アンコール後半〜終演
とにかく、手に持ちきれないほどの花束や贈り物を手に、久石さんは満面の笑みで会場に答えていた。今一度、会場に向かって一礼をされた。それに対して会場からはまた大きな拍手が送られる。舞台袖に戻る久石さん。ステージ上には新日本フィルハーモニーの方々と指揮の金さんが残っている。再び久石さんがステージ上に戻ってくる。拍手が一段と強くなる。
すると、金さんが久石さんに何か声をかけていた。声自体は聞こえなかったものの、席が最前列だったため口の動きから推測できた。
金さん「やりますか?」
久石さん「やります!」こんなやりとりをされていたのだろうと思う。とにかく、アンコール3曲目のようだ。拍手がなっている最中に、サッとピアノの前に座り、拍手が鳴りやむか鳴りやまないかのうちに曲が始まった。
・Madness (encore)
そう、この曲を忘れてはならない。昨年のコンサートでもアンコールで一番最後に演奏された曲目で、久石ファンなら、もう誰もが知っている名曲である。この曲は宮崎駿監督の映画『紅の豚』で使用された曲で、久石さんのソロアルバム『My Lost City』にも収録されている。『ジャン』と一斉に演奏が始まり、非常にアップテンポな曲だ。小刻みな弦楽器のビートの中からピアノのメロディが流れてくる。アレンジはさほど変わっていない。本当にファンにとってはなじみの曲だ。久石さんは、ジッと目を凝らしながら楽譜に集中している。
そして、曲のラストはもちろん、久石さんの腕が勢い余って後ろに半回転するとともに大音量の『ジャン』で終わった。曲の終わった直後、会場内からこれまた割れんばかりの拍手が起こる。しかし、まだスタンディングオベーションは起こらない。なかなか起こらない。かなりの間、拍手が続いたが、どなたかが席から腰を上げたのをきっかけに、会場内が総立ちとなった。1階席はもちろん、2階席、3階席も席から立っている。オールスタンディングオベーションだ。舞台袖のすぐ上にある2階席に座っている男性の方が、久石さんに向かって手を振っているのが見られた。久石さんは微笑み返されていたようだ。
そんな中、指揮の金さんがまた久石さんに話しかけている。「どうしますか」とでも、言っていたようだが、さすがに久石さんは「もう終わります」と返したようだ。どうも、左手の調子が思わしくないらしい。大阪のシンフォニーホールでは、スペシャルアンコールとして『Friends』が演奏されたようだが、東京会場ではそれは無し。久石さんの誕生日が前日と言うこともあり、密かに『Birthday(※4)』を狙っている方もいらっしゃったようだ。ただ、手の状態が良くないのでは仕方がないだろう。
※4 Birthday
2001年12月にお生まれになった、皇太子様と皇太子妃雅子さまのお子さま、敬宮愛子さまへ向けた曲。フジテレビの特別番組で演奏模様が放映された。久石さんはステージ中央に立ち、数秒、観客を見据えていた。ラストの公演でオールスタンディングオベーションということもあり、感激もひとしおのようで、間近で見た限りでは少し目が赤くなっているような、そんな気がした。また、汗もかなりかかれていて、熱演の後というのが伺うことができる。そして、また観客席に向かって深々と頭を下げられた。客席からは声援がかかっている。
そうすると、私の隣にいた師匠が感極まって、久石さんに対して周りの拍手に負けないくらいの大きな声で、声をかけた。もちろん、最前列からだ。
「久石さんっ!! 世界一っ!!!」
突然のことで驚いてしまったが、その師匠の声援に対して、笑みを浮かべながら久石さんも拍手に負けじと『ありがとう!!』と大きな声で返事をされた。本当に世界一である。それくらい素晴らしかった。全然、嫌みでも何でもなく、本当にそう思ったから口に出た言葉だろう。それくらい、今回のコンサートが素晴らしかったと私も思うし、会場に来られた方もそう思ってくれただろう。
久石さんは会場から送られている拍手の中、新日本フィルのコンサートマスターの方や、指揮を担当された金さんと笑顔で握手を交わした後、軽く会釈をして舞台袖に戻られていった。その後、新日本フィルハーモニーの方々や、指揮の金さんも会場に向かって一礼をし、それぞれ舞台袖へと戻っていった。ステージ上から全ての人が去っていくまで、拍手は続いた。
久石さんが実際に弾かれていたピアノ。奥にはEVIANのボトルが… とにかく、コンサートは終わった。コンサート終了後、いつもそうなのだが、自分も何か楽器を演奏できれば素晴らしいだろうなと思った。特に、ピアノは弾けるようになれば格好良いだろうなと思う。格好良いというより、憧れると言った方が正しいかも知れない。
また、この「Super Orchestra Night」では、タイトルにも書いたがホントにスーパーな時間を過ごせたと思う。オーケストラの力強さと、指揮の金さんの力強さ、そしてもちろん、久石さんのピアノの力強さがミックスされ、それがスーパーな感覚を生み出しているのであろう。いや、一つ忘れてしまった。会場にいる観客のパワーを。この4つが揃うことによって今回のコンサートの強さが出てきたのではないだろうか。
今回のコンサートは、全国ツアーだったのでもちろん他の会場でも披露されたのだが、その中でもMCの部分は会場により、若干変わっている部分もあったようだ。大阪のザ・シンフォニーホールでは、2002年春に発売が予定されているアルバム「ENCORE」の話があったようだが、東京ではなかった。逆に東京ではピアノの音量の話があったが、他の会場では無かったようだ。
その辺の微妙な違いもあったようで、このレポート作成も困難を極めた。ただ、東京公演に来られた方に、いろいろ助けていただき、何とか形にすることができた。とにかく、ご協力いただいたみなさんに感謝のひと言である。また、このレポートをご覧になった方々にも、拙文を読んでいただき、感謝申し上げたいと思う。
それでは、次回の機会までとりあえず、ペンを置いておこうと思う。
執筆者 ショー
初校 2001/12/16 18:35 書き上げ
第二校 2001/12/17 21:00 一部修正
第三校 2001/12/24 23:10 一部校正
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