携帯でのひととき

「勇者の仲間たち」が終わると一斉に拍手がなり始める。また、今回の拍手もかなり力強いもので、すぎやまさんもかなりの手応えをつかんでいるようだった。

「どうもありがとうございます!!」

ようやく、すぎやまさんが第一声を発し始めるところで、拍手がやむくらいなのだから、すぎやまさんがステージ上で満面の笑みを浮かべているのは容易に想像できるだろう。

「えー、それにしても最近はドラゴンクエストの曲を着メロとして使ってくださる方が多くて嬉しい限りです」

そんな話をしたところで、客席から大きな笑い声が… 特に笑いどころではなかったはずなのだが、すぎやまさんは構わず続けて話し始める。

「で、入っている曲をいろんな方に聞くと、これまたおもしろい。多くの曲を使って頂いているようなのですが、特に"デロデロデロ……"っていう呪いの曲が入っているんですよね(笑)」

会場からも笑みがこぼれる。

「恋人からとか、友人などからの着信には『おおぞらをとぶ』なんかの綺麗な曲を設定しておいて、呪いの曲は何に使うのかというと… たいがい仕事の電話の時!(笑)」

この一言には会場大ウケだった。私も笑ってしまった。

「"そんなので良いのか?"と思うんだけどね(笑)。こんなようにいろんな場面で着メロが使われているんですが、そんな中、先日質問を頂きました。着メロのメロディーと、原曲のメロディーのキー(調)が違うようなんだけど、それで良いのかって。間違っているのではないかと、話を頂いたわけです。

そのことについてお答えしようと思います。携帯電話は機種によって、出せる音の範囲、私たちはそれを"音域"と呼ぶんですが、その音域の幅がそれぞれ機種によって違うわけです。そのため、原曲のキーで表現しようとすると、高い音が出なかったり、低い音が汚くなったりもするわけ。だから、機種によってキーを調整するわけです。キーをずらしたとしても、音として確かにズレてはいますが、メロディは全く変わらないわけで、音楽の本質としてもさほど影響がでるというわけではないと思うんです。ということで、機種によって綺麗に聞こえるように調整しているんだと思っていただければなと思います」

この質問については、リンクを張らせて頂いているみぎーさんのホームページ「みぎー工房」の掲示板に質問された内容だったのだが、コンサートでその答えをすぎやまさんが直接答えられたという形になったわけだ。

「それじゃ、次は… 『街でのひととき』と『勇者の故郷から馬車のマーチ』と続けて演奏します」

・街でのひととき In a Town
この曲は主人公が訪れるであろう街々で、様々なことを見たり聞いたりするわけだが、それらをフューチャーする曲で、場面に応じて数曲、作られている。

(街)
街並みを歩いている時に流れている曲。出だしがヴァイオリンで始まりとても綺麗。ヴァイオリンからフルート、チェロへメロディが流れてゆき、ゆったりとして、そしてのどかな街の様子が目に浮かんでくる。

(楽しいカジノ)
文字通り、カジノでスロットやポーカーなどを楽しんでいる場面で流れる曲だ。トランペットやホルンなどが表立って、軽快なメロディを聴かせてくれる。途中でゆったりとした曲調になり、途中で「コン」と音が響くシーンが、独特の雰囲気を醸し出してくれる。そして、フィナーレにスロットなどで大当たりをしたときに流れるファンファーレがにくいほどすばらしい。

(コロシアム)
先ほど、「おてんば姫の行進」の曲説明の際に、姫が力試しに行くと書いたが、その力試しを披露するコロシアムにて流れる曲だ。曲の冒頭はヴァイオリンやフルートなどで、コロシアムへの参加者の気持ちが張りつめている様子を表したような感じになっており、厳かな曲調になっている。そしてその後、決心をつけて前へ歩みだすかのような力強いメロディーを金管楽器が奏でてくれる。

(街)
そして、再び街のテーマで曲を締めくくる。前回のドラゴンクエストのコンサートレポートで書いているのだが、すぎやまさんの「街」を表す曲は、目立つ曲ではないものの非常にメロディアスで良い曲が揃っている。こういう、普段なかなか気にすることの出来ない日常の場面を表すことのできる作曲家は、そういるものではないだろう。

・勇者の故郷〜馬車のマーチ Homeland〜Wagon Wheel's March
この「ドラゴンクエストIV 導かれし者たち」は物語が五章構成になっており、最後の第五章で初めて主人公が登場するわけだが、その第五章の旅の途中で流される2曲だ。

(勇者の故郷)
まず、この曲が使われる場面の説明をしておくと、主人公は天空から授かった子供だったのだが、様々ないきさつからそのことを本人には伝えられず、主人公は何も知らずに辺鄙な村に住んでいた。しかし、魔族がその主人公を抹殺しようと村に現れ、村中の住人を片っ端から殺し、主人公の幼なじみも主人公を守るために殺されてしまったのだ。主人公はというと、生まれたいきさつを聞かされた後、将来の村の希望として、隠し部屋に入れられ、何も反抗をすることができず非常に苦い思いをしたのだ。

その後、その魔族に敵を討つために旅をしだすのだが、もちろん孤独の旅で、曲の冒頭には非常に悲壮感が漂うフルートの音色が流れ出す。非常に哀しげながらも、フルートからヴァイオリン、ホルンへとつながる曲の過程によって、主人公が遠くを見つめて、何か決心をしたような、そんなメロディラインを感じられた。

(馬車のマーチ)
主人公を含めて、いわゆる導かれし者たちが揃って旅を始める際に流れる曲。この曲は冒頭、トランペットが勇壮にメロディを奏でるわけだが、音も割れず、綺麗な音色を響かせてくれた。そして、曲の途中からすべての楽器がフルスロットルで音を鳴り響かせる。この重厚なサウンドはやはり生で聴くに限ると素直に感じた。

 

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