祭りの後に…

この郡山公演が終わった後、私は友人たちとともに出待ちを敢行した。この日の郡山は非常に寒かった。春の陽気を全く感じさせない寒さだ。そんな中、チェリストの方々などがチェロを抱えて出てきていた。ワゴンタクシー1台ににチェリスト3人とチェロ3台が乗り込み、宿泊先へと向かっていたようだ。じっと通用口で待つこと30分ほど… やっと久石譲その人が出てきた。黒い帽子に黒いシャツ黒いジャケットと黒ずくめの出で立ちで出てきた。手には保護用に白い手袋をしている。

「寒い中申し訳ありませんが、サインお願いします!」

そう声をかけつつ、色紙とマジックを渡す。なぜだか、この時は滑舌は良かったようだ。寒いところ、嫌な顔せずサインを受け付けてくれるのは、ファンにとってこの上ない喜びである。この時、背中にサインを書いてもらった青年もいた。コンサートで感極まり、とにかく握手目的で出待ちをしたようだが、サインをもらえると分かると、何かにもらいたいということで、洋服の背中にもらうことにしたようだ。

この時に話を聞いたのだが、郡山公演では体調が優れず、薬を飲みながらのパフォーマンスだったようである。確かに曲名を忘れてしまったり、MCが若干少な目だったりしたところを考えるとそうだったのかも知れないが、演奏する姿を見る分には全くそのようには感じなかった。

この寒い中、サインを書いてもらい、ファンとしては恐縮至極であるにもかかわらず、久石譲その人の口から出た言葉には恐れ入った。

「こんな寒い中待っててもらって本当にありがとう!」

このひと言には参った。恐れ入った。映画音楽の巨匠と呼ばれる人物がこの謙虚さなのである。体調が悪いにもかかわらずである。やはり大物はその器が違うのかも知れない。

挨拶をしサインをもらった私たちは、車に乗ったその姿を見送り、帰途についた。


以上が郡山公演の全記録である。他の公演とは若干違う部分があるかも知れないが、コンサートの雰囲気が伝われば、願ったり叶ったりである。それでは、また次のコンサートの機会にでも、このコンサートレポートでお会いしよう。

 

初校 2003/04/29 17:00 書き上げ
第二校 2003/04/30 20:45 修正変更

 

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