんピアノから入っているんですが、今回はピアノではなく(というより、ピアノはこの曲には使われていない)、フルートから入りました。この曲、編曲が久石さんではなく、他の方がされていたんですが、特に久石さんのそれとは変わりなく、非常に力強い演奏がなされました。オーケストラから発された音が身体に響いてくるのがひしひしと感じていました。曲のラストも非常に綺麗で、本当に素晴らしい演奏でした。そして久石さんの指揮も素晴らしかった! これでは指揮の金洪才さんも顔負けです。演奏が終わった後、久石さんは私たちに向かって一礼をし、マイクを取って、舞台むかって右側に立ってお話を始めました。

Gene
〜NHKスペシャル「驚異の小宇宙・人体III」遺伝子・DNAより
これはNHKで1999年に放映された、NHKスペシャル人体シリーズ第3弾のテーマ曲です。これまでのシリーズも久石氏が担当されており、非常にファンにとっても注目されていました。今回、初めてコンサートで演奏されました。


久石さんの指揮の姿 想像図(笑)


「えー、舞台変換のため、ちょっと話をしようと思います。」
久石さんが話される間、ピアノが舞台中央に用意されたり、マイクが用意されたりとスタッフの方々がいそいそと準備をされる中、久石さんは話されます。
「まず、指揮者の金さんをお呼びします。」
すると、金さんが舞台そでより来られました。拍手で迎えられます。
「今までレコーディングの時に少しだけ指揮をやったことはあったのですが、このようなコンサートでオーケストラの指揮をしたというのは初めてです。」
そうおっしゃる久石さんに、金さんが「どうでしたか?」と聞かれました。
「本番前に、トイレに2回行きました(笑)。」
と話され、会場に暖かな笑いが起こりました。確かに緊張するでしょうね。初めて本職ではない指揮を披露するわけですから。何か、指揮って誰にでも出来そうな感じがありますよね。僕にも出来そうな感じもあるんですが、やっぱり奥深いものがあるんでしょうね。そして、久石さんは逆に金さんに一つ質問をされました。
「みんな、音の出る楽器を持っている中で、1人だけ音の出ない棒を持つというのはどのような感じなんですか?」
その答えに金さんがこう答えました。
「これだけのプロの方がいて、僕は300円くらいのこれ(タクト)で交通整理をするだけですね。」
そうすると久石さんは、
「東京シティ・フィルの皆さんが上手いから、僕の指揮でも上手く聞こえますよね(笑)。」
と話されました。また久石さんが話を続けます。
「指揮者と映画の監督は似ていますよね。リュック・ベッソンもこの間会って話したとき、『自分は何も出来ないから監督をやるんだ』と言っていました。でも、監督も指揮者も最後にはどうするかといった判断をしなければならないんですよね。」
との話に金さんもうなずきながら、
「タクトを振っているというだけでも、結局最終的には僕が決めていかなくちゃいけないんですよね。」
と話されました。

    そろそろ舞台転換も終わり、話も次の曲の振りになってきました。
「えー、3曲目の『Madness』は紅の豚で飛行機が飛び立つシーンで使われており、非常に前向きな曲ですので…」
と非常に苦し紛れの説明(笑)をされていました。この曲については、コンサートの始まる前に、nezさんのフォーラムに来られ、僕がメールを良くやり取りさせてもらっている渋谷さんと話している最中、「今回のコンサートで『Madness』はさすがにやらないでしょうね。」「いや、もっとやらないのは『DEAD組曲』ですよ(笑)。」と話していたんですが、何とまあ、久石さんは思い切って『Madness』を曲目に持ってきていたんですね。ま、「チャリティーだからといって肩肘張らない」といった久石さんのスタイルが出ていると言っていいのかもしれません。また、久石さん、話を続けました。
「これからの3曲は、(指揮は)初めてでしたっけ?」
「いや、『Sonatine』と『HANA-BI』は初めてですが、『Madness』はソロアルバムの方(Joe Hisaishi Symphonic Best Selection)でやっていますよ。」
とのやり取りがありました。確か、CD「Symphonic Best Selection」は8年くらい前のものなので、すっかり忘れていたんでしょうね(笑)。

 

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