"Be"シリーズ特別篇

Be SUGIYAMANIA 4th!!

弦楽四重奏による
ドラゴンクエストコンサート
Dragon Quest for String Quartet

演奏:マティアス・ムジクム・カルテット
Played by Matthias Musicum Quartet
作曲・編曲:すぎやまこういち


    なんか、最近本業である久石さんのコンサートレポートよりもドラゴンクエストの方が増えているような気もするんですが(苦笑)、今回もドラゴンクエストのストリングカルテットコンサートへ行ってきたので、そちらのレポートを書いてみました! コンサートに来た人も来れなかった人も楽しんでもらえれば嬉しいです。
    また、いつもの通り、こちらのレポートと合わせまして、Be Series本家である「Be HISAISHIST!!」シリーズ(久石譲コンサートレポート)も合わせてお楽しみいただければと思います。

日時 2004年5月29日(土) 16時から
会場 代々木上原・古賀政男音楽博物館けやきホール
(日本音楽著作権協会となり)
チケット
全席自由 3,000
出演者
演奏 マティアス・ムジクム・カルテット
Matthias Musicum Quaret
第1ヴァイオリン 齋藤 真知亜
SAITO, Machia
第2ヴァイオリン 大林 修子
OBAYASHI, Nobuko
ヴィオラ 坂口 弦太郎
SAKAGUCHI, Gentaro
チェロ 藤森 亮一
FUJIMORI, Ryoichi
お話し すぎやま こういち
SUGIYAMA, Koichi
その他

主催:スギヤマ工房


    ドラゴンクエスト弦楽四重奏の公演は、昨年(2003年)の12月にあったのですが、仕事が忙しくて休みが取れず(しかも職場の忘年会の日だった…爆)、その時はやむなく諦めたんですが、直後にこの5月公演があるということが分かって非常に嬉しかったのを覚えているんですが、時間が経つのも早いものですね〜 もう5ヶ月経っちゃったんだから。
    そんなこんなで自宅からいよいよ出陣なんですが、5月のゴールデンウィーク明けから風邪を引いてしまい、体調面ではなんとか大丈夫なんですが、喉が非常に不調で… 演奏中、咳をせずにちゃんと持ちこたえられるかが心配でした。
    ま、そんなこんなで会場30分前(開演1時間前)に会場であるJASRACとなりのけやきホールに着いたんですが、すでにお客さんがいっぱいいて、整理券が配られていました。僕は確か70番台だったかな。そう、今回は自由席ですからねぇ〜 自由席のコンサートってはじめてだったんですが、おそらく並ぶんだろうなぁとは思ってましたけど、やっぱり並びましたね。
    自由席になってしまうと整理がちょっと大変そうだなぁと思いました。会場になったあと、皆さん良い席の取り合いってことになるので…(爆) 僕は会場中段の真ん中あたりに座りました。前の方でも端っこではなぁと思ったものですから…(笑) 最初の頃に入れた人は良いんですが、開演ちょっと前に来られた方などは、座る場所が見つけづらい。どこの席が空いているのか分からないですからねぇ。そうそう、臨時席も設けられていたようでした。本当に今回はコンサートチケットを希望される方が多かったようですが、なんたって席が200席程度のホールですから、時間が経っちゃうとすぐに満席状態になっちゃいますよね。
    そうそう、会場に入った際にもらったリーフレットの中に先日レーベル立ち上げが発表された「SUGIレーベル」の第一弾CDとして2004年6月23日に発売される「都響版:交響組曲ドラゴンクエストV 天空の花嫁(リンク先はアマゾンです)」のものが入ってました。すぎやまさんご本人もコメントを寄せられていて「納得できる素晴らしい結果」とのことで、期待大ですね!
    リーフレットなどを眺めたりしていると、ステージ脇からチューニングをしている音色が聞こえてきました。もう少しで開演だなあと暗に感じさせる一幕です。…っと、いきなりステージ袖からすぎやまさんがトコトコと出てこられ、会場最前列左端の座席に腰を掛けられてました。そこの席は「関係者席」と書かれてあったそうですが、となりに座っている方などは、すぎやまさんが座れるとはつゆとも思わなかったでしょうね。その後、アナウンスが流されると、会場内のライトが徐々に消され、逆にさほど大きくはないステージへ全ての光が注ぎ込まれていきます。
    今回の主役でもあるマティアス・ムジクム・カルテットの皆さんがステージに出てこられました。会場からは盛大な拍手が送られます。四人はそれぞれの楽器を手に会釈をされると、それぞれ用意された椅子に腰を掛けられます。よく椅子を見てみるとチェロの藤森さんのだけ黒い椅子で、他の3人の白い椅子とは違いました。いやいや、仲間はずれってことではなくて(笑)、藤森さんがカルテットのリーダーなんだなぁというのを示してくれたワンシーンです。こういうところはオーケストラと一緒なんですね。

    肝心な曲の部分なんですが、申し訳ないですけれども、全曲説明する時間も無いので、印象に特に残っている曲をいくつかピックアップしながら感想を書いていきます。ご了承を!

■勇者の仲間たち(IV)より
間奏曲〜戦士はひとり征く〜おてんば姫の行進〜間奏曲

   
カルテットの皆さんが腰を下ろされると、チューニング無しで身構えられました。するとまずピチカート奏法でおなじみの間奏曲(インテルメッツォ)が流されてきました。冒険の書を選んだりするときの音楽ですよね。元々が弦楽器のピチカート奏法で演奏されていたので、違和感なく聴くことができました。
    そして、「戦士はひとり征く」ですが、最初のメインの音色をチェロが奏でていました。オーケストラだとホルンでしたよね。ちょっと落ち着いた音色で奏者の藤森さんが朗々と演奏してくれました。その後の「おてんば姫の行進」も楽しげなアレンジになってました。

武器商人トルネコ変奏曲(IV)
   
この曲は面白かったです。最初はチェロがメロディを弾いていって何ら変わったような漢字ではなかったんですが、徐々にいろんな形へと曲が姿を変えていきます。いかにも王宮音楽っていうような感じの曲調になったと思ったら、ジャスっぽくなったり、転調して短調の暗めの曲に変わったりと、いろいろと姿を変えていって面白かったですよ!

■のどかな家並(VII)
   
この曲が始まる前、すぎやまさんは「今日のおしゃべりのテーマはのどかで行きます!」とおっしゃっていました。その部分は後からまた書きますが、個人的にこの曲の時は大変でした(苦笑)。冒頭にも書いたとおり、喉の状態に不安を抱えていたんですが、つらい状況になってきました。必至になって堪えてました。身体は咳をしようと横隔膜が痙攣し(苦笑)、それでも頑張りました(爆)。席がとなりの人、気になっただろうなぁ… すんません(汗)。もちろん、演奏終了後は拍手の代わりに咳をし出した始末…(汗)
    …って、誰もそんなこと聞きたくないだろって(爆)。肝心の曲なんですが、「あれ?」と思ってしまったんです。僕が覚えているメロディがちょっと出てくるんだけど、他は記憶と一致しないんですよ。喉痛のせいかも知れませんが(苦笑)、これも変奏曲になっているように思いました。

■木洩れ日の中で〜ハッピーハミング〜ぬくもりの里に〜木洩れ日の中で(VI)
    この曲の詳細はもう覚えていないんですが、ハッピーハミングの時に第一ヴァイオリンの齋藤真知亜さんがヴァイオリンをウクレレのように持ち替えてかき鳴らされていたのが印象的でした。ヴァイオリンもいろんな演奏形態があるなぁと思いましたよ。

■のどかな熱気球の旅(IV)
    今日のお話のテーマは「のどか」ということですぎやまさんはまたしゃべり始められました。
    『のどか』っていうのは『平和』を連想できますよね、というお話をされました。

    「平和っていうのは国と国との戦争しておらず、国内でテロが起こるなどで情勢不安になってもいない状況のことを一般的に指しますが、そうしたら北朝鮮は一見したら平和だということもできるだろう、と。でも、よく調べると飢饉があったりといろいろ大変なことがあったり、家族がバラバラになったりということがある。皆さんには少しでもそんなことを考えてもらえればなぁと。…って説教臭くなっちゃったなぁ(笑)。とにかく、ゲームの合間にでも、特に先日発売された『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』は家族とともに話が進むゲームなので、ゲームの合間にでも少しだけそんなことを考えることも良いことなんじゃないかなと思います」

    こんな話をされていました。拉致事件のこともあり、イラクで銃撃を受け亡くなられた方もいたりと最近、さまざまなニュースが入ってきているので、すぎやまさんもいろいろ思うことがあったんだろうと思います。
    肝心な曲の方なんですが、違和感なく楽しめました。というのも、この曲ってそもそも木管楽器系の四重奏になっていたんですよね。僕もその話を聞くまで全く知りませんでした(苦笑)。


    本当は「哀愁物語」とか「血路を開け」とかも演奏がなかなか良かったので、何か書きたいんですが、時間が無いのと、書くほどの記憶が残っていないため割愛させて頂きます(汗)。

    休憩中にネットで交流のある方たちとご挨拶をしたりしました。それと! 会場に山野楽器から出張に来ているお姉さんがCDとかを販売されていました。いつもの如くCDを購入された方にはすぎやまさんのサインが特典として付いていたんですが、先着順ですでになし(苦笑)。でも、ちょっと気になったCDがあったので買ってみました。「SWEET 〜THE BEATLES ON STRING QUARTET(リンク先はアマゾンです)」なんですが、馴染みあるビートルズの名曲が弦楽四重奏でやさしく包まれているような感じで良いですね〜 これもすぎやまさんが編曲を担当されているってことで、随所にすぎやま節を感じさせるところもありました。

    さてさて、いよいよ後半です。

    最初の曲に入る前に、すぎやまさんがお話をされ始めました。JASRACのとなりでやっているとのことで、一回くらい「著作権」という言葉を発しないといけないらしくて…(爆) それで、音楽なりゲームなり「著作権」で仕事が成り立っているんだという話をされていて、その時に『PS2版ドラゴンクエストVは制作費にいくらかかったでしょうか?』との質問をしながら、マティアス・ムジクム・カルテットの皆さんのところに歩み寄っていきました。
    その質問をすぎやまさんはまず第一ヴァイオリンの齋藤真知亜さんにされたんですが、真知亜さんはタジタジになってしまい、「あ、いえ、へ?」みたいな感じになってました(笑)。第二ヴァイオリンの大林さんはとなりのチェロの坂口弦太郎さんへ質問をしてくれとのジェスチャーをされていたので、すぎやまさんは坂口さんへマイクを向けると「うーん、1億円くらいですか?」と。チェロの藤森さんにも聞くと「もう一つ、0が増えて10億くらいじゃないですか?」と。
    すぎやまさんも正確な数字は把握してないそうですが、いろいろ見聞きしたところによると50億円くらいではないか、とのこと。その50億をゲームの著作権でペイしなければならない(要するに元を取らなければならないという意味)ので、著作権は大事にしていって欲しいし、そうしないと次回作も作れなくなるよという話をしていました。
    もうひとつ、ドラゴンクエストVIIIの話もされていました。話によると奇跡的に(?)順調に開発スケジュールが進んでいるとのこと。発売時期などは特におっしゃってませんでしたが、VIIIの音楽もかなりの部分が出来上がっているみたいで、頑張っている状況とのことです。今後、VIIIの曲をオーケストレイションしたり、また弦楽四重奏へ編曲したりして、演奏していきたいとのことをおっしゃっていました。

■序曲(I)
    おなじみの序曲です。最初のホルンのファンファーレがどうなるのかなぁと気になっていたんですが、ファンファーレはピチカート奏法で演奏されていました。ホルンなどのファンファーレとはちょっと違って、何というか暖かみのあるというか、ほんわかしたファンファーレになったと思います。まあ、ストリングスに金管と同じような音を望むことはできませんからね。
    曲中については、オリジナルのIの序曲とは違っていました。Iの序曲は他のシリーズの序曲とは違って中間部が挿入されていますけど、今回のカルテットではそれはありませんでした。ただ、カルテットオリジナルということで、それまでとは違う中間部に差し替えられていました。

■世界をまわる(II)
街〜ジパング〜ピラミッド〜村
    最初のピチカートから楽しげな街の音色が流れてきました。この曲で驚いたのが、「ジパング」です。「ジパング」はいわゆる雅楽のエッセンスも入っていて、琴の音色に似せたところとか、鼓(つつみ)を鳴らすところなんかが入ってきていたんですが、これをチェロの藤森さんが演じていました。
    まず琴の音色は、ピチカート奏法でやられていたんですが、どうも通常のピチカートとは違うみたいで、「パチンッ!」と弦をはじくだけではなくて、弦と指を押さえる板のところにぶつけて違う音を発生させていたようです(調べてみたら「バルトーク・ピチカート」と言うみたいですが、あまり詳しくないので間違っているかも…)。これで甲高い音が鳴っていたようです。
    そうして、鼓をならすところはチェロの後ろの板を手で叩くことによって代用していました。なかなか雰囲気が出るものだなあと感心しちゃいました。

■戦闘のテーマ〜アレフガルドにて〜勇者の挑戦(III)
    この曲にはやられました。弦楽四重奏の中では僕の中では最高傑作だと思います。パワフルな演奏が堪りませんでした。
    最初の「戦闘のテーマ」では最初のメロディをビオラの坂口さんが演じられていました。ヴァイオリンと較べ5度音が低く、チェロより1オクターブ高いとのことで、ちょっと渋めの音色になるんですが、この戦闘のテーマのメロディにピッタリでした。また、楽曲の中間部(「アレフガルドにて」の前だったか後だったかはよく覚えてません…)には、それぞれ4人がチェロから順にソロで戦闘のテーマの変奏曲を演奏されていました。
    そして「勇者の挑戦」なんですが、いやあ、すごいと言うしかないです。めちゃくちゃハイテンポな演奏で、体中を使って演奏しているという感じが見て取れて、サビの部分なんかは弦の動きが他の曲と比べものにならないくらい速いんですよ。そして力強かった。
    これは演奏されたカルテットの皆さんは、ものすごく疲れたでしょうねぇ。でも、その代わりに曲が終わってからの拍手はものすごいものがありました。他の曲の拍手とは比べものにならない拍手で、コンサート終了時の拍手とも見まごうような感じでした。

■そして伝説へ(III)
    オーケストラの出だしのトランペットがヴァイオリンになると、やっぱり印象がちょっと変わってきますね。少しメロディに丸みが感じられます。この時はまだ、前の「戦闘のテーマ〜(略)」の余韻が残っていたので、なかなか「そして伝説へ」に集中できなかったっていうのがあって、あまり記憶に残ってません(苦笑)。ただ、この曲はメロディを感じる曲だと思います。メロディはゆったりなんですが、やっぱりカルテットの皆さんはそれぞれ力が入っていて、身体を揺り動かしながら弾いているわけです。『戦闘のテーマ〜(略)』も身体をさまざま動かしながら弾かれていたけれど、同じような動きなんだけれど、やっぱり違いました。力強さと感情の違いとでも言えば良いんでしょうか。


    「そして伝説へ」が終わると、会場内から割れんばかりの拍手が起こります。座席から立ち上がったすぎやまさんとマティアス・ムジクム・カルテットの方々はステージ上で拍手を受け、健闘を称えながら、客席に頭を下げると、一旦舞台袖に戻られたりしながら、再びステージ上に戻ってこられました。
    すぎやまさんがマイクを持って観客の皆さんに話し始められました。

「いやあ、これだけ拍手を頂いたらアンコールをやらないわけにはいきませんね。先ほど、マティアス・ムジクム・カルテットの皆さんは難しい曲を弾いてもらっちゃって大変だと思います。『戦闘のテーマ〜アレフガルドにて〜勇者の挑戦』なんかは難しかったよねぇ。練習している時も、この曲はホント難しくって往生するわ〜って感じで。ということで、アンコールの曲は王城です!」

    思わず笑ってしまいました。"おうじょう"を掛け合わせられてました。ってことでアンコールは「王城」!

■王城(II)
    王宮で奏でられる弦の響き。元々、弦楽による曲だったので、全く違和感なく聴くことができました。もともと弦楽器のみの演奏だったし、曲の出だしも弦楽四重奏のようなので、のんびりと聴くことができました。


    「王城」が終わった後も、場内は拍手で盛り上がりました。盛大な拍手の中、すぎやまさんとマティアス・ムジクム・カルテットの方々はステージと舞台袖を行き来してます。行き来しているときの第1バイオリンの真知亜さんとチェロの藤森さんとの駆け引きも面白かったですよ。真知亜さんが舞台袖前で「お先にどうぞ!」と待っているところに、チェロの藤森さんも「いえいえどうぞ!」って感じで道を譲り合っているところなんかが印象的でした。
    そんな盛り上がりだったので、「やはりもう一曲」ということになり、誰もが納得するであろう「序曲」がもう一度演奏されることになりました。個人的には「戦闘のテーマ〜アレフガルドにて〜勇者の挑戦」が良かったんだけど、と無茶苦茶なことを考えていたりしましたが…(苦笑)


    そんなこんなで、コンサートを楽しんできました。うーん、今回はちょっと表現力に乏しくて、あまりちゃんとしたレポートにならなかったかも知れませんが、雰囲気だけでも伝われば幸いです。ま、個人的にはいつの日か弦楽四重奏ドラゴンクエストのアルバムが発売されるのではないかと期待しているので、その日が来ることを期待しながら、このレポートを締めさせてもらいます。そういうことで拙文を読んで頂きありがとうございました!

曲目

弦楽四重奏曲「ドラゴンクエスト」

    ■勇者の仲間たちより(IV)
        間奏曲〜戦士はひとり征く〜おてんば姫の行進〜間奏曲
        武器商人トルネコ変奏曲
        ジプシー・ダンス〜ジプシーの旅
   
■のどかな家並(VII) / 木洩れ日の中で〜ハッピーハミング〜ぬくもりの里に〜木洩れ日の中で(VI) / のどかな熱気球のたび(IV) / 失われた世界〜足どりも軽やかに(VII) / 哀愁物語(V) / 血路を開け(VII)

    INTERMISSION 休憩

    序曲(I) / Love Song 探して(II) / 王宮のロンド(III) / 遙かなる旅路〜広野を行く〜果てしなき世界(II)
   
世界をまわる(III)
        街〜ジパング〜ピラミッド〜村
   
鎮魂歌〜ほこら(III) / 戦闘のテーマ〜アレフガルドにて〜勇者の挑戦(III) / そして伝説へ(III) 

Encore
   
王城(II) / 序曲(I)

2004.06.06 16:00 書き上げ
2004.06.12 12:50 校正

 

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