アンコール前半

コンサート最後の曲目が終わり、会場から盛大な拍手が送られる。久石さん、客席に向かって深々とお辞儀をされた。会場内からは、聴き取れなかったものの、久石さんに声をかけられていた方もいたようだ。『ブラボー』とでも誰かが声をかけられていたのかも知れない。とにかく、会場内から割れんばかりの拍手が起こっている。

久石さんは一旦舞台袖へ戻ったものの、すぐに引き返してきて、サッとピアノの前に座った。そうすると会場内の照明が消え、ピアノだけにスポットライトが当てられた。会場からの拍手がやみ、まもなく久石さんの手から音が奏でられた。

・Summer (encore)
アンコール1曲目は、北野武監督映画作品『菊次郎の夏』からピアノソロ演奏だ。現在トヨタ・カローラのCMで使用されている曲と言った方が分かる方が多いかも知れない。

久石さんのアルバム『Shoot the Violist』に同じ曲が収録されているが、今回演奏されたのはこの曲調に近かった。スタッカートの効いた感じで、非常に小気味の良く、力の入った演奏で、まさに『夏』と言った感じのアレンジになっていた。多少、演奏中にミスがあったようだが、演奏終了後、久石さんは満足げな顔をしていた。いや、ちょっと苦笑いをされていたのかも知れない…

ピアノの音が鳴りやむのを待って、会場から拍手が送られる。すると、久石さんはマイクを取られた。アンコール中にマイクを持たれるのもちょっと珍しいなあと思いながら、久石さんの声に耳を傾ける。

「えーと、次の曲はフランス映画の曲を演奏します。『Le Petit Poucet』という映画です。オリビエ・ドーハンという方が監督され、現在、フランスで公開されています。14億円をかけた、結構大きな映画です。カトリ−ヌ・ドヌ−ヴやロマ−ヌ・ボ−ランジェが主演し、テーマ曲はベネッサ・パラディが歌っています。ベネッサ・パラディは俳優のジョニー・デップの奥さんと言った方が良いかな?

映画の公開はいつ頃になるか、ちょっと分かりませんが、来年あたりになるだろうと思います。それでは、一足先に『Le Petit Poucet』、お聴き下さい!」

・Le Petit Poucet -Main theme- (encore)
久石さんの説明にもあったとおり、フランス映画を担当され、オリビエ・ドーハンという監督の映画作品『Le Petit Poucet』(久石さんは『レ・プチ・プセ』とおっしゃっていたが、正しくはどう発音して良いか分からない)から、メインテーマがアンコール2曲目として演奏された。

私自身、この映画のサントラをHMVから輸入盤ですでに購入しており、何度も聴き直しているため、良いアルバムだというのは知っていた。曲もかなりいい感じだ。私自身に文章の表現力が無く、具体的に言えないのが非常に口惜しいが、特にメインテーマなどは非常に荘厳な感じのする曲であり、曲自体に何か広がりがあるような感じがする。

今回のアンコールでのパフォーマンスでは、久石さんがピアノを担当されるため、アレンジはもちろん変わっていた。アルバムヴァージョンにはピアノの音はあまり表舞台には上がっては来ないのだが、今回はサビの部分などを担当したりと、久石さんのピアノが大活躍だった。そして曲の最後は、サントラとは異なって、『ジャーン』といった迫力のある終わり方をしていたように記憶している。

会場からは割れんばかりの拍手が起こるが、まだスタンディングオベーションは起こらない。久石さんは、新日本フィルの方々に起立をうながし、フィルの方々にも、指揮の金さんにも、そしてもちろん久石さんにも熱い拍手が送られた。再び久石さんは頭を下げられ、金さんと共に舞台袖へ消えてゆく。そして、もう一度ステージ上に戻ってこられた。場内はまだまだ拍手が続いている。ステージ向かって一番奥の2階席からは、久石さんに向かって手を振る姿が。久石さん、それに答えて手を振り返している。もう一度会場に向かって、久石さんは頭を下げられた。

そうすると、待ってましたと言わんばかりに花束を用意されていた方々がステージ前に集まり始められた。実の事をいうと、このホームページの常連の方はみなさんご承知だろうが、私も小振りな花束を用意していたのだ。てっきり、他の常連の男性の方々も用意しているものだとタカをくくっていたのだが、見事にはずれた。でも、とりあえず他にも男性の方がいらっしゃったので、ちょっと一安心だったが…

みなさん、思い思いに花束を渡されている。何かの贈り物を渡されている方、久石さんと指揮の金さんにも花束を渡されている方、お子さんと一緒に花束を渡していた方、いろんな方がおられ、花束を渡す順番を待ちながら様子を見ていた。もちろん、今、言った中には私が知っている方もいっぱいいるが、誰がどう渡したかは、ご覧になっているみなさんのご想像にお任せしようと思う。

…それだけでは寂しいので、とにかく私自身はどう渡したのかはお伝えしておこう。とある事情から花束を渡す順番が後の方になってしまった。コンサートをご覧になった方は、この話を読んで、「あ、あいつか…」と思われる方もいるだろうが… とにかく、小振りの青い包み紙にくるまれた花束を持って、久石さんの前へ。

「感動しました! ……それと、お誕生日おめでとうございます!」

と言ったはずなのだが、やっぱり舞い上がってしまって、良く覚えていない。とにかく、今年は小泉首相風に挨拶しようとは思っていたのだが… ただ残念なことに、思い切り口が回っていなかったのだけは覚えている……

「ありがとう」

久石さんは優しい口調で私に声をかけてくださり、握手をさせていただいた。前回の2000年のオペラシティのコンサートでも握手をしてもらい、そのときは非常に軽い握手で、ふあっとした感じだったのだが、今回は力が込められてはいなかったものの、大きな手でしっかりと握手をしていただいたような感じがした。

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