コンサート後半その1(本田さん編)

16:09
    さて、開演を知らせるチャイムの音が会場に鳴り響いてからずい分立ってから東京シティ・フィルハーモニー管弦楽団の方が入場してきました。全ての方が入場し終わると、前半の時と同じようにヴァイオリン奏者の方が、今度は立ち上がってヴァイオリンの音を出し始めました。それにしたがって他の皆さんが音あわせをし始めました。その後、徐々に会場が暗くなってき始め、それに伴ってオーケストラの音あわせの方も徐々にヴォリュームが下がっていきました。またやってきた静寂の………「はくしょん!!」…(笑) 静かになってきたときに、思いっきりくしゃみをされた方がいました。静かな時にくしゃみをするとかなり目立つんですよね(笑)。やっちゃった方、かなり恥ずかしかったんじゃなかったでしょうか。

16:12
    そんなことも一段落し、改めて会場が静寂を取り戻した時、今回ヴォーカルを担当されている本田美奈子さんと、指揮の金洪才さんが舞台に入ってきました。本田さんは真紅のドレスを身にまとっていました。もちろん、盛大な拍手がおふたりに送られました。本田さん、軽く会釈した後、早速1曲目を始められました。「つばさ(作詞 岩谷時子/作曲・編曲 佐藤俊彦)」という曲です。確か出だしの歌詞が"太陽にきらめいて 夢おいかけたとき……"っていう感じだったと思います。途中、ヴァイオリンのソロ部分もあったんですが、何と言っても本田さんの歌は、華奢な身体に似合わず大声量で、それであって非常に歌も上手い。こんな方がなぜメジャー級の方ではないのか、また僕自身存じ上げなかったことが非常に恥ずかしいなあといった思いが僕の中に起こりました。そして、最も驚いた瞬間が、本田さんが声を張り上げ、その声を長く伸ばす場面があったのですが、何とその声が信じられないほど続く、続く!! 舞台で活躍されているということでヴォイストレーニングはされていると思うんですが、それにしてもあの安定した音量が、何と30秒ほど続いたのです! これは何と言っても僕の中では驚きでした。今、テレビで人気がでているアーティストで、こんなに声が出る人がいるのでしょうか? 生半可なアーティストが多い中、僕の中で「この人は『プロ』だな」と思わせるテクニックの持ち主でした。あの腹の底から声を出すような感じの声はホントにすごかったです。コンサートに来られなかった方にもこの部分だけでも生で聴かせたい、それほど価値のあるものだったと思います。また、これも舞台活動をされていることからだと思いますが、かなり大きなボディランゲージを交えながら歌を歌い上げるといった感じでした。もちろん、歌が終わった後には盛大な拍手が送られました。僕の近くに本田さんファンと見られる人がいて、手を頭上に挙げながら拍手をされている方も見受けられました。

    そして2曲目「ヴォカリーズ Op.34, No.14(作曲 S.ラフマニノフ)」です。この曲は歌詞がなく、本田さんは「Ah....」と歌うのみ。何か物悲しげな曲で、その曲を本田さんは朗々と歌い上げました。曲中では、今度はものすごく高くあがっていく音があったのですが、やはりプロは違いますね。力強くも綺麗な声が出ていました。そして2曲目が終わると、本田さんはマイクを取って話し始めました。

「緊張しているんですけど…(笑) 最初、事件をニュースでみた時、ビックリしすぎて嘘ではないかと、とても信じられませんでした。被害に遭われた方にどうすれば協力できるかを考えて、今回、このようなことに参加できて、嬉しく思います。今回のコンサートでわずかながら被害者の方の力になれればなと思っています。」

と言葉じりとかが微妙に違うとは思いますけど、このようにおっしゃっていました。それにしても、普通に話す声と、歌を歌っている声が全然違いますね。普通の声はとてもかわいらしい声と言いますか、普通の女性って感じなんですが、歌を歌うとなぜこうも変わるんでしょうね。アイドルだったという時代の面影が残っているのでしょう。それはそれでまた良い事だと思います。

    続けて、本田さんお話をされます。

「最近あった嬉しいことを話したいと思います。ミス・サイゴンの舞台をやったときにもらった花がなかなか咲かなかったのですが、私の母がその花に向かって毎日呼びかけていました。呼びかけたことによって、頂いた花が花を咲かせました。それが最近の嬉しいことです。今度は私の歌で、ちょびっとでも元気になる人がいれば嬉しいなっと思います。」

    そう話された後、「ミス・サイゴンより『生命をあげよう』(作詞 RICHARD MALTBY, JR&ALAIN BOUBLIL/訳詞 岩谷時子/作曲 CLAUDE-MICHEL SCONBERG/編曲 WILLIAM B.BROUN)」が始まりました。全く普通に話されているときの人格とは違う、別人格の人が乗り移っているのではないかと思われるほどの力の入った歌声で、マイクがあるとはいえ、オーケストラの音が本田さんの声に負けているようなそんな感じを受けました。オーケストラをバックに歌を歌っているのではなくて、まるで一舞台女優として"演技"をしているかのようでした。そして音楽が終わると一斉に拍手が起こりました。なかなか拍手が収まりません。一度本田さんは舞台袖に下がりました。icemanさんのお話だと、この時本田さんは感極まって舞台袖で泣いていたそうです。その後、拍手が鳴り止まず、スタッフの方に促され、涙を拭いてから舞台にもう一度出てこられました。客席に頭を下げて、また東京シティ・フィルの方々にも感謝し、指揮者の金さんと一緒に舞台袖に下がっていきました。

 

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