コンサート前半戦Part.2 Pf Duo

    「今回は春のコンサートということで、爽やかな軽めのコンサートにしようと思ったんですが、この間に出したアルバム『Shoot The Violist』の曲も入ってきて、結局後半はパワフルなものになってしまいました。『Shoot The Violist』の曲は後半より演奏したいと思います。」
    これについてちょっと疑問があるんですが、6月の下旬って春でしょうか…(笑) ま、そんなことは置いておきますか…
「次の4曲はそれぞれ、チェロ、クラリネット、マリンバ、ヴァイオリンが登場しピアノとのデュオをお送りします。練習などでいろいろやっていくと分かってくるのですが、僕は居酒屋のオヤジみたいなもので、それぞれの奏者はそこの客のようなものです。店にやってきた酔っ払いが好き勝手に愚痴をこぼしていったり、あるいはシリアスな話を延々としていったりと。もうバラバラなんですよ。それに合わせる方はもう大変です。」
    このたとえ話、このときはスラッと聞いていましたが、これはあとから「なるほど」と思われるひと言がヴァイオリンとのデュオの後にちょっと出てくるんですよ。

    いつの間にかセッティングも終了しており、早速、最初のチェロとのデュオを迎えた。今回のチェロ奏者は近藤浩志さん。ガッチリとした体型で、髪はちょっと長めの茶髪を後ろで縛っていました。チェロを片手で持って、ピアノの前にセットされたイスに座り、ちょっとした調整をする。

la pioggia(ラ・ピオッジャ)
    この曲は映画「時雨の記」のメインテーマ。デュオといえど、もちろんチェロの近藤さんが主体の曲になりました。非常にゆったりというか、かなり感情豊かな"タメまくり"の演奏で素晴らしかったです。楽譜どおりに弾かない、個人個人の楽曲の解釈に委ねられるタイミング(リズム)の部分が、物凄い変化をしていて、聴いている方にとっては聴き応えがありました。ただ、伴奏役に徹した久石さんは大変。出だしの部分などは伴奏が全然伴奏になっていないというか、ほとんど途切れ途切れの伴奏になっていました(笑)。それだけタメまくった演奏だったんです。あれに合わせるのは本当に大変だったでしょう。

風のとおり道
    チェロの近藤さんが退場され、入れ替わってクラリネットの野田祐介さんが登場されました。この曲は宮崎駿監督の「となりのトトロ」に挿入された曲です。出だしは「PIANO STORIES」の出だしに似ていました。そこにクラリネットの澄んだ音色が重なり合っていく。それがまた素晴らしかったです。クラリネットの音も悪くないなぁと再認識させられた感じです。…と、曲の途中、急にピアノから「と・な・り・の・ト・ト・ロ・ト・ト・ロ…」というメロディーが入ってきました。そう、トトロの主題歌が挿入されていたのです。会場内から声としては聴こえませんでしたが、どよめきの雰囲気というのが感じ取れました。「おぉ!?」っていう感じで。いつの間にか、また「風のとおり道」に戻っていましたけど、面白いデュオでした。

SUMMER
    次の曲はマリンバの神田佳子さん。他の会場ではおなじみの神谷百子さんだったろうと思いますが、今回は東京と福岡だけにこの神田さんは出演されていました。この曲は北野武監督作品「菊次郎の夏」からのテーマ曲です。またヴァージョンとしては「Shoot The Violist」にも収録されているんですが、そちらの方と基本的に一緒だったと思います。マリンバの出だしからの入りだったんですが、また『風のとおり道』の時のクラリネットとは違った乾いた音色が響いて素晴らしかったです。

Drifting in the City
    デュオ最後の曲はソロアルバム「My Lost City」からのものです。この選曲は誰も予期していなかったろうと思います。多くの方が「何故この曲?」と思われたり、あるいは「この曲って何?」と知らなかったりなど、いろいろ感じただろうと思います。かなりマニアックな曲であることは確か。こちらはヴァイオリンの後藤勇一郎さんが担当されました。が、この曲を知っているにしても知らないにしても、僕にとって強烈に脳裏に残ったものの中の一つが、この後藤さんのヴァイオリンでした。この曲は強弱の強い曲ですが、やはりプロ、音色は感情豊かに音の調べを伝っていきます。ただ… 後藤さんってあまり演奏中、表情の変化が無いんです。ま、それだけだったら良いのですが… あの後藤さん独特の奏法は凄いインパクトがありました。上体と弓を持つ右手の肘の角度が全く変わらないのですが、腰と膝を軸として、何かあやつり人形のように弾く(ファンの方、失礼!!)奏法はめったにできるものじゃないです。あの体勢だとバランスを崩しそうなんですが、全然崩れない。こういうと失礼ですけど、半分機械的な動きが入っていて、面白かったです。でも、演奏は本当に素晴らしいんですね〜(そうそう、またまた個人的なことですが、この演奏中、急にのどがおかしくなり、咳をしたかったんですが何とか唾を飲みながらこらえていました(笑)。いやあ、さすがに「早く演奏が終わってくれ〜」と心の中で叫んでいました。初めてですよ、「終わってくれ〜」なんて思ったのは… もちろん、終了の拍手とともに咳き込んだのは言うまでも無いですが…)

    『Drifting in the City』を終え、後藤さんが退場すると、久石さんが息を切らしながらこんなことを言いました。
「もう、この4曲が終わると半分ぐらい死んでいます(笑)。みんな勝手に弾きやがって!(笑) 合わせる方が辛いんですよ。日に日に演奏がエスカレートして行くと、最終日はどうなるのか検討もつきません…」
   
まだまだ久石さんは息を切らしています。本当に辛そうでした(笑)。やはり、人の演奏に合わせるというのは本当に大変でなんでしょうね。そういえば、「ピアノはスポーツだ」ということを久石さんはおっしゃっていましたけど、この様子をみると確かにそうなのかなと思いました。ま、久石さんの曲に限ってのことなのかもしれませんけど、馬力をつけることは大事なんでしょうね。

アシタカとサン
    「次の曲はもののけ姫より『アシタカとサン』という映画のラストに流れる曲です。前半の最後の曲になります。お聴きください。」
    前半最後の曲は、久石さんからの説明のように宮崎駿監督の「もののけ姫」でラストの場面に使われた曲です。僕は当初、この曲目当てでこのコンサートに望んだのですが、その割にはあまり覚えていない… 『Drifting in the City』の時ののど痛の影響があったのかも知れないんですが、何かフツーって感じでした。何ででしょう? でも綺麗な旋律だったのは確かですよ。でも、ホントに変だなぁ…

    という具合で前半は終了しました。休憩に入るとインターネットで集まったオフ会のメンバーが久石さんに渡す色紙を書いたり、いろんな方と話をしたりしました。ひろりん☆さんとかにも会ったし。あとは花束野郎がどれだけいるかが気がかりでした(笑)。どうなることやら…

 

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