a Wish to the "ETUDE"

・夢の星空 〜ソロアルバム『ETUDE -a Wish to the Moon-』より〜
楽曲紹介が終わり、拍手のボリュームダウンとともに、ステージ上の照明も落ちていった。完全に照明が落ちると、ステージ上に設置されていた青い色の淡い照明が、あたかも夜空とそこに瞬く星空のように、暗い会場内からステージを浮き上がらせた。幻想的な雰囲気。そんな中から、ピアノソロの音が会場内を包み込んだ。

この曲は2分半ほどの短い曲なのだが、この会場の雰囲気と、曲のゆったりとした感じと相まって、もっと長かった印象がある。ゆったりとした曲調の中にも、メロディの芯の強さがあるように私には感じた。CDのライナーノーツを読んでいただくと分かるだろうが、CDのジャケットデザインは、この曲をイメージしたものだろうと思われる。ひとりだけで孤独な世界をゆっくり歩く。周りには何も無いかも知れない。でも、自分をしっかり持って歩めば、何か見つかるんじゃないかということが表されているのだろう。きれいな星空をふと見つけただけでも、「またこれからもやっていける…」という気持ちになるかも知れない。

そんなことを想うと、もしかするとこの曲は、このアルバム『ETUDE』の影のテーマ曲なのだろうか。

・Bolero 〜ソロアルバム『ETUDE -a Wish to the Moon-』より〜
軽快なピアノの音色が続いていく。そこにチェロのゆったりとした重く力強い音が入ってきて、何となく相反するような音色と音色が徐々に混ざり合い、ピアノの音もチェロにつられて低くそして重くなっていく。そこで新たなハーモニーが生まれる。

曲中、『月に憑かれた男』と同じように、ピアノの手が休む場面で、久石はまた半身を乗りだし、感情豊かにチェリスト達を一つの到達点へと導いてゆく。


・a Wish to the Moon 〜ソロアルバム『ETUDE -a Wish to the Moon-』より〜
久石のコメントにもあったように、キリンのビール「一番搾り」のテレビCMにて使用されている楽曲がこれである。楽しげなメロディがピアノからまず繰り広げられた。まさに、月でウサギが踊っているような曲調だ。その月に無理難題な願い事をかけて、月に「あるか、そんなモン!」と言われてしまうといった感じで、終始アップテンポな感じだ。

きれいなピアノとチェロアンサンブルの音が心地良いなと思っていた矢先、不意に口笛が聞こえてきた。チェリストたちが、久石のピアノの伴奏に合わせ、指を鳴らしながら口笛を吹いている。この不意打ちは非常に嬉しかった。そう、テレビCMでは口笛での演奏ヴァージョンが使われているため、「なるほど」と納得された方も多かっただろう。チェリストたちも、ノリながら口笛を吹いているようだった。


演奏の最後の音が消えた直後から、会場から一斉に拍手が送られる。その拍手に笑顔で応える久石譲。その直後、マイクを手にとって話し始めた。

「そうそう、さっき言うのを忘れていました。うつくしま未来博で作られた『4 MOVEMENT』なんですが、これがDVDとCDサウンドトラックがセットになって発売されています。未来博の会場では、この作品はメインスクリーンとウォータースクリーン2面の計3面で上映されていたんですが、それを1面に再編集して作り直しました。

先ほど、『View of Silence』という曲を演奏したのですが、この曲は以前から人気がある曲で、今回『4 MOVEMENT』のDVDのエンディングに使われています。今回、『4 MOVEMENT』はDVDと一緒にサウンドトラックもついていて、そのサウンドトラックに収録されていますので、聴いてみてください」

当日、郡山の会場でも、この『4 MOVEMENT』のDVDが販売されていた。販売所では、休憩中やコンサート直前直後はずいぶんの混みようで、かなり売り上げられていたようだ。

 

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