コンサート後半戦Part.2 LAST
『BROTHER』が終わった後、マリンバとクラリネットが退場し、ピアノ・ヴァイオリン・チェロという素朴な編成での『Two of Us』が披露される。
Two of Us
この曲も『Shoot The Violist』に収録されていますが、もともと大林宣彦監督作品「ふたり」のテーマ曲でした。何度も言うようですが、この曲は日本テレビ「バラ色の珍生」のテーマソングではありません(苦笑)。チェロのメロディーが心に響く、素晴らしい曲です。これこそ、久石メロディーと呼ばれるものなのでしょう。メロディーに関しては本当に久石さん、"匠"って感じがします。まさに映画音楽界の巨匠でしょう。
『Two of Us』の演奏後、久石さんが再び話し始めました。
「今度、映画をやることになりました。音楽ではなく、今度は監督です。」
このひと言に会場から大きな拍手が送られました。拍手が収まった後、話が続きます。
「タイトルは『Quartet(カルテット)』と言います。いい加減に作った四重奏団がコンクールに出てメタメタになり、その後そのまま社会に出て、辛酸を舐める。その後、カルテットを再結成してコンクールに再び出るという話になります。この映画にはもう一つ込めたいものがあって、主人公に現在の家庭の問題を持たせたいと思っています。最近、17歳の事件などがあるんですが、どれをみても父親の顔、存在が感じられません。父親の姿、これを家庭の中でちゃんともっていないといけないです。そんなような内容ですが、24、5歳くらい若者を中心に描いた青春映画です。そんなに難しくない爽やかな映画にしたいと思っています。今、出演者を決めていて、大体が決まったところです。来年の春あたりに公開できるだろうと思います。是非、ご覧下さい。」
ここでも盛大な拍手が会場から送られました。ただ、ここで気になったのが"音楽ではなく"という発言。音楽はやらないのかな、という意味に取られかねない話だったのですが、仲間内で話してみたら「やっぱり、音楽は他人に任せてはおけないでしょ」という話に落ち着きました。多分、久石さんが音楽を付けられると思います。
また、今後の予定について、話されました。
「夏に『Quartet』がクランクインし、撮り終わった後、TBSのBSの番組の取材でアフリカに2週間ほど行く予定です。そしてフランス映画の音楽をやることになりました。英語題では『Once apon a time(「昔々、あるところに」という意味)』と言います。フランス語にすると訳がわからなくなります(笑)。日本人は私しかいません。後はみんなフランス人です。大作です、ご期待ください!
その後、来年には宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」という映画があります。イメージアルバムとサウンドトラックを作る予定です。来年には『もののけ姫』に続く話題作になっているだろうと思います。『カルテット』ともども観に来てください。」
会場から拍手が送られます。
「こんな予定なので、もしかすると来年、コンサートは出来ないかもしれません。だから悔いのない演奏をしますので、皆さんも悔いのないよう聴いてください!(笑)」
会場から笑い声もちらほら出ましたが、「来年、コンサート無いの!?」と心の中で叫んでいた人もかなりいたのではないでしょうか? できればコンサートはやって欲しいものです…
次の曲の紹介に入りました。
「それでは、メンバーも全員揃って『Les Aventuriers』、そして最後の曲『Kids Return』です。お聴きください!」
Les Aventuriers(レザヴェンチュリエール)
この曲は「PIANO STORIES II -The Wind of Life- 」からの曲です。5拍子のテンポが素晴らしく、疾走感が会場全体を包みます。この曲ではクインテットでのそれぞれの生の音色が響いて非常に素晴らしい演奏でした。やはりこの曲の最後も、それぞれの楽器が綺麗に音を合わせるといった芸当を見せ、会場を沸かせました。
Kids Return
この曲もコンサートでは定番の楽曲でしょう。小刻みのピアノのビートから入る「Shoot The Violist」からの名曲です。元は北野武監督の同名作品のテーマ曲です。ピアノの力強さと、弦の力強さ、そして今回変り種のクラリネットの澄んだ音色、そしてマリンバのリズム。それぞれの個性が充分に発揮されたナンバーは、この上ない感動に包まれました。やはりこの曲のラストも、大きなアクションからの華麗な音さばきで、終了後、大きな拍手が送られたのは言うまでも無い。
盛大な拍手が送られる中、客席前方左側より、赤い服を着た女性が手に花束を持って立ち上がりました。僕たち、インターネットオフ会の仲間はその様子を見た後、顔で示し合わせてそれぞれの思いがこもった荷物を持って、舞台下に駆け寄っていくも… 何と待ちぼうけ…(笑) 2、3度ほど、久石さんたちが入退場を繰り返し、拍手が鳴る中、挨拶されるのを立ち尽くして待っているだけ…(笑) 本当のことをいうと、『Les Aventuriers』のあたりから「花束を渡さねば」という緊張感から心臓がバクバク言いはじめ、思い切って出てはみたものの、ちょっと出るのが早すぎたかなという結果になってしまいました。だけど、これによって一気に緊張が冷めました。結果的に良かったのかも…
僕は中くらいの花束とちょっとした地元福島のおみやげをもって、久石さんに対面。
「インターネットの掲示板で書き込みさせていただいています、ショーと言います。」
と、花束を渡しながら伝えたのですが… 肝心な名前を伝える部分で久石さん、花束を持ち替えたため、多分僕の言ったことがほとんど聴こえてなかったような気がします…(悲) 続けて、福島のおみやげをお渡ししようとしたら、久石さん、何と右手を差し伸べてきました! なんと、もう舞い上がってしまって、無意識のうちにその右手に、自分の右手を差し伸べてしまい、知らず知らずのうちに握手をしてしまっていました…(悲) これではまずいと思い、
「(福島県のうつくしま)未来博があるということで、福島県のお菓子を持ってきました。これからも頑張ってください。期待しています!」
と、一気に伝えてしまいました。久石さん、ちょっと微笑んで頷いてくれたかのようでしたが、何か天井からのライトが、久石さんの背中から入り込んでいたせいもあってか、何か神々しく感じて、「本当に久石さんの目の前に行ったのか?」「本当に久石さんと握手をしたのか?」というのが実感として沸かず、実際にどんな表情をされたか、はっきり覚えていないんです。ホントに、最初の花束野郎ということで舞い上がっていたのでしょうか? ちょっと残念ですが、これで次回も花束野郎をしたいなあと思った今日この頃でした。ただ、一つ覚えているのが手の感触。何か、優しく包まれるような感触でさすがピアニストだなあと思いました。