タイタニック映画評
タイタニック (100点満点中 77点)
内訳
ストーリー 8点 |
構成 8点 |
演出 8点 |
映像 9点 |
音楽 8点 |
エンターテイメント 8点 |
印象 8点 |
独創性 6点 |
関心度 4点 |
その他 2点 |
総合 8点 |
計 77点 |
評
まず全体的な感想から言うと、かなり良かった映画ではないだろうかと思う。さすがに評判になったものだけあって、読後感がさらっとしていた。ラブロマンス系の映画なのに、タイタニック号の沈没シーンといういわゆるアクション、そして階級の違いでの人との交わり、そして人間の欲(金銭だけではなく、自分の命も)がからむという、冷静に考えると多面性の持った映画であると言える。単にアクションに金をかけてどうのこうのとする映画よりは見栄えがよい。スッと観る分には非常に良い映画だ。
細かい面を見ていくと、良く考えると盛り場はあったのかなと疑問に思う。各所各所に感動的なシーンを盛り込んでいて、良いところもあったが、シーンが切り替わり船が音を立てながら沈没していく所になると、その感情的な心の動きが萎えてしまうように感じた。ラストも、サラッと過ぎてしまってボリューム感に欠けるような気がする。各所の感動のシーンが幅を利かせて、ラストがかすむような感じになってしまったのかも知れない。
また、主人公たち二人の心の動きももう今一つだったように思う。最初から中盤ぐらいまで「一緒に海に飛び込む」的な発想で死ぬときは一緒のような感じだった。しかし最後には「生き残れ。最後まであきらめるな。お前はベットの上で死ぬんだ。」みたいな感じに変わる。変わるのは良いと思う。けれども、そこまでの心の変化がちょっと描写しきれなかったのではないだろうか。確かに女性を守るために死を覚悟するのは素晴らしいことだ。でももう少しディカプリオの方も「生き残るんだ」という意志があった方が良かったんじゃないかな。船の船尾に来て完全に沈没するまでは「生きよう」とする意志があったのに…。でもしかたないのかも知れない。どうしようもない状況というものもあるし。オレがディカプリオみたいな状況だったら、いくら相手が好きで助けたくても、自分も生きたいと思うだろうし、もうちょっとどん欲というか汚らしくて良いから、「生きたい」という感情をもった方が…。でもそれをやると映画的には印象が綺麗に終わらないんだよなあ。まあ、これは後で整理した段階で述べる。
もう一つ、気になったのはディカプリオがはじめてヒロインを見かけたときの描写。ディカプリオ目線のカメラが話し相手の顔から、女性の姿へとズームアップしていくカットはちょっとわざとらしい感じが出てしまう。ディカプリオと相対する視点からカメラを取って、ディカプリオが話し相手の顔を見て、ふと横に視線をずらしたら女性がいて、ふと一瞬驚きつつもぽかんとした感じがあって、そこからズーッと女性に意識が引き込まれていくような表情を長撮しにした方がもっとスラッとして感じが良くなると思う。
心の動きを表現するのはやはり難しい。人それぞれ考え方があるし、その時主人公は何を考え行動に移すかは推し量りがたいものがある。死ぬときは一緒だと思っていても、心の奥には、本当に恋する相手なら自分が犠牲になってでも生き残ってもらいたいという感情は人間ならば男女関係なくあるだろうし。だから、ヒロインの女性はラストシーンで救助船へ助かりに行く場面で、冷たくなって死んでいながらも、手を握りあっているディカプリオの手を離して、海の底へ沈めたというか離ればなれになったんだと思う。顔を見ると自分だけ助かりたくないという感情が働くから、その感情との決別を計るために。
いろいろあるけど、自分自身も正解は分からない。というか正解なんてどこにもないんだから、この作品は作品で良いと思う。やはりキャメロン監督が中途半端なことをしなかったのがヒットした原因だと思う。しかし作品自体は良かったけど、自分としてはそう何度も観に行くっていうような作品ではないと感じた。それでもディカプリオのファンにとっては、至高の作品だったとは思う。ディカプリオはかっこいいし、しかも作品自体も面白いとなると火がついて、ヒットするよなあ。確かに悪い映画ではなかった。そこそこ評価できる作品だと思う。迫力至上主義的なハリウッドから脱して、角度の違う映画を作ったことに、本当に素晴らしいと言ってあげたい。