コンサート前半

    ちょっと小話って事ではないんですが、コンサート開演1時間ちょっと前に会場周辺を久石ファン仲間とウロチョロしていて(というか、座る場所を探すため喫茶店を探していただけ…)、とある喫茶店に入ったんですが、そこで女性と楽しく談笑されているコンサートマスターの豊嶋さん(と思われる男性)を見かけました(笑)。今回は誰がコンサートマスターで回るのかなあなんて気にしていたんですが、意外な場所で分かっちゃいました。でも、1時間ちょっと前ですよ? やっぱりプロだからこそ、ってことなんでしょう。

    さてさて、開場時間となりました。すると、ちょっと前には全く人気がなかったのに、急に長蛇の列が表れてビックリしました。で、会場内に入って、さっそくツアーパンフレットをチェック。いつものように1,500円。もしかすると、新日本フィルハーモニー交響楽団がメインのものとなるためパンフレットはないかもなあと思っていたんですが、通常のツアーと同じような感じで販売されていました。昨年(2003年)夏の時のパンフレットではフォトアルバムのようなところがありましたけれど、今回のパンフは通常の形式でした。

    パンフレットを眺めたところで分かったのは今回のツアーはプログラムAとプログラムBに分かれ、公演順にA、B交互に開催されるということでした。宮城公演がツアー最初の公演なので、この時点でいろいろと分かるところがたくさんありました。ちなみに大阪はスペシャルプログラムということでした。CD販売もされていました。CD販売では、ワンダーレコーズの「SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001」のジャケットが変更になっていることを確認しました。でも一番の売れ行きを見せたのは、さすがに「World Dreams」だったようです。

開演前のロビーのようす


開演
    さあ、開演です。定刻を若干過ぎたころにオケメンバーが入場。今回のコンサートマスターは、さきほど喫茶店で見かけた豊嶋さん。チューニングのあと、盛大な拍手に包まれながら久石さん入場。久石さんは燕尾服で登場。真っ白のワイシャツによく確認してなくて覚えていないんですが、蝶ネクタイみたいなものをしていたようです。久石さんはフィルをバックに深々と頭を下げて、サッと指揮台に向かわれました。

・World Dreams
    この曲は、新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラの祝典序曲として、久石さんが作られた曲です。本人曰わく、国歌のような厳かな曲に仕上げたということで、その曲が目の前に繰り広げられました。久石さんの力強い指揮から、"新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ"の音色が、日本で初めて繰り広げられたわけです。編曲はCDと変わりませんけれども、CDからはなかなか聞こえなかった音も聴こえてきて、かなり印象が変わりました。なかなか良い曲だなあと素直に感じることができました。ホント、この曲は生演奏を聴いて、また違った味わいを感じることができました。

・STAR WARS (作曲:ジョン・ウィリアムス)
    とにかく新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラの演奏がものすごい迫力でした。久石さんは力強い指揮に集中していました。

・シンドラーのリスト (作曲:ジョン・ウィリアムス)
   
コンサートマスターの豊嶋さんのソロ演奏がありました。豊嶋さんの演奏を生で体験したのは、2002年春のNTTドコモ東北のスペシャルシンフォニーコンサートだったんですが、さすがに素晴らしい演奏でした。ヴァイオリンソロは非常に綺麗でした。新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラのコンサートマスターはお二人いて、今回の豊嶋さんと、アルバム「World Dreams」でソロを務めている崔さんですが、どちらの方も非常に上手い方です。ホント凄い。ちなみにこの曲も久石さんは指揮に専念されていました。

・E.T. (作曲:ジョン・ウィリアムス)
    若干プログラムとは順番を入れ替えて演奏されたのが、スティーブン・スピルバーグ監督の名作「E.T.」。ハリウッド映画音楽の巨匠のひとりであるジョン・ウィリアムス氏の楽曲が3曲続いたわけです。同様に久石さんは指揮。とにかく指揮についてはかなり身体を動かし、力のこもった指揮をしてました。久石さんの独特な指揮のポーズがあって、一拍目で強い音が来るときには、その直前に右手と左手を左肩の上部に持ってきて、そこから両手を広げるような指揮を執ってました。ちょっと独特な振り方だなあと思っていたんですが、よく考えてみると久石さんが左利きだからそうなるのかなあとふと思いました。右利きは力を入れるときは右から左に力が流れますが、左利きはその逆の左から右に行きますからね。ちなみに、この日の久石さんはノータクトで振られていました。フリーハンドの方が指揮はしやすいんでしょうかねぇ。


    3曲が演奏されたところで久石さんのMCがはじまりました。
    力強く指揮をしていたため、手にマイクを持ちながら、最初に大きく「ハァ」と深呼吸をし、開場から思わず笑い声がもれました。そんな僕も思わず笑っちゃったんですが、僕が座っていた最前列に向かって開口一番「疲れてるんだよ!」とそれに反応(爆)。思わずビビリました(苦笑)。

    そんなこんながあって、いつもの如く「こんばんは。久石譲です。」と挨拶。その後、この新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラの説明がありました。2002年にあった東北ツアー(ドコモ東北スペシャルシンフォニー)の際にこの新日本フィルハーモニー交響楽団と回って、「一緒に何かしたいね」ということを話したのが、こうして現実になったんだという話をされていました。

    そうそう、燕尾服の説明がありました。せっかく「新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ」の音楽監督に就任して初めてのコンサートだから燕尾服を作ろうということになって、初めて作ったそうです。作る際に、「これであれば、アカデミー賞にも参加できますよ」と言われた燕尾服があったそうで、「じゃ、それ」と決めて作ったのが、今回の燕尾服だそうです。「アカデミーに着ていけるんだ」ということを強調されて、会場に拍手を求めていた記憶があります(笑)。

    また、楽曲「World Dreams」の説明がありました。オーケストラのために祝典序曲を作る上で、単にポップスオーケストラとしての活動じゃどうなんだろうと考えながら、この曲を作ったそうで、その時に頭に浮かんだのが「9.11」。いわゆるアメリカ・世界貿易センタービルの同時テロだったとのことです。最初は、パンフレットにも書かれてあるんですが、「Asian Dream Song」を書いたから今度は「World Dreams」ということになったらしくて、曲を書いていくうちに「9.11」が頭をよぎっていったらしいですね。

    そして、これもパンフレットには書かれていますが、「夏場のラーメン」のように、暑いときに熱い音楽を、というコンセプトで、自分の楽曲の演奏だけではなく、これまでやってこなかった他の人の作品もアレンジしてみたという話をされました。ハリウッド映画音楽は凄いと言われつつ、日本でも100億円くらいの制作費をかけた映画ができれば、自分でもこんな音楽作れるぞと言って、「拍手がないな〜」と観客に拍手を求めてました(笑)。制作費がそんなにでない日本の映画では、ハリウッド的な楽曲の作り方だと音が浮いてしまうのだとか。そんな中でも久石さんは独自の手法で、日本映画音楽の第一人者となっているわけです。少なくともヨーロッパではその音楽が認められていると思うし、ハリウッドを目指されなくても、僕は構わないのではないかなあとこの時は思いました(苦笑)。

    ハリウッドの話題から流れるように、かたや日本にも巨匠宮崎駿がいるという話を引き続きされる久石さん。宮崎監督と初めて組んで作られた映画「風の谷のナウシカ」から20年。20周年の意味を含めて、「ナウシカ」を演奏すると話されました。その後はハウルから一番力強い曲調の「暁の誘惑」、そしてボストンポップスから呼んだティム・モリソンさんの話に及び、彼のために書き下ろした「トランペットソロのためのラピュタ」をお送りすると言われました。


・風の谷のナウシカ (作曲:久石譲)
   
プログラムでは「風の谷のナウシカ」となっていますが、正確に言うなれば「風の伝説」でしょう。この曲で真っ先に思い浮かぶのは印象的なピアノの音色ですが、最初久石さんは指揮台に立って指揮をされます。その脇にはスタインウェイのピアノが備え付けられているものの、これまで全く演奏がなし。いつ使われるのだろうと思っていたんですが、この曲の終盤のピアノソロの部分では演奏中に指揮台から移動し、ピアノを演奏。この時、久石さんの手がかなり震えてました。指揮の疲れか、緊張からか。どっちもあるんでしょうけど。そして、若干曲が短めにされ、前半の久石さんのピアノはこれのみでした。

・「ハウルの動く城 イメージ交響組曲」より暁の誘惑 (作曲:久石譲)
   
パンチの効いた曲でした。久石さんの指揮もパワフルでした。アレンジ自体はCDのものと変更はなかったようです。

・天空の城ラピュタ (作曲:久石譲)
   
演奏前にティム・モリソン氏が入場。会場から惜しみない拍手が送られます。久石さんとティムさんが握手を交わされます。ティムさん、めちゃくちゃ背が高かったです。ステージ中央にて楽譜立てが立てられ、ティムさんはメガネをかけられて、トランペットソロを披露。ティムさんの演奏、非常に上手く綺麗でした。音は割れないし、やさしい音色だし。ティムさんの演奏は言葉ではなかなか言い表せませんよ。やっぱり生演奏だと、すぐそばでの感覚が残って、「おぉぅ」という思っちゃうところがあります。これは、会場に来られた方しか感じられない感覚ではないでしょうか。

 

    この曲で前半終了。拍手がかなり流れて、一旦舞台袖に下がったティムさんや久石さんが再度ステージに戻って挨拶されていました。コンサート前半からもう、仙台はハイテンションでした。

 

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