始まる前の静けさ…

平成15年4月6日。その日、福島では強い風が舞い、肌寒い一日となった。そんな中、久石譲のコンサート「PIANO STORIES 2003 ETUDE & ENCORE」が福島県の中間部に位置する郡山市にある、郡山市民文化センターにて行われた。

この文化センターでは、ちょうど昨年(2003年)の春に、NTTドコモ東北が主催した久石譲のシンフォニックコンサートが開催された。その際は私もこの文化センターにてオーケストラサウンドを堪能したのだが、その時に受けた印象は小ぎれいなホールで、悪くないホールだなという感じだ。集客人数も2,000人ほど収容できる広さがあり、客席も3階席(構造上4階席ということになっている)まで存在し、奥行きがあるところだ。詳しくは去年のコンサートレポートや、ホールの紹介文を参考にしていただくと良いだろう。

さて、コンサートが行われる大ホールに入る手前のロビーには、恒例のごとく、パンフレット販売とCD販売が軒を連ねる。パンフレットは1,500円。通常どおりの値段だ。パンフレットは買っておくと、コンサートの流れが掴みやすいので、余裕があれば買っておくことをお勧めしたい。また、CD売り場にはもちろん久石譲のアルバムが所狭しと並ぶ。どちらの売り場にも人が押し寄せており、郡山での人気の高さを伺わせる。最近だと、宮崎駿監督作品「千と千尋の神隠し」がアメリカ・アカデミー賞長編アニメーション部門最優秀賞を受賞するなどで話題が多かった事もあり、久石譲という名が徐々に浸透しているのを感じさせた。

ホールには定刻の15分ほど前に入った。今回の座席は最前列で、久石譲の姿をよく見て捉えることができる位置だった。と、ふと自分の席について気がついたのだが、ピアノの配置が若干斜め加減で、ピアノの横には別に譜面立てが設置されていた。譜面立てが置かれてある時点で何が起こるのかというのは容易に想像はついたが、どのタイミングで活用されるのかは、この時には分からなかった。それが分かるのにそんなに時間は掛からなかったのだが。

ステージ上の配列はこんな感じ

定刻になった頃、ステージ上はまだ薄暗かった。どうも、まだ始まる雰囲気は無い。そうすると、徐々に会場がざわつきはじめた。「本当に始まるのか?」といった不安があるのだろうか。場内アナウンスも特になかったため、観客には何が起こっているのか分かる術がないのだ。そんな中、舞台袖の方からチェロの音色が聞こえてきた。メロディからどんな曲が演奏されるかということまでは分からなかったが、チェロの音が会場内の雰囲気を和らげてくれるかのようだった。このチェロの最後の練習のための音色が不意に途切れた。そう、定刻から10分ほど経って、やっと開演となる。

 

  表紙へ戻る 次のページへ