第17回ファミリークラシックコンサート ドラゴンクエストの世界 (Be SUGIYAMANIA 2003!! Volume8.2)

今年もドラゴンクエストのコンサートへ行って来ました! そういうことで、いつものごとくコンサートレポートを書いてみました。一生懸命書いてみましたが、やはり全部思い出せず、下に書いているように脚色をしたり、あるいは曲説明のみになっていたりしてますけれども、ご容赦下さいませ。それでは、このコンサートを楽しんだ方も、行きたかったのに行けなかった方も、コンサートの雰囲気を楽しんでいってください!

※注意
このコンサートは記憶をたぐりながら書いていったものであり、記憶が抜け飛んでいるところなどについては、脚色を施していますので、完全なコンサートレポートではないことをご了解下さい。
日時2003年8月28日(木) 18時から
会場東京池袋・東京芸術劇場大ホール
チケット全席指定 S席5,000円 A席4,000円 B席3,500円
出演者指揮とお話 すぎやまこういち
ゲストコンサートマスター 深山尚久
演奏 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
その他主催:スギヤマ工房
協賛:スクウェアエニックス/アニプレックス/三井生命保険相互会社
企画構成:すぎやまこういち
制作:クリエイティブ”U”

曲目

    序曲のマーチ / 天空の世界 / テリーの世界 / 追憶の旅路 / 王宮のトランペット / 街角のメロディ~地平の彼方へ~カジノ都市~街は生きている~街角のメロディ / 空飛ぶ絨毯~大海原へ / 戦火を交えて~不死身の敵に挑む

    INTERMISSION 休憩

    哀愁物語 / 愛の旋律 / 洞窟に魔物の影が~死の塔~暗黒の世界~洞窟に魔物の影が / 高貴なるレクイエム~聖 / 大魔王 / 天空城 /結婚ワルツ 

Encore
    東京&中山競馬場ファンファーレ / Love Song 探して / 戦いのとき / 序曲のマーチ

開演前雑感

もう何度ここに来たことか… そう、ここは東京の池袋駅そばにある東京芸術劇場です。高速バスと地下鉄、JRに揺られながら会場にたどり着きました。何度来ても、やっぱり会場の雰囲気は変わりませんが、その時々のコンサートの内容などによって、気持ちの持ち方も変わってきますよね。

今回は、第17回ファミリークラシックコンサート「ドラゴンクエストの世界」を聴くために、このホールにやってきました。このコンサートの2週間ほど前には久石譲さんコンサートツアー「JOE HISAISHI Symphonic Special 2003」が開かれ、このためにも同会場に来てたので、慣れっこというか、今ではホームグラウンドみたいな会場です。ただ、この時はちょうどお盆にコンサートっていうこともあって高速バスが遅れてしまい、開演時間直前に到着というハプニングがあったんです。大変でした…(笑) 今回が若干の余裕を持って会場に到着することができたので胸をなで下ろすことができましたが。ちなみにドラゴンクエストのコンサートは去年からこの東京芸術劇場に場所を移されており、会場の制約らしいんですがコスプレ禁止となりました。ま、東京芸術劇場は東京都の外郭団体が運営しているらしいので仕方がないのかも知れませんけれど。そういうことで、コスプレをしている方は全く見かけませんでした。

そうそう、スタンド花なんかも来ていました。スクウェアエニックスの社長さんと副社長さん連名のものとか、アニプレックス(全身はSME・ビジュアルワークスで、主にアニメーション系のコンテンツを充実させている)や、アルテピアッツァ(ドラゴンクエストのヴィジュアル面を担当している会社)、ソフトバンクパブリッシング(「週刊ザ・プレイステーション2」などの雑誌を発売している会社)の4つを確認しました。個人的にはスクウェアエニックスの社長副社長の連名ってのが気になりました(汗)。やっぱり内部ではエニックス派とスクウェア派みたいなのができているのかなあと…(苦笑) そうそう、そういえば聞いた話なんですが、ファイナルファンタジーの音楽を担当している植松伸夫さんもこのコンサートに来ていたらしいです。ま、クリエイターのみなさんには、会社のいざこざとかはあまり関係ないですからねぇ。とにかく自分の仕事をこなし、全うできればってところでしょうから。

ホワイエではCD販売などが行われていました。吹奏楽版の「Dragon Quest in Brass」の第1~3集の全てか、ドラゴンクエストコンプリートCD-BOXを買うとすぎやまさん直筆のサイン色紙がもらえるという特典付きでした。名古屋でも同じようなことをやっていたんですが、すぎやまさん、手がつかれないんでしょうか… ずいぶんとサインを書かれているようなんですよ。東京ではちゃんと見ませんでしたけど、名古屋では箱にかなりのサイン色紙が入っていたので… それで、僕はというといろんな人とお話をしていました。僕のホームページとリンクをさせていただいているみぎーさんやスペアリブさんやそしておふたりの掲示板などで話している方、そして以前からおつきあいさせていただいているよしむらさんの顔を見つけたので少しばかり立ち話したりしました。こういった機会がないとインターネットでやりとりしていただいている方と直接話す機会が無いですからね。

開演時間少し前にホールに入りました。何度もこの会場で音楽を聴いているので慣れっこなんですが、実はあまりこのホールの響き具合は個人的にしっくり来ません…(苦笑) 何か変な風に音が反射しているような感じで… 今回のコンサートもものすごくトランペットやトロンボーンあたりは際立って聞こえているのに、オーボエ、クラリネット、フルートの木管楽器系はちょっと聞こえづらかったです。ホルンも他の金管楽器と較べると、元々音色が丸いこともあるんですけど、それにしては少し音が聞こえづらかったような気がしました。そうそう、ちなみにステージの上を眺めたら天井からまたマイクが垂らされていました。2ヵ所に垂らしてあって、6本くらいのマイクがあっただろうと思います。ライブ録音してCDになればいいんだけどなあと思ってますが、どうなるんでしょうね…

それではいよいよ開演です。

王宮のピッコロトランペット

ステージ上に神奈川フィルハーモニー管弦楽団のメンバーが現れました。会場から拍手が送られます。それに続いて今回のゲストコンサートマスターである深山尚久さんが入場されました。引き続き拍手が送られます。深山さんが会場に向かって一礼をし、振り返ってチューニングが始まります。すると会場の拍手が止み、徐々にホール内の照明がステージ上だけを残して暗くなっていきます。深山さんはオーボエ奏者に音を出す指示を出し、その音に他の奏者が合わせていくような形になります。ひと通りチューニングが終わると、ちょっとした静かな一瞬が訪れます。

すると時期が満ちたのを確認してから、すぎやまさんが登場されました。より一層強い拍手が会場を包みます。すぎやまさんは会場のいろんな方向に向かって笑顔で会釈をされると指揮台に挙がり、譜面台に置かれてあったタクトを手にして、いつもの最初の曲が始まります。

・序曲のマーチ Overture
トランペットの勇壮なファンファーレから曲が始まりましたが、このファンファーレ、すごくしびれました。ものすごく音に張りや艶があって、身体に音が迫ってくるような感じでした。開演前に聴いたところだと、前回のコンサートと較べて1人トランペット奏者が増えたということで、より一層トランペットの厚みが増した形で、本当にググッと来ました。本当にカッコ良かった! 今回の序曲のマーチを聴いて、改めて思ったんですが、僕個人の感想としてはこの「V」の序曲のマーチが、シリーズ通しての序曲の中で一番良いなあと感じました。マーチだから特に力強くなっているし、本当に心が躍り行進し出したくなるような気持ちになります。

そんな形で、最初の曲が気持ちよく演奏されていたんですが、この演奏で「今日は本当に楽しめそうだ」という気持ちになりました。最初良ければ全て良しとよく言いますけど、僕にはそんな予感がしました。いや、予感というより確信に近いような感覚でしょうか。

そういえば、この曲のラストの部分なんですが、CDに入っているバージョンと若干アレンジが変わっていたような気がするんですが、気のせいでしょうか。曲の最後で少し吹き上がるような感じになっていて、それがまたちょっぴり雄大さを醸し出していたように思います。

序曲のマーチが終わり、盛大な拍手が送られます。するとすぎやまさんはマイクを持たれて開口一番「ようこそいらっしゃいました~」としゃべり始められました。神奈川フィルハーモニー管弦楽団のみなさんや、今回のゲストコンサートマスターの深山尚久さんの紹介をされていました。深山さんは「交響曲イデオン」の時のコンサートマスターだったそうで、現在(2003年)から数えて22年前(1981年の出来事だそうです)、当時大学生だった深山さんは「紅顔の美少年だった」そうです。「だった」ってのがちょっとネックかも知れませんが(笑)、すぎやまさんと深山さんはそれから長いつきあいをされているんだとか。

その後、次に演奏される曲の紹介がありました。続いては「ドラゴンクエスト・モンスターズ」シリーズの曲が3曲演奏されるということで、モンスターズを遊んだことのある方もいるだろうけれども、もしかしたらまだ遊んだことがない方は、ドラゴンクエストの形を踏まえて曲を作っているので、こんな曲もあるんだなというのを感じながら聴いてみてくださいといったことをおっしゃってました。

実は僕もモンスターズは全く遊んだことがないし、音楽も聴いたことがなかったので、どんな感じなのかなあと心待ちにしていました。そのモンスターズの曲がこれから3曲続けて演奏されます。

・天空の世界 (ドラゴンクエスト・モンスターズ 2より) 本邦初演
オーボエとハープの音色が印象的な楽曲でした。ハープがバックでなめらかに、そして流れるような音色を醸し出す一方、オーボエがメインメロディを吹いていくといった形でした。ゲーム上ではおそらくフィールドに流れる曲だと思いますが、天空をイメージして、静かに流れるような感じなのですが、でも、ちょっぴり寂しげなそんな曲だったように思います。

ふと、よく考えてみると、このドラゴンクエスト・モンスターズシリーズの楽曲は、次に演奏される「テリーの世界」を除いてこれまで演奏されたことが無いんですよね。この日いらっしゃった2,000人の観客は貴重な体験をしたということになりますね。

・テリーの世界 (ドラゴンクエスト・モンスターズ 1より)
「天空の世界」とは一転して、明るい曲が流れてきました。クラリネットが楽しげな音色と弦楽器のピチカートがものすごく印象に残っています。のどかで、そこら中を飛び回っている少年テリーの様子が目に思い浮かぶようです。ちなみにこの曲は1999年の名古屋のコンサートでアンコール曲として演奏されたことがあるようですね。

・追憶の旅路 (ドラゴンクエスト・モンスターズ キャラバンハートより) 本邦初演
「キャラバンハートではドラゴンクエストIIの曲が多く使われています。そのイメージの統一を考えて作曲しました」とコンサートのパンフレットには書かれていました。そんなことを頭に入れながら曲を聴いていたんですが、この「追憶の旅路」の曲の出だしがこの道わが旅と雰囲気が似ていたように感じます。そんな曲を、オーケストラのみなさんが朗々と歌い上げていました。

この曲は「ドラゴンクエスト・モンスターズ キャラバンハート」のエンディングに使われている曲だそうで、この曲も本邦初演となる曲でした。ただ、僕自身、はじめて聴いた曲で、もう記憶から無くなってしまっており、ちょっと残念だなあという感じです。モンスターズシリーズの曲についても、これからオーケストラにアレンジして演奏していってもらいたいなあと個人的に思ってます。

3曲の演奏が終わって、会場から拍手が起こります。「ありがとう」とすぎやまさんは会場に答えつつ、次の演奏の説明をしていきます。

次の最初に演奏される「王宮のトランペット」では、バロック音楽の語法、文法で曲が作られているんですが、そのバロック音楽の雰囲気を出すためにピッコロトランペットを使って演奏するということをおっしゃってました。何とも、トランペットよりも高くて柔らかい音色を表現できるらしいです。トランペット奏者の方が手にされているピッコロトランペットを頭上に掲げて観客に見せてもらえたんですが、トランペットよりも若干小さめでコンパクトにまとまっている楽器でした。

この話の後、王宮のトランペットと街角のメロディから続くメドレーとの2曲が演奏されました。

・王宮のトランペット Castle Trumpeter
曲の冒頭からピッコロトランペットの音色が響いてきました。おそらく過去のCDに収録されたもの(1992年にリリースされたNHK交響楽団が演奏されたものや、2000年にリリースされたロンドンフィルハーモニー管弦楽団が演奏されたもの)と音色が変わっていなかったように思うので、以前からこの「王宮のトランペット」にはピッコロトランペットが使われていたんだろうなあと素人ながら思いました。もしかしたら違うかも知れませんが…(汗)

それにしても、ピッコロトランペットと弦楽器との兼ね合いは非常に綺麗です。互いの音色が、互いにそれぞれこだましているような感じで王宮の広さと勇壮さを醸し出していました。それに、特にピッコロトランペットの音色が非常に素晴らしかったです。澄んだ音色で、ホールの一番奥までも綺麗に響いていたと思います。

・街角のメロディ~地平の彼方へ~カジノ都市~街は生きている~街角のメロディ Melody in an Ancient Town~Toward the Horizon~Casino~Lively Town~Melody in an Ancient Town
ドラゴンクエストの世界を旅していく中でさまざまな場面に遭遇しますが、その中で繰り広げられる楽曲たちがここに凝縮されています。

(街角のメロディ)
この曲は、妖精の村で主に流れた曲だったと思います。非常にのどかなメロディをフルートが奏でていき、バックにリズミカルなドラムの端を叩く「カッカカカカカッカッ」という音(リムショットというらしいですね)が鳴り響き、徐々にヴァイオリンなどの他の楽器が演奏に加わったりなどしながら曲が綴られていきます。

(地平の彼方へ)
これはフィールドを歩いているときに流される曲です。オーボエ、フルートがメインを務める曲で、冒頭はオーボエの綺麗なソロを聴かせてくれます。このソロ場面は、ゲームの序盤、主人公自身は幼少時代を過ごしていたため、まだか弱く寂しげな雰囲気のように感じますが、曲の後半から、主人公が成長し仲間が増えるようなことを表現してか、それぞれの楽器がオーケストラの迫力とともに大音響で同じメロディを合奏する様は圧巻でした。

(カジノ都市)
いわゆるカジノで流される音楽です。ドラムのリズムと弦楽器のピチカートに乗ってクラリネットが気持ちよくソロを歌い上げ、曲の締めにはトランペットなどの金管楽器が使われていました。曲としてはちょっと短かったですけど、ゲーム好きでカジノに対する想いの強いすぎやまさんならではのノリの良い曲です。

(街は生きている)
過去のドラゴンクエストコンサートのレポートにも何度も書いていることですが、「街」を表現するのは非常に難しいと僕は思っています。この『街は生きている』はドラゴンクエストVの街の場面で使用される曲で、ゲームを遊んだことのある方には何度も聴いたことがあると思います。その都度に「ドラゴンクエスト」という背景を持たせながらも、いろんなパターンで同じ「街」を表現するのは、すぎやまさんその人の力の為せる技だと思います。

肝心の楽曲の方は、まずメインメロディをフルートのソロが一度歌い上げると、ヴァイオリンがその後を追ってくるといった形で進んでいきます。

このあと、再び『街角のメロディ』が流されて、メドレーが終了しました。

もちろん拍手が鳴り響きます。すぎやまさんは笑顔で振り返り、マイクを持たれてしゃべり始められました。ドラゴンクエストシリーズのうちで一番好きなのはどれかと聞かれることがあるそうで、すぎやまさんの中ではどれも好きだから返答に困るそうなんですが、強いて上げると「V」の物語が好きなんだそうです。親子三代に渡る壮大なストーリーで、家族愛が感じられるからと。最近、暗いニュースが多いけれども、その原因を考えると家族愛が薄らいできているのではないかとすぎやまさんは考えられているようです。親子の繋がり、人と人との繋がりを大切にして欲しいとのアピールもありました。そんなこともあって、今回のコンサートは「ドラゴンクエストV」を披露することになったのだとか。

それでは第一部を締めくくる残り2曲の演奏となります。

・空飛ぶ絨毯~大海原へ Magic Carpet~The Ocean
「ドラゴンクエストV」での乗り物に乗った場面を表している曲を収めたメドレーです。

(空飛ぶ絨毯)
ドラゴンクエストの世界でこの「V」で初めて登場した乗り物がこの「空飛ぶ絨毯」でした。スィーッと低空を絨毯で飛び回るさまを木管楽器とハープの速いテンポの演奏と、それを支える弦楽器の演奏で表現されていました。

途中で、空を飛ぶ絨毯の軽やかさを表すかのように弦楽器のピチカートに乗ってオーボエやフルートのソロがあるんですが、その後、徐々にテンポが遅くなり、ピッコロやフルート、チェロがその摩訶不思議な力を表すかのようにゆったりとした曲想をたどっていきます。

(大海原へ)
雄大な海を大きな帆船で進み行くようなイメージの曲です。実にゆったりとした曲で、チェロがメインメロディを奏でていきます。すぎやまさんは両手で大きく指揮をしていきます。

ティンパニが「ダダダダダダダン!」とクレッシェンドで演奏される場面は、帆船に打ちつける波しぶきを連想させてくれます。そう、雄大に進む帆船のイメージとそこに打ちつける波のイメージが重なりあって、より想像をかき立てられます。

・戦火を交えて~不死身の敵に挑む Violent Enemies~Almighty Boss Devil is Challenged
ゲーム中でモンスターと対決する時に使われる楽曲のメドレーが演奏されました。

(戦火を交えて)
こういった激しい戦闘の曲は、CDで聴くのと生で聴くのとに大きな差を特に感じます。迫力が身に染みて感じることができるのは生だけです。ちなみに、この曲の曲想は他のドラクエシリーズの戦闘のシーンに流れる曲の中で数少ない、主人公側を励ましてくれるような応援歌みたいになっているように僕は感じていました。

スネアドラムに乗って、木管楽器と金管楽器が交互にメインメロディのやりとりをした後、ヴァイオリンとティンパニと激しい演奏が続いていくような感じになっていきます。

(不死身の敵に挑む)
ティンパニが非常に激しく打ち鳴らされ、トランペットなどの金管楽器が大音響とともに吹き鳴らされる楽曲です。曲自体はゲーム中に、その先の分岐点ともなる強敵と相まみえる際に流されます。

本当にティンパニが大活躍の曲で、オーケストラの大音響と途中途中に怪しげな木管楽器たちのメロディが組合わさり、ラストは大音響とともに終わるのかと思ったら、音が静まると同時に「ボーー…」という摩訶不思議で恐ろしげなヴィオラとチェロの静かな音色で締めくくられました。

といった感じで今回のコンサートの第一部が終了しました。が、拍手が全く鳴りやまずに、すぎやまさんが焦って舞台袖からステージへと小走りで駆け寄る場面もありました。もちろん、前半からアンコールなんてやるわけないですからね。とにかく、フィルのメンバーを退場させて、会場の拍手がようやく落ち着きました。

にしても、若干、コンサート用に曲順がアレンジされていましたが、「序曲のマーチ」の勢いに押されたせいか、細かいことを気にせずに第一部を楽しむことができました。若干演奏的に荒いところもあったとのことなんですが、僕は全くそんなこと気づかず、非常にノリノリだったようです(笑)。

ちなみに、今回のコンサートで気づいたんですが、シンバルを叩く人ってその曲目によって変わるんだなあということに気づきました。ステージ中央奥やや左よりにドラムス担当の方(いわゆるパーカッションの方)とティンパニ奏者の方がいらっしゃったんですけど、「大海原」などのティンパニが格好良く演奏している場面ではドラムスの方がシンバルを、「不死身の敵に挑む」ではティンパニも演奏していましたが、ドラムスが常に鳴り響いているため、間を縫ってティンパニ奏者の方がラストのシンバルを打ち鳴らすような感じでやっていたのが分かりました。

休憩時間中、ちょっとホワイエで友人と話をしていましたが、そんな中、周りをふと見てみると、喫煙所にはドラゴンクエストのシナリオとゲームデザインを担当している堀井雄二さんがいらっしゃいました。他にもグラフィックスを担当されている真島真太郎さんなどもいたりとドラゴンクエストのスタッフの方を多く見かけられました。スタッフの方が多く来ていましたよ。

高貴なる第二部へ

さて、早速後半が始まります。ステージ上に神奈川フィルハーモニー管弦楽団のメンバーが現れ始めると会場から拍手が沸き起こります。第一部のVTRを見ているような形で、ゲストコンサートマスターの深山さんがオーボエ奏者の方に向かって音を求められ、チューニングが始められます。

チューニングが終わり、ホールに静寂が訪れると、その合間を縫ってタクトを持ったすぎやまさんが入場されてきました。再び盛大な拍手が会場内に起こります。

そんな中、すぎやまさんは第二部冒頭にマイクを持ってしゃべり始められました。ドラゴンクエストのファミリークラシックコンサートをこれまでスタイルを変えずにずっとやってきたけれど、ひとつのことを継続してやっていけば大きな力になるのだなあということをおっしゃってました。さもすると、スタイルを変えながらいろいろやってみたいなあと思うこともあるだろうけど、「継続は力なり」ということわざもあるように、これまでずっと同じようにコンサートをしてきた実績から、今回のコンサートの満員大入りという結果に繋がったのだろうと思います。

ちなみに、ドラゴンクエストのゲームを創るスタッフたちも同じ思いなんだとか。ドラゴンクエストの世界観を崩さずに新しいものを創っていくことによって、多くの人に受け入れられているのではないだろうかというすぎやまさんのお話がありました。

第二部は、最後の曲「結婚ワルツ」まで続けて演奏するとすぎやまさんはおっしゃった後、タクトを持ってクルッと神奈川フィルハーモニー管弦楽団の方に向き直って演奏の準備をされ始めました。


・哀愁物語 Make Me Feel Sad
やさしげだけれどもの悲しい、冒頭のヴァイオリンの音色が非常に印象的な楽曲。再会の場面などに使われていましたが、この「哀愁物語」が使われて一番記憶に残っている場面は、主人公が自分の父親の遺言を読む場面を思い浮かべる方が多いだろうと思います。

一緒に旅をしていた主人公の父親は人質に取られた息子を守るため、魔物に一切手を出せずに一方的に打ちのめされ、亡くなってしまうわけです。それからどれほどの時間が経ったか分からない後に、父親の手紙を読むわけです。

そんな場面に、この曲なんです。ゆったりとした弦とフルート、クラリネットの音色は遠い昔の記憶を蘇らせ、また懐かしい気持ちにさせてくれます。ただ、その気持ちの中には「その時にはもう戻れないんだ」という儚さも曲全体から感じられ、ドラゴンクエストの中でもその使われたシーンの影響もありますが、名曲のひとつとして数えられています。

そんな曲がコンサートの後半の冒頭に演奏されたんです。この時、指揮を執っていたすぎやまさんの手にはタクトは無く、フリーハンドで手を振られていたと思います。それにしても、非常に贅沢でした。改めて聴き直してみたいなあと思う曲です。

・愛の旋律 Melody of Love
ドラゴンクエストVのゲーム中には、主人公が女性二人から結婚相手を決めるという人生の重大な選択を迫られる場面があります。その悩む場面に流される曲です。

曲の序盤はフルートソロが心地よく流れて、後半には同じメロディをコンサートマスターの深山さんがヴァイオリンソロで聴かせてくれます。

この決断は主人公のみならず、相手の女性にも大きな人生の分岐点を迎えさせるわけです。静かな夜に悩む人、ひとり。そして、同じく静かな夜に物思いにふける女性がふたり。自分の気持ちを整理し、相手の気持ちを察し、いろいろと思い悩むさまがゆったりとした曲の雰囲気から感じられました。そして曲の終盤、曲調が強まっていくようなところがあるんですが、そのメロディはいつかは結論は出さなければならないと思い立つ主人公の様子が表されていたんでしょうね。

「愛の旋律」が終わると、ソロを担当されたフルート奏者の方と、コンサートマスターの深山さんに拍手が送られていました。

・洞窟に魔物の影が~死の塔~暗黒の世界~洞窟に魔物の影が Monsters in the Dungeon~Tower of Death~Dark World~Monsters in the Dungeon
ゲームをしている最中、幾度となく聴いた洞窟や塔の音楽のメドレーが演奏されました。

(洞窟に魔物の影が)
ヴァイオリンなどが小刻みに音を振るわせ、その音にフルートなどの木管楽器が加わり、暗がりに広がる怪しさを醸し出しながら、オーボエのソロが流れ出しました。主人公だけで単身、洞窟に乗り込んで見事にやられた記憶がふつふつと蘇ってきました。

この「洞窟に魔物の影が」という曲は、自分の中ではかなり強い印象を持っている曲です。ドラゴンクエストVと言ったら、なぜかパッとこの曲が頭に思い浮かんできます。なぜなんでしょうか。特に思い入れの強い曲では無いんですが、シリーズ中、一番おどろおどろしい曲だったからかも知れません。でも不思議なことに、そんな曲でもやっぱり綺麗なんですよね。ホントにすぎやまマジックは不思議なものです。

(死の塔)
この曲も冒頭のオーボエのソロ演奏の音色が印象的です。オーボエ独特の低い音色が流れるようにメロディを上へ下へ歌い上げることによって、地上から高い位置にいるんだなあと感じさせてくれます。その上、同じメロディを弦楽器や木管楽器などが合奏し、音階を流れるように繋げて演奏する、いわゆるグリッサンドの場面が、明るく光が差し込んだ建物の中でも、やはり魔物の気配を感じさせる怪しげな雰囲気を醸し出してくれます。

(暗黒の世界)
異様に高い音域で演奏されるフルートの音から演奏が始まります。非常に不可思議な世界を表しているような曲です。暗黒だけれど、フルートの高い、いわゆる少し明るい感じがするメロディ。もしかすると魔物たちの叫びあう声が表現されているのではないだろうかと思います。

そう、この曲は魔物が巣くう魔界を旅する場面で流れてくるんです。魔物が我が物顔で歩き回る様子が、少し明るく強めのメロディとして表されているのかなと感じました。

その後、再び「洞窟に魔物の影が」が演奏されてメドレーが終わります。

今回のコンサートはどこからともかく拍手が起こります。この東京芸術劇場でのコンサートでは、第二部の途中から一曲ごとに拍手が沸き上がっていたように記憶しています。名古屋でも第二部では全曲それぞれ演奏が終わるごとに拍手が起こっていました。通常、ドラゴンクエストのコンサートでの第二部は演奏会形式ということで続けて拍手無しで演奏されるものなんだと思っていたんですが、「あれ?」と思わされてしまいました。ま、その時々の観客の反応によって、若干違うんでしょうね。僕個人としては、久石さんのコンサートで一曲ごとの拍手は慣れているので全然問題ないんですが…(苦笑)

・高貴なるレクイエム~聖 Noble Requiem~Saint
いわゆる人が亡くなるなどの悲しい場面で使われるレクイエムと、神聖な場所の雰囲気を表現している曲のメドレーが続けて演奏されます。

(高貴なるレクイエム)
先ほど「哀愁物語」の場面で、主人公の父親が魔物に殺されてしまうということを書いたのですが、その時に主人公の強い悲しみ、そして自分の無力さを表すかのようにこの曲が流されます。弦楽器がその荘厳な音色を発し、強い悲しみの上にも亡くなった方を弔いの気持ちを表しているんだと思います。

そして、この曲の最後に鐘の音が鳴らされ、教会で礼拝しているような雰囲気を連想させてくれます。この鐘の音なんですが、いわゆるNHKののど自慢などで使われる鐘の楽器(チューブラーベルと言うそうです)で、実際に生の演奏で聴いたことは今回が初めてだったので強く印象に残っています。会場内を障害物も何もなく一直線に突き進むような、本当に澄んだ音色を醸し出してくれます。この音色だけでも、コンサートで聴く甲斐があったと思わせてくれました。

(聖)
「聖」とかいて「ひじり」と読みます。これは信仰に身を捧げる高僧や、高僧を目指す修行僧の方を指す言葉なのだそうですが、このドラゴンクエストの世界の場合だと、慈悲深い神父やシスターたちを表現しているんだろうと思います。

曲の冒頭、オーボエの静かだけれど澄んだ力強い音色が、穏やかで暖かく見守ってくれる神父やシスターたちをみなさんが感じ取っただろうと思います。

・大魔王 Satan
この曲は、曲目どおり魔物の中の王が出現し、主人公たちが相まみえる場面で流される曲です。曲の冒頭とラストのティンパニが非常に印象的で、このティンパニの音が「魔界の王にして、王の中の王(ゲーム中のセリフより引用)」だという威厳を表しているようです。中盤あたりから続く落ち着いたホルンが奏でる曲調はその強大な力による自信を感じさせてくれます。そして、徐々に曲全体のボリュームが上がっていき、ヴァイオリンやトランペット、フルートなどが活躍しながら、大魔王の圧倒的な激しい攻撃の様を聴いて取れました。

曲の終了後、大活躍のティンパニ奏者に盛大な拍手が送られていました。

・天空城 Heaven
伸びやかなクラリネットの音色が印象的なこの曲は、空を見上げて遥か彼方の雲の上をゆったりと流れていく浮遊城をイメージしています。人間が作り上げた構築物という感じではなくて、いわゆる天上界にそびえ立つ巨大な城が浮いている感じでしょうか。クラリネットと弦楽器のゆっくりとした音の駆け引きは、荘厳としていて、優雅な別世界が目に思い浮かびます。

この曲が終わった後にも、大きな拍手がクラリネット奏者に送られていました。

・結婚ワルツ Bridal Waltz
プログラム最後の曲は、大抵ゲームのエンディングに流れるんですが、今回のこの「結婚ワルツ」はエンディングのみではなく、「愛の旋律」の曲を説明した中で結婚相手を決めるシーンがあることをお伝えしたんですが、その後の結婚式でもこの曲が使われます。そういった意味では、ドラゴンクエストシリーズのエンディングを飾る曲としては異例なもののひとつだと言えるでしょう。

トランペットの力強く吹き鳴らす場面から曲が始まり、タイトルどおりのワルツ形式で、弦楽器が若干アップテンポで演奏しているところを見ていると、楽しげな踊りが繰り広げられる様子が目に浮かぶようです。

指揮のすぎやまさんも、手を円を描くように大きく振りながら、楽しげに指揮をされていました。

第二部のプログラムが全て終わり大きな拍手が会場を包みました。すぎやまさんは指揮台から降りて、四方八方からの拍手に答えて会釈をされていました。また、神奈川フィルハーモニー管弦楽団のパフォーマンスにも大満足のサインを送られ、「フィルのみなさんにも拍手を!」といったジェスチャーをされていました。止まない拍手の中、一度舞台袖に戻って、一息をついてから、再びステージに登場。ゲストコンサートマスターの深山さんとガッチリと握手を交わして、すぎやまさんはマイクを持たれました。

驚きのアンコール

すぎやまさんがマイクを持たれたとき、この後何が起こるのか固唾を飲んでいた観客側は一気に静まりかえってしまいましたけど、「急に静かになっちゃったねぇ~」とのすぎやまさんのひと言で再びドッと沸き上がりました。

そして、早速すぎやまさんはアンコールをやると口にされ、再び僕を含め観客全員が沸き上がります。「曲名は……………言わない!」と去年のアンコール最後の曲に引き続き、曲名をベールに包みつつ、すぎやまさんはさっとオーケストラの方に向いてタクトを振り上げられます。観客側はどよめきやら茫然自失やらさまざまな反応が…(笑)

・????
「序曲のマーチ」の説明の時に少し書いたんですが、去年はトランペットが3管(要するに3人)だったけど、今年は4管(4人)でものすごく伸びやかに演奏されてるという話をたまたま聞くことができたんです。

この時、勘のいい僕は確信してしまいました(笑)。というよりも、去年のコンサートに来ていた人は「この曲をやるだろう」と思っていた方がかなりいるだろうと思いますけど。何せ、すぎやまさんは去年のコンサートで「金管のみなさん、楽譜を用意しておきますので、次回よろしくお願いしますね!」と言っていましたから、僕はずっと「演奏するものだ」と思ってました。

でも、やっぱり驚いた方は多かったようです。最初のトランペットの勇壮なるファンファーレが流れ出した後、その曲に気づいて演奏中にも関わらず、「おぉ~~!?」という観客からの反応、どよめきが起こりましたから。

そう、突如演奏されたこの曲は、「東京&中山競馬場 G1競走ファンファーレ」だったんです。通常、競馬場で手拍子に乗って流される曲が、コンサートで勇壮でゆったりと演奏されました。しかし、ファンファーレの終盤から、もう我慢しきれなくなった観客が拍手をし始めちゃいましたが…(笑)

演奏が終わり、拍手が一段落すると、「いやぁ~ こんなに盛り上がるとはねぇ~ きっと悲喜こもごもの思い出がみなさん、あるんでしょうねぇ(笑)」とすぎやまさんはしゃべり始められました。

その後すぎやまさんはいろいろとしゃべり始められました。東京競馬場や中山競馬場で使われているファンファーレや入場行進曲などなどは全てご自身で作られたとか、またこの競馬のファンファーレはドラゴンクエストIIIの作曲で忙しい中、書き上げたなんて話もされていた記憶があります。ちなみに、このファンファーレがいつ作られたものか調べがつけられませんでした。ファミコンのドラクエIIIなのか、あるいはスーパーファミコンのドラクエIIIなのか… いろんな情報を総合すると、おそらくファミコン版の1987~1988年の頃なのかなあと思います。誰か、知っている方がいたら教えてください(※)。あとはファンファーレのテンポが、競馬場だと手拍子につられて速くなってしまっているけれども、本来はもうちょっと遅いテンポをイメージしていたことなどなど。だから、本来のテンポでファンファーレを演奏してみたかったのだとか。

※後で調べたらファミコン版製作の時だということが分かりました。ウィキペディアに載ってました。(2022.1.1)

また、いろいろ調べてみたんですが、競馬場での手拍子とか歓声ってあまり良くないみたいですね。馬は繊細な生き物だそうで、ちょっとしたことでパニックになったりするそうです。ましてやあの狭いパドックの中に閉じこめられた状態であの一種狂気に満ちた手拍子と歓声(ちょっと言い過ぎかも知れませんが…)では確かにそうかもなと思います。この際、ファンファーレを本来のテンポで演奏して手拍子しづらくさせてやるってのはどうでしょうか?(笑) しかもG1のファンファーレは変拍子なので特に手拍手しづらいし。静かにたたずむ観客が、競馬場で勇壮に演奏されるファンファーレを耳にし、みんな固唾を飲んで一斉にパドックが開かれるところを注目する様子、想像してみたいような気がします。自分たちのリズムを狂わさない、そんな猛者の集まる演奏者のみなさんはいないんでしょうか?

ま、ちょっと脱線してしまいましたが、とにかく本来のテンポでのファンファーレを全て演奏されるということをおっしゃって、すぎやまさんは指揮に向かわれます。もちろんG1ファンファーレももう一度演奏です。

東京&中山競馬場 一般競走ファンファーレ
あまり競馬には詳しくないんですが、名前が冠されていないレースで使われるファンファーレのようです。トランペットが4人、同じメロディーモチーフを繰り返すところで、ホルン、トロンボーン、チューバ、パーカッションが変化をつけるような感じになっていて、最後徐々にテンポダウンして、綺麗な金管楽器の音が和音となってホールに響きました。

・東京&中山競馬場 特別競走ファンファーレ
特別競走はG1からG3までのグレードの高いレース(重賞)以外の名前が冠されているレースのことを言うようです。その出走前に演奏されます。

トランペットが途中まで一つのメロディーを奏でていき、それにホルン、トロンボーン、チューバ、パーカッションが合いの手を入れるような形でファンファーレが吹き上げられます。

・東京&中山競馬場 重賞競走ファンファーレ
冒頭はトランペットが単独で小刻みにメロディを奏でていきますが、途中からトランペットのメロディが吹き上がる中、ホルン、トロンボーン、チューバのメロディが吹き下がっていく様は重厚感があります。

・東京&中山競馬場 G1競走ファンファーレ
重賞の中の重賞、いわゆる最高峰のレースである「G1」の発送前に演奏されるファンファーレで、先ほど一度演奏されたものです。

競馬場や、競馬のテレビ中継などで耳にされたことがある方は多いんじゃないかと思います。以前にJRA(日本中央競馬会)のCMでも流されていたような記憶もあるので、ドラゴンクエストの「序曲」と並び市民権を得ているファンファーレだと思います。

このファンファーレもトランペットがメインとなって演奏されますが、さすがに最高峰のファンファーレだけあって、他のファンファーレのエッセンスを取り入れながらのものなんだなあというのに気づきました。まず「特別競走」にある合いの手の部分はもちろん、「重賞競走」のメインのトランペットのメロディが上がる場面で、他の楽器のメロディが下がるところがあります。そして、4分の4拍子から4分の5、4分の2、4分の5と変拍子が繰り広げられるなど、非常に複雑なファンファーレなんだなあと「KING OF TURF 2001」のCDジャケットに書かれてあるスコアを見ながら感じました(苦笑…さすがにコンサートで聴いたときにパッと分かりません。分かれば音楽家になれますね)。

実際の演奏の方は、出だしのトランペットが少し不安定でしたが、その複雑なメロディを含んだそれぞれの楽器の音色がホール内をこだましました。他のファンファーレもそうなんですが、コンサートホールでこのファンファーレは本当に響きますね。ものすごく音がホールに響き、そして僕らの心にもあわせて響いてきます。これまでテレビの放送やCDでこのファンファーレを聴いてきましたが、やっぱり生は全然違います。本当に勇壮で、気高くて、誇り高いメロディがゆったりと目の前で響き舞っていました。後からCDでファンファーレを聴き直してみましたが、CDよりもテンポが遅くなっているようで、それがまた優雅に聴くことができました。ホントにインパクトがあった演奏だったと思います。

もちろん、ファンファーレ演奏後はものすごい盛り上がり方でした。何か声をかけられていた方もいたように記憶してます。それこそ競馬場の歓声に近い雰囲気でした。

すぎやまさんはマイクを持たれて話されはじめたんですが、アンコールでこのファンファーレをやると予想した人はあまりいなかったんじゃないかとおっしゃってました。でも、実は予想していた人はここにいたんですが…(苦笑)

続けて、もう1曲アンコールをやるという話が出て、またまた拍手が起こります。その曲名をすぎやまさんが口にされたとき、会場から「おぉ~」という驚きの声が挙がりました。そう、ちょっと僕もこの選曲は不意をつかれてしまいました。

・Love Song 探して Only Lonely Boy (ドラゴンクエストII ~悪霊の神々~より)
曲が演奏される前、ヴァイオリン、ヴィオラの各奏者の方が全員、弓を手にされていなかったので少し気になっていたんですが、ピチカート奏法(弦を弓ではじいて演奏する方法)で演奏するこの曲が来るとは全く頭にありませんでした。

ただ、この曲が演奏されるのには、なるほどなあという感じもあります。競馬のファンファーレは金管楽器とパーカッションでの曲だから、オーケストラの華でもある弦楽器が出る幕がない。そうなると、弦が主役となる曲は何かとなった時にこの曲が挙がったんだろうなあという予想がつくわけです。

それにしても、ピチカートでの演奏でもかなりの音量が出るんだなあということに気づきました。しかもピチカートはおそらく複数の奏者が演奏を合わせるって難しいんだろうなあと思うんですが、ファーストヴァイオリン、セカンドヴァイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスそれぞれが綺麗に音を合わせて演奏してました。この演奏の時はゲストコンサートマスターの深山さんを注目していたんですが、やっぱり華麗に弾かれているんです。お手本となるような演奏で、際立って目立つような動きはないんだけれど、品があるというか。とにかく全体的に凛とした演奏を聴かせてもらったと思います。

「Love Song 探して」が終わった後、さすがにこの曲で締めないだろうと思った方、大勢いると思います。僕もそのひとりでした。「まだあるよね?」と祈るような願いを持ちつつ、ずっと拍手してましたよ。最後は「ジャーン!」と終わる曲を聴きたいじゃないですか、僕らとしては。でもやっぱり、そこはすぎやまさん。ちゃんと分かっていらっしゃいました。マイクを持たれて、「もうひとつ、戦闘の曲でジャーンとやりましょう!」と、ドラゴンクエストIIIの中ボスの曲『戦いのとき』が紹介されました。

・戦いのとき Grueling Fight (SFC版ドラゴンクエストIII~そして伝説へ…~より)
この曲は、スーパーファミコン用にリメイクされた時に追加された曲で、キーポイントとなる強敵と対峙したときに流れてきます。個人的にこの曲は非常に聴きたかった曲なんです。生で聴くと迫力があるんだろうなあという気持ちをずっと持っていたので、この曲が演奏されると分かったときは「おぉぉ!?」という感じでした。

…が、舞い上がりすぎてしまい、あまり良く覚えていないんです。ただ、小刻みだけど激しく弾かれている16音符続きのヴァイオリンの音色と、その一挙手一投足の奏者の映像が頭に思い浮かびます。あの小刻みな弓の動きが全て統率されている軍隊のように揃っているんです。この動きは生のコンサートしか味わえないと思います。

その後、金管楽器や木管楽器、ティンパニが活躍していきます。だんだんクレッシェンドしていくところなどは、全楽器が大音響で演奏していてその音が身に染みるようでしたから。やはり予想どおりの迫力ある曲でした。

この曲が終わった直後、僕は拍手をしながら「はぁ~、終わってしまった~」という感じだったんですが、何かステージ上の様子が変なんです。いや、すぎやまさんがステージ上と舞台袖を行き来していたのは普通なんですが、観客に向かってお辞儀したり、手を広げたりといろいろパフォーマンスをされた後、何かマイクを手に取られたんですよ。あれ、もう終わりだろうに、と僕は思っていたんですが…

何とも、チケットの発券ミスから席のダブルブッキングが発生したようで、同じ席のチケットを持った方が何人か出てしまったそうです。その方たちの席がすぐに用意できなくて、1曲目の「序曲」を聴くことができなかったようです。その方たちにお詫びをということで、再び『序曲』を演奏したいんだけれど、どうだろうかという話をされました。驚きましたよ。また『序曲』が聴けるなんて毛頭に無かったですから。全然オーケーです! すぎやまさん、ちょっと茶目っ気が出て、フィルのみなさんに対して「過重労働になっちゃうけど、1曲お願いね」と話されたり、「じゃ、最初の序曲が聴けた人は出ていってもらって、聴けなかった人たちだけに聴いてもらおうかなあ…なんてね」という話をされて会場大ウケでした。そんなわけで、初めて、ドラゴンクエストのコンサートで一番最後に流されるであろう序曲が演奏されます。

・序曲のマーチ Overture
やられました。もうそのひと言しかないです。しかも演奏も申し分なく、完璧でした。曲はもちろん一曲目と全く変わらないんですが、やっぱり最初と感じ方が違いますよね。一曲目でかなり褒めまくっているんですが、最後のこの曲はそれ以上でした。とてもじゃないけれど言葉にできません。

にしても、本当にこの『序曲』が最後に来るとは思いませんでした。「『序曲』に始まり、『序曲』に終わる」なんて、ホント気持ちいいというか、貴重な経験をさせてもらったなあという感じです。一曲目の説明の時に「最初良ければ全て良し」と書きましたけど、最後もかなり良かったです。ダブルブッキングよ、ありがとうという感じで…(苦笑…運悪くダブルブッキングに遭遇された方には申し訳ないんですが…)

しかも、アンコールの相場は通常2曲なんですよ。それなのに「東京&中山競馬場ファンファーレ(これは一連の曲として1曲)」「Love Song 探して」「戦いのとき」「序曲のマーチ」と4曲の椀飯振舞い(おうばんぶるまい)ですよ。これまで、さすがにこれまで鑑賞したコンサートの中で、アンコールを4曲やったものは無かったので驚きでした。

そういうことで、今度こそ本当の終わりなんですが、拍手が全然止みません。すぎやまさんがステージ上と舞台袖を何度も行き来して、会釈したり、ありがとうというジェスチャーをいろんな形でやったり、フィルのメンバーに「よかったぞ」というジェスチャーをされたり、ゲストコンサートマスターの深山さんと握手を交わしたりしていたんですが、それでも止みません。4回ぐらいすぎやまさんは行き来されたでしょうか。さすがにこれはなかなか拍手が止まないぞと見たか、すぎやまさんと深山さんがステージ上で作戦を練られていたようです(笑)。「私が今度退場したら、君が指示してフィルのみんなを退場させるようにね」「わかりました」みたいなやりとりがあったんでしょうか、お二人とも拍手を身体に浴びながら、何やらお互いに目線をあわさずにひそひそと話されていました。この作戦で、フィルのメンバーも退場し、ホール内の照明も明るくなってコンサートが終了したんですが、拍手がなかなか止みませんでした。ホール内に「本日の公演は全て終了しました…」というアナウンスがあってもなかなか止みませんでしたよ。

今回のコンサートは本当に良かったです。「ドラゴンクエストV ~天空の花嫁~」は一見地味なゲームだし、音楽も地味に思われたりするかも知れません。でも、演奏も素晴らしかったし、やっぱりVも実は名曲揃いなんだということを改めて感じさせてくれました。

それに、もうそろそろ「V」もリメイクされる時期なのではないかなと期待していて、何かもう一度、「V」を遊んでみたいなあという衝動に駆られています。すぎやまさんのいう「家族愛」をもう一度体験してみたいんです。最初に遊んだのは現時点(2003年)だと11年前の中学生の時ですからねぇ~ もうそんなに経っているんだなあとちょっと、しんみりとなってしまうんですが、その当時、心に抱いていたことを思い起こしながら、スーパーファミコンを引っ張り出してこの作品をやってみたいですね。

そういうことで、コンサートレポートは以上でした。読みづらい点が多々あったと思います。また、「これ、感想や報告じゃねぇだろ? 単なる曲説明じゃないか!」というご批判も多々あるだろうと思います(汗)。僕の記憶量には限界がございまして、しかもこの時期のスケジュールが非常に厳しくて(仕事はもちろんのこと、久石さんのコンサートも入っていたんです…汗)、集中してレポートが書けませんでした。…が、それなりのものがまとまったと思います。

また、このレポートを書き上げるに際して、レポートの表紙にも書いてあるとおり、みぎーさんが書かれたコンサートレポートをかなり参考にさせていただきました。この場を借りてお礼いたします。ありがとうございました。

それと、若干内容の間違いなどがあるかもしれません。その時はどうぞご一報くださいませ。

ホント、ここまで読んでいただきありがとうございました。また、多くの人たちと一緒にコンサートを楽しむことができればなあと願って、レポートを締めくくらせていただきます。それでは、また次回お会いしましょう!

書き上げ 2003.09.07 01:50
一部訂正 2003.09.07 15:05
一部訂正 2003.09.07 23:20
一部訂正 2003.09.09 23:40

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