ENCORE そして…

静かな時間。いよいよアンコールである。久石さんはピアノの前で、目をつぶり集中されている。ステージ上のライトも落ち、久石さんとピアノにスポットライトがあたる。いよいよだ……

と思いきや… 会場の奥の方から携帯電話の呼び出しの着メロがなり始めた。久石さんがその音に気づき、渋い顔をしながら会場の方を向く。会場内、全く静かな雰囲気になっていたので、非常に目立つ。会場から笑い声が漏れる。久石さんの曲の着メロだったら良かったのかも知れないが、流れていたのは確か浜崎あゆみさんの楽曲だったと思う。

そして、その着メロを止めようと必死にボタンを押す「ピッ、ピッ!」という音も会場内に響くものだから、会場内は大爆笑である。たまらず久石さんがマイクを持ってひと言。

「ドコモの携帯電話は電源を切りましょう!(笑)」

このひと言に会場内は大ウケで、拍手が起こった。私は見逃してしまったが、久石さんは「決まった!」と思ったのか、小さくガッツポーズをしていたようだ。ただ、この着メロを鳴らした携帯電話、ドコモの携帯だったのかどうかが気になるところだ(笑)。にしてもアンコール前のちょっとしたアクシデントを笑いに変えてしまったが、やはりコンサート中は、携帯電話の電源を切るか、少なくてもマナーモードにはしていただきたいと思う。

一段落した後、改めてアンコールが始まる。

・Summer
北野武監督作品「菊次郎の夏」のメインテーマを、ピアノソロにアレンジした曲で、ソロアルバム『ENCORE』の1曲目に収録されている曲である。この曲は、このコンサートの直前に2回ほどテレビの生番組に久石さんが出演された際に演奏されていたのだが、かなり弾き間違いがあり、少し心配していた曲だった。しかし今回の演奏は大きなミスも無く、綺麗に弾かれていた。ところがこの曲の途中、新日本フィルハーモニー交響楽団のコンサートマスター豊嶋さんが、口にハンカチを押さえながら咳をしているのを見逃さなかった(笑)。ふと、近いところから咳の音が聞こえるなと感じていたが、まさかステージ上からというのは思いも寄らなかった。豊嶋さんも「しまった」というような表情をちょっとされていたようだ。演奏者の方にのど飴を忘れずに、と言ったところであまり意味が無いかも知れないが…

にしても、曲を良く聴いてみると『ENCORE』とは若干、アレンジが微妙に変わったりしているところもあったりするのだ。特に曲のラストの部分などは、CDでは音を綺麗に伸ばしているが、今回のコンサートでは「ジャラジャラジャラジャラ〜」という弾き方(名称が分からない)をされていた。

・魔女の宅急便
宮崎駿監督「魔女の宅急便」からの曲だ。話を聞くところによると、いろんな曲が混ざっていたようだ。てっきり「海の見える街」だと思っていたが、全くそうではなかったようだ。サントラだと「旅立ち」のようだが、久石さんのソロアルバム「Symphonic Best Selection」にもオーケストラの曲として収録されており、どちらかというとそちらの方だと言った方が良いのかも知れない。

・MADNESS
宮崎駿監督「紅の豚」からの挿入曲だ。元々はソロアルバム「My Lost City」に収録されていた曲だが、宮崎監督が気に入り、「紅の豚」にも使ってしまったというエピソードの曲で、久石さんお気に入りの1曲だ。この曲は、コンサートで欠かしたことは一度も無いだろうと思う。この曲も「Kids Return」同様、力強い曲で、「ジャーン!」という音とともに曲が始まり、「ジャーン!」という音とともに曲が終わる名曲だ。


「MADNESS」が終わり、最前列を占めていた私たちはスタンディングオベーションをしていたのだが、その後ろの多くの観客の皆さんはどうだったかはよく分からない。2人ほど立っていらっしゃったのは見えたのだが、ほとんどの方は座りながらの拍手だったと思う。地方では仕方がないのかも知れない。特に福島県人はシャイな面があり、また今回のコンサートは抽選ということもあって熱烈なファンが来ているというわけでもなく、スタンディングしての反応はあまりみられなかった。

久石さんはまた舞台袖を何度か行き来された後、最後に客席に向かって深くお辞儀をされた後、コンサートは終演した。しかし、私たちのコンサートはまだ終わってはいなかった。最後に、久石さんを出待ちするというのが残っていたのだ。

ちょっと市民文化センター内を彷徨い、外に出るのに手間取っていたが、文化センターの裏口に回ると、すでにタクシーやハイヤーが用意されていた。僕らが着いた直後に、久石さんは黒い服装に黒い帽子をして出てこられた。出待ちをするということで、とりあえず色紙とマジックを用意していたのだが、マネージャーの方が「ゴメンなさい! 電車の時間があるので…」ということで、サインはお預けになってしまった。

裏口から出てくる久石さんの姿が… (Photo by Tomoin Shibuya)

しかし、久石さんが「握手しよう、握手!」ということで、みんなに握手をしてくれた。乗り遅れそうになった私だが、何とか握手をしていただいた。「頑張って下さい! ありがとうございます!」と、何か訳が分からなくなって、いつもの事ながらろれつが回らなくなっていたのをまた覚えているが、しっかりと握手をしていただいた。それだけでも本当に嬉しかった。サインは次回に持ち越そうと思う。いつか、直接サインをもらおう!!

そうそう、ひとつ残念だったのが指揮の金洪才さんがいるのに気づいていたのに、サインをもらいに行けなかったこと… 指揮の金さん、あまり目立っていなかったので、他の方が全く気づかなかったらしい。そう、なぜか知らないが金さんの後ろ姿と、私の後ろ姿が似ているらしい。私自身もちょっと似ているなと思ったりしている。そんなことは余談だが…

………………

コンサートの直後、郡山に宿泊するファン仲間とともに飲み屋へ。いろんな話題で盛り上がっていましたが、このコンサートの後にアメリカのジュリアード音楽院にピアノ修行ということで留学される祐司さんに送る曲ということで、飲み屋備え付けのカラオケで、少し歌ってきました。「もののけ姫」… 声が出なくて歌えず… 何か送る曲を探して、徳永英明の「夢を信じて」を歌いました。祐司さんに送った色紙にも『夢』と一文字だけ書いたので、ちょうど合っているかなあと思っての選曲。この曲、実をいうと『ドラゴンクエスト』つながりの曲で、アニメ・ドラゴンクエストの主題歌になっていたから分かっていたくらいで、曲自体が流行っていたのか、いなかったのかは全然知りませんでした。話を聞くと、そこそこのヒット曲だったらしく、ちょっと驚いてしまいました。誰も知らないかなあと思っていたからなおさら。そういえば、もんぐさんが歌っていたあの戦隊モノの曲は何だったのでしょうか… タイトルはすでに忘れてしまったけど、あれは本当に面白かったです。歌詞を上手く変えていたし…

飲み屋から出た後、ホテルで朝までいろいろしゃべって(みんな、同じホテルに予約を取ったため)、結局睡眠時間は3〜4時間かな? みんな、朝はテンションが低かったのが印象的。特に夜、テンションが高かった人が揃ってテンションが低かったので面白かった(笑)。

次の日は郡山見物という予定だったが、去年(2001年)の夏のうつくしまナイトファンタジアを似たメンバーで来ており、その時に見物はすでに終わらせていたので、行くところがない。郡山周辺は多少百貨店とかのお買い物スポットはあるんですが、あとは何もないんですよ。そのため、ちょっと開成山公園の様子を見た後、ボウリング場で、ボーリングとビリヤードをやってきました。結果は… ご想像にお任せしましょう。

………………

そんな感じで、今回のドコモ東北「久石譲with新日本フィルハーモニー交響楽団スペシャルシンフォニー」は幕を閉じる。にしても、郡山は本当に寒かったが、コンサートは逆に暖かかったのが印象的だった。また、同じようなコンサートをやっていただきたいと切に願って、レポートを締めようと思う。

初校 2002/04/07 22:25 書き上げ

 

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